全国のドクター9,287人の想いを取材
クリニック・病院 158,646件の情報を掲載(2024年4月19日現在)

  1. TOP
  2. 愛知県
  3. 春日井市
  4. 高蔵寺駅
  5. まきのファミリークリニック
  6. 牧野 景子 院長

牧野 景子 院長の独自取材記事

まきのファミリークリニック

(春日井市/高蔵寺駅)

最終更新日:2021/10/12

牧野景子院長 まきのファミリークリニック main

高蔵寺ニュータウンの一画にある「まきのファミリークリニック」。「子どもの育児相談や自身の事、介護についてなど、なんでも相談してほしい」と落ち着いた声で診察を呼びかけるのは、院長の牧野景子先生だ。初期研修を受けた高蔵寺に縁あって2016年9月に開業した。出身は東京だが、「静かで暮らしやすい。そして高齢者がことのほか元気」と町に親しみを持っている。力を入れているのはプレイセラピーやカウンセリング。臨床心理士と協力しながら、子どもだけでなく親の治療にも積極的にあたっている。今後は同じ悩みを持つ「親の会」発足の協力にも意欲をみせる。診察中は白衣をまとわずコミュニケーションを図る牧野先生の考え方と、我が子とバレエや音楽を楽しむ2児の母としての顔にも迫ってみた。

(取材日2017年1月30日)

子どもの心の在りようを診るプレイセラピー

児童精神科に力を入れていらっしゃいますが、具体的にはどういった患者さんを診ているのですか?

牧野景子院長 まきのファミリークリニック1

とくに多いのが小・中学生や高校生で、不登校やかんしゃく、多動症、摂食障害のお子さんを診ています。ほかにも3歳児健診で受診を勧められた幼児や、会社に行けない抑うつ状態の大人の方もいらっしゃいます。最近はインターネットでもADHD(注意欠如・多動性障害)が啓発されているせいか、「特徴のチェック項目が当てはまった」と心配されて受診する方も増えていますね。患者さんの多くは市内にお住まいの方ですが、近くに児童精神科を診る病院がなかったり、あっても予約がとれなかったりするため、岐阜県や三重県からお越しくださる方もいらっしゃいます。

お子さんの治療法を教えていただけますか?

臨床心理士の付き添いのもと、自由に遊ばせるプレイセラピーを取り入れています。プレイルームには、人生ゲームやボードゲーム、カードゲームといったゲームのほかに人形や家などのフィギュアを使ってつくる箱庭が置いてあって、お子さんの遊ぶ様子を通して心の状態を知るのに役立っています。普段抱えている不満や心配ごとは、言葉で表すことは難しくても箱庭作品などの遊びのなかに克明に現れてくるんです。もちろん、遊ばずにただ寝転がっているだけでも大丈夫ですよ。まずはパンチング風船をパンチしてストレスを発散してから、遊び始めるお子さんもいます。その間、親御さんには別室で、もう一人の臨床心理士によるカウンセリングを受けていただきます。今後はもっと、このプレイセラピーの枠を広げていきたいですね。

お子さんだけでなく、親御さんへも働きかけているのですね。

牧野景子院長 まきのファミリークリニック2

そうですね。親御さんの行動や考え方を少し変えるだけで、お子さんのかんしゃくが減ったり、不登校の理由がわかったりする場合もあるので、家庭での接し方や声がけの指導といったペアレントトレーニングには力を入れています。勤務医時代から、お子さんを診ていく過程で親御さんにも治療の必要があると感じる場面が多々ありました。ただ、子どもと大人は完全に分けて診察するのが実情で、なかなか親子を一度に診る機会が持てませんでした。クリニックの名前に「ファミリー」と入れたのは、一度に幅広い年齢層を診たいという思いがあったからなんです。クリニックのシンボルマークにもなっている寄り添う象の親子にも、同様の思いが込められています。実は、あのマークは私の妹が考えてくれたデザインで、とても気に入っているんです。

先輩医師の「寄り添う姿勢」に感銘を受けた研修医時代

服薬を嫌がる方もいると思いますが、どういった対応を取られているのですか。

牧野景子院長 まきのファミリークリニック3

医師として薬の必要性は説明しますが、服薬を無理強いすることはありません。相談のうえで薬の量を減らし、万が一調子が悪くなれば、患者さん自身にも服薬の必要性をわかってもらえると思っています。薬を飲まないことよりも心配なのは、自己判断で薬を止めたことに引け目を感じて、受診を遠慮されるケースです。調子を崩しても診察にお越しいただけないことが何より気がかりですね。今後は、うつ病で薬物療法と同等の効果があると言われている認知行動療法を取り入れていきたいとも考えています。この治療法は、ものごとの捉え方や感じ方を変えることで、同じような場面で同じような失敗をしないため、患者さんの自信にもつながるんです。

薬のこと以外にも患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

苗字や名前で呼びかけて、親しみを込めたコミュニケーションを図るようにしています。「先生が怖いから、診察に行きたくない」と言われては、元も子もありませんので。なかには、白衣が苦手という患者さんもいらっしゃるので、最近は着ていません。あと、お子さんの声が気になる方のために、子どもの待合室は大人とは別の奥まったところに設けています。出入り口から遠いほうが、お子さんが1人で院外に飛び出す心配もなく、スタッフの目も届きやすいので、親御さんも安心して私との話に集中されています。

先生が小児科や児童精神科に興味を持つようになった理由を知りたいです。

牧野景子院長 まきのファミリークリニック4

養護教諭や音楽療法にも興味があったので、もともと子どもの精神に対する関心が強かったのだと思います。それで大学卒業後は、高蔵寺と豊橋にある総合病院の小児科で研修を受けていました。その後、専門を決める段階で精神科に転科し、豊橋や豊川のクリニックで小児科や精神科の経験を積みました。一番のきっかけは、研修医時代に出会ったベテラン小児科医師の診察する様子でした。患者さんに寄り添う姿勢がすごくいいなと思えたんです。新生児室にいた頃は、早産で生まれてきた赤ちゃんが小さな手足で懸命に生きようとする姿や、我が子を見守るお母さんの強さにも心を打たれました。高蔵寺に開業したのは、以前この場所で内科と小児科を開業されていた「さがクリニック」の佐賀先生から第三者継承のお話をいただいたからです。今も佐賀先生の頃からの患者さんには内科的な対応をしたり、木曜日の午後に訪問診療に伺ったりしています。

やりがいを感じるのは、患者の笑顔が見られたとき

やりがいを感じるのは、どんなときですか?

牧野景子院長 まきのファミリークリニック5

やはり患者さんの笑顔が見られるようになったときですね。「どこそこへ遊びに行ってきました」なんて話を聞くと、自分の時間を楽しんでいらっしゃるんだなあとうれしくなります。お子さんが患者さんの場合は、本人よりもお母さんのほうがピリピリしていたり、涙ぐむほど悩まれていたりするので、治療を重ねるうちに和やかに会話ができるようになると安心しますね。最近は、お母さん方のほうから「私も調子が悪いので薬をいただけますか」といった相談を受ける機会も増えてきています。そういった親御さんの心が少しでも楽になるように、これからは親同志が情報交換をできる集団療法のような場をつくるお手伝いもしたいと思っています。

牧野先生も2児のお母さまだそうですね。

小学2年生の娘と年長の息子がいます。2人とも踊るほうのバレエを習っていて、私も子どもたちに誘われて1年半ほど前から始めました。男の子にバレエを習わせることについては少し悩みましたが、今は息子が一番楽しんでいますよ。当初は、嫌がられたら止めればいいやといった軽い気持ちで通わせていたのですが、まさか自分も一緒に踊ることになろうとは思ってもみませんでした(笑)。子どもたちとは、ピアノとエレクトーンで連弾するのもいい気分転換になりますね。実は、医大をめざす前はエレクトーンの道で生きていこうと思っていたんです。学生時代はバンドを組んでドラムやボーカルも担当していました。賑やかな音楽が好きで、普段は車の中で洋楽ポップスなんかを思い切り流して走っています。

最後に受診すべきか迷われている方にメッセージをお願いします。

牧野景子院長 まきのファミリークリニック6

精神科というと気後れしてしまうかもしれませんが、お子さんの受診を考えている方は育児相談をするつもりで気軽にお越しください。なるべく早い年齢、早い段階のほうが効果が得られるケースが多いです。親御さんだけの相談も受け付けていますが、お子さんも一緒のほうが診断もつきやすいと思います。自分の問題を意識していないお子さんには「あなた(子)が心配だから」ではなく「私(親)が心配で安心したいから」と言葉がけをすると、一緒に来てくれることが多いようです。一方、大人の方の受診のめやすは、今まで好きだったことが楽しめなくなったときや生活に支障をきたすほど眠れなくなったとき、身近な人に相談して受診を勧められたときなどです。「こんなことぐらいで」と決めつけず、早めに足を運んでいただければと思います。

Access