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鎌田 享介 院長の独自取材記事

メンタルクリニックちがさき

(茅ヶ崎市/茅ケ崎駅)

最終更新日:2021/10/12

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき main

かつては避暑地として別荘が立ち並んだ茅ヶ崎。今ではすっかり都心のホームタウンになり、古くからこの街に暮らす世代から、新たに流入する若い世代まで幅広い住人が暮らしを営んでいる。そんな茅ヶ崎の駅前に、2016年9月に開業した「メンタルクリニックちがさき」は、居住型マンションの1室に構えた心療内科・精神科のクリニック。こじんまりと居心地の良い院内では、地元出身の鎌田享介院長が柔和な笑顔とともに出迎えてくれた。人々が慌ただしく時間に追われる都市部から、人間関係の濃密な地方まで、多様な環境の精神科で医師としての経験を積み重ねてきた鎌田院長。「リラックスしてゆっくりお話を聞ける医院にしたかった」と語る鎌田院長に、医院の展望や診療方針などを聞いた。

(取材日2016年10月7日)

駅徒歩1分のマンションで、リラックス重視の診療を

開院おめでとうございます。こちらでの開業に至った経緯など伺えますか?

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき1

もともと地元出身ですが、横浜の大学を卒業した後は関東近郊はもちろん、全国の病院で精神科の勤務を経験してきました。都市部には都市部の、地方には地方の人間関係や悩みがあり、それに対応する精神科医療も多岐に渡るということを肌で感じることができた経験です。地方都市ならではの濃密な人とのつながりのなかで、社会的弱者に対する思いやりのようなものを、改めて学ばせてもらったと感じています。その後、茅ヶ崎に戻って認知症の患者さんを診る病棟中心の病院で勤務するなど、しばらく外来診療から離れていました。そろそろ自分の診療室を設けて患者さんをお迎えし、一人ひとりと向き合う外来診療を展開したいと物件を探してきた中で、この物件と出会ったことから、バタバタと開業に至った感じです。

マンションの1室という、少し変わった環境での開業ですね?

あえてこうした居住型のマンションでの開業をめざし、いわゆるテナントでの開業は視野に入れていませんでした。以前、病院勤務時代に経験したことですが、薬を使ってもどうしようもなく暴れて手がつけられない状態の患者さんが、居住空間ではまったく違う落ち着いた様子を見せるといったケースも多いのです。こちらは患者さんのリラックスを重視した応接室のような空間です。ゆったりとお話を引き出しながら、診療させていただけます。実は、医院として使用させていただけるマンション物件というのは多くなく、物件探しは難航しました。こうした駅に近い立地で、少し狭くはありますが良い部屋が見つかって本当によかったと思います。

診療時間も平日夜9時までと少し変わった設定ですね?

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき2

病院勤務と並行して診療にあたる関係上、月、火、木曜は夕方4時からの診療となってしまいます。その分、遅くまで時間をとって、ゆっくり患者さんをお迎えしようと、夜9時までの診療時間となりました。金曜日は午前午後と夜9時まで通しで診療していますし、土曜日も夕方5時までではありますが、午前午後診療を行っています。

夜間も診ていただけることで、お仕事帰りの患者さんも多いのでは?

開院まではそう思っていたのですが、いざ始めてみると意外に会社員の方などは多くなく、主婦の方など女性が来院患者さんの中心となっています。開院から1ヵ月ですが、予想の4〜5倍もの患者さんにいらしていただいています。この地域にはメンタルクリニックも複数ありますが、どちらも混雑で予約が取りづらい状況もあるようです。改めて、ニーズの高さと受け皿の不足を実感しています。今後はお仕事帰りの患者さんにも気軽にお立ち寄りいただきたいと考えています。

心理療法をより重視した、薬に頼らない治療が目標

こちらではどのような診療を受けられるのでしょう?

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき3

薬に頼り過ぎない、患者さんの個性と自立性を高める治療をめざしています。精神分析の先生に師事し、精神分析的精神療法を学んできた経験から、心理療法的なテクニックを用いた治療をメインに、投薬は補佐的に行うという方針です。精神科・心療内科というと「話もそこそこにすぐに薬を出されて飲み続けなければいけない」といったイメージもあるようです。しかし、そうした患者さんの社会的な環境や育ってきた背景などを無視したインスタントな治療では、薬や医師への依存に陥ってしまうこともよくあります。当院では、急場しのぎの対処的な方策ではなく、患者さんの個性と症状、内的外的環境をしっかり把握したうえで、患者さんご自身が「自分らしい生活」を取り戻すお手伝いをしていきたいと考えています。

精神分析的精神療法とは、どのような手法なのでしょうか?

人間の心にはいろいろな力の働きがあり、意識・無意識に関わらずこうした力の働きが、不安や葛藤といったさまざまな心の動きや、全身に表れる症状に影響を与えているという精神分析の考え方に基づく心理療法です。臨床的には患者さん自身も意識していない、意識できない問題を、お話を伺うなかで引き出していきます。例えば、突如表れた原因不明の吐き気が、忘れ去られていた子ども時代の経験に起因していたり、過去のトラウマが無意識のうちに表出するといったことはよくあるのです。当院ではそうした精神分析的精神療法のエッセンスを使って、患者さん本人が自分自身と向き合い、問題解決のためのヒントを引き出すための手助けを行っています。

開業から約1ヵ月診療されてみて、どのように感じていらっしゃいますか?

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき4

ひとつには、予想以上に多くの患者さんに来院していただいて、驚きとともに心療内科・精神科の役割も少し変わりつつあるのかなということを感じています。病棟中心の勤務が続き、5年ほど一般外来から離れていた私ですが、この5年で受診される方の症状に変化があるように思うのです。以前なら地域や職場、家庭といったコミュニティで処理できていた問題によって心に病を抱える人が多いことから、コミュニティの機能が低下していることを感じます。仕事が合わない、家族に対して不満がある、人間関係の対立など、昔であればコミュニティの自浄作用が働いて解決できていたような問題も、解決の糸口さえ探られないまま症状として表れ、すぐに受診されるというケースが多いです。もちろん、精神科・心療内科を受診することは一つの方法ではありますが、受診したからといってボタン一つで家電が動くように、簡単に状態がよくなることはないのですが……。

メンタルクリニック受診が身近になったということでしょうか?

日常的に自分自身のなかに不安感を抱えている方は多いようですね。パソコンや携帯電話が普及し、利便性や効率性が追求されるこの時代において、疎外感や孤独感を感じて生きなくてはならないという状況も生み出されているように感じます。そんな状況下で小さな問題が生じると、ご自身やコミュニティ内で処理しきれず、受診という流れになってしまうのではないでしょうか。

心理学への興味から、患者の自立を助ける精神科医師に

精神科の医師を志されたきっかけは?

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき5

子どもの頃から本、特に昔話を読むのが好きで、高校時代にはユング心理学に深い興味を覚えました。日本人やスイス人のユング派の心理学者たちが書いた本を読んだ時に、おとぎ話の深層心理を探るといった内容が面白かったんです。そこから精神科の医師になりたいと思うようになりました。また一方で、田舎住まいで林の中や野原に分け入り、昆虫を探したりといった子ども時代を過ごしました。患者さんの話を聞くなかで、林に踏み入って「何が隠れているのか?」と探った子ども時代を追体験しているのかもしれないと感じることもあります。

休日や余暇はどのように過ごされますか?

昨冬からピアノを習い始めました。小学校時代に1年ほどで挫折して以来ですが、個人レッスンで基礎から厳しく指導していただいています。ピアノの先生から「演奏が早くなりがちでせっかち、気が急いている」と言われることがあり、改めて自分の性格を自覚できたことも収穫です。

今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

鎌田享介院長 メンタルクリニックちがさき6

現在も試行錯誤中ですが、限られた時間のなかで、効率的で最適な診療を行えるよう、さらに模索を続けたい思います。患者さんの本質とベースとなる問題点に焦点をあて、的確な診察をしていきたいです。ドクターはあくまで患者さんの自立を手助けする立場ですから、患者さんには主体性を持って来院していただくことが肝心です。心の病は患者さんご自身の人生、歩みに起因した、自分自身の問題です。まずは自分で考えて、そのうえで必要に応じて私どものような医院を利用していただきたいと思います。

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