木村 智城 院長の独自取材記事
聖堂前クリニック
(千代田区/神田駅)
最終更新日:2026/06/15
銀座線の神田駅や丸の内線の淡路町駅、都営新宿線の小川町駅など、いずれの駅からも徒歩5分以内と、利便性の良い場所にある精神科・心療内科の「聖堂前クリニック」。以前あった場所から2023年3月に現在の場所に移転し、職場でのストレスや人間関係の不安から来るうつ病をはじめ、双極性障害や統合失調症、発達障害などの診療を行っている。木村智城院長は、20年間にわたる大学病院での診療経験を持つベテランのドクターだ。「患者の話をよく聞いて正確な診断・治療をする」ことをモットーに、薬に頼りすぎず生活環境の改善にも力を入れた治療を行っている。患者に安心感を与えるような柔和なまなざしと穏やかな口調が印象的な木村院長に、同院での診療方針や増えている患者の傾向など話を聞いた。
(取材日2026年3月30日)
薬に頼りきりにせず、生活環境の見直しで改善へ導く
こちらに移転されてから3年、現在はどのような患者さんが多いですか?

人間関係のストレスや過労が原因と思われる心身の不調を訴えて来られる方が多いですね。年齢は20代から50代と幅広く、この近辺に職場や自宅がある方が中心ですが、クチコミなどで遠方から来院する方もいます。さらに、最近では大人の発達障害について相談に来られる方が増えました。メディアやインターネットでご自分の悩みや症状について検索したところ、発達障害に当てはまるという方や、すでに発達障害と診断され、別のクリニックで治療を受けているけれども、薬に頼った治療が合わずに困っている方などがいらしています。皆さんが抱えている症状はさまざまですが、特に初診時には患者さんの性格、背景、現在抱えている悩み、出ている症状などを、時間をかけて伺うようにしています。その上で薬が必要なのか、必要ならどんな薬が必要なのかを判断しています。
生活習慣や労働環境についてのアドバイスも重視されているそうですね。
私も以前は薬物治療を中心にしていましたが、あまり改善がみられないまま通院だけを続けている患者さんが多かったので、別の方法でのアプローチも考えるようになっていきました。患者さんの生活状況、労働環境を詳しく聞いてみると、人間関係や過重労働などが症状の原因になっていることが多く、それを患者さんと一緒に改善していくようにしています。例えば、睡眠不足を改善するだけでもうつ症状の改善が期待できる場合もありますし、メタボリック症候群の改善をめざすことで日常の疲労感も感じにくくなるということもあります。また、肝機能障害や甲状腺ホルモンの異常が精神状態と関係している場合もあるので、そうした原因が疑われる時は当院で血液検査をしています。
現在の診療スタンスにつながったきっかけなどありましたらお聞かせください。

一つのきっかけだけではなく、これまでのいろんな患者さんが私の治療の幅を広げてくれたと思っています。その中で「体を動かすこと」がキーポイントだと自分なりに気づき、患者さんにできるだけ運動するよう勧めるようになったわけです。
増える大人の発達障害、仕事や人間関係の問題は相談を
どの患者さんにとっても、運動は必須なのでしょうか?

いえいえ、運動が苦手な方もいらっしゃいますし、脚や心臓に持病を抱えている方もいらっしゃいますので、一律に運動を勧めるということはしていません。メンタルヘルスを考慮した運動指導も学んできたので、それぞれの方に合ったリラクゼーションを勧めています。ハードな運動をする必要はなく、1日30分散歩をすることでも良い影響が期待できると思います。手軽にできるのは体操やストレッチですね。マッサージやヨガなんかもお勧めですが、お金がかかりますから長続きはしない印象があります。また、誤解のないように説明すると精神科の治療において薬の有用性がないと言うつもりはありません。ただ、抗うつ薬などを使用する場合でも、漫然と処方だけして短時間で診察を終えることのないようにしています。
大人の発達障害に対しては、どのような治療を行っていますか?
大人の発達障害は主に2種類あり、まず1つ目は注意欠陥・多動性障害いわゆるADHDになります。こちらについては、規則正しい生活を送るための生活指導や周囲の人との関わり方のアドバイスなどを行うのに加えて、薬による症状の改善がめざせます。そして2つ目は、自閉症スペクトラム(ASD)です。自閉症も、ADHDと同様に生活指導や人間関係でのアドバイスが中心となるほか、必要に応じてカウンセリングや薬の処方を行います。発達障害というと、昔は子どもの病気のイメージがありましたが、実は一番困るのは大人になって働き始めてから。発達障害のために、職場での不適応や人間関係の難しさに悩む方が多いという印象です。
受診すべきタイミングや目安の症状があれば教えてください。

最近の若い世代で多いのが、うつ病を疑って受診したけれど、実はその根本に発達障害があるというパターンです。例えば、夜眠れない、昼間に体がだるいといった悩みはADHDの方によくある症状です。また、自閉症は対人関係がうまくいかない傾向が強く、人間関係の悩みからうつ病のような症状が出ることもあります。こうした場合、生活習慣の改善や人間関係におけるアドバイスだけで症状が改善することも多いです。広い意味でのうつ病と発達障害を併発している方も増えているため、不注意やミスが多い、人間関係が上手くいかない、学校・職場に行けないなどでお悩みの場合は、できるだけ早いタイミングでご相談いただき、何が原因にあるのかを探ることが重要です。
患者の話に細かく耳を傾け、生きづらさを少しでも軽く
患者さんと接する際、大切にしていることはありますか?

患者さんの話し方や表情をよく観察し、その方の考え方やペースをよく理解することです。それによって、適切な対応や治療を提案できると考えています。クリニックの診療とは別に、リモートでの相談に対応することもあるのですが、どうしても相手の雰囲気や本心が分からないことがあります。また、大学病院で診療していた時には、患者さん1人あたり5分から10分ほどしか時間が取れず、じっくりとお話を聞くことが難しい場合が多かったんです。自分のペースで、患者さんとしっかり向き合える今の診療スタイルを築けたことも、開業して良かったことの一つです。
院内の雰囲気については、どのような部分にこだわっていますか?
これは移転時の話になりますが、まずは利便性が良く、どなたでも通いやすい場所であることを重視しました。当院の患者さんの中心は30代から40代の働き世代のため、さまざまな路線の乗り入れている今の場所はぴったりだと思っています。そして、精神科・心療内科にとっては患者さんが安心して相談できる雰囲気がなによりも大切。そのため内装についても、待合室の椅子などインテリアコーディネーターと相談しながら、こだわって決めたんですよ。
最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

疲れやすい、気分が晴れない、なんとなく不安だなどの症状がある患者さんのほとんどは何か原因があることが多いものです。睡眠不足や極端な運動不足、対人関係のもつれなどが背景にあることが多く、それらを解決することで薬をあまり使わなくても改善をめざせることが多いと思っています。もちろん、薬物治療が必要な病状に対してはそれに応じた治療をしますが、どういった病気なのかを見極めるためにも、患者さんの社会的背景、身体症状を詳しく知る必要があると考えています。何か不安なことがあれば気軽に足を運んでもらいたいですね。

