金子 智則 院長の独自取材記事
いきいき整形外科
(江戸川区/瑞江駅)
最終更新日:2021/10/12
20年ぶりに戻った地元で「いきいき整形外科」をこの7月に開業した金子智則院長。「その方の100%のパフォーマンスにできる限り近づける、クオリティーの高い治療を」と考え、MRIなど高度な検査機器やさまざまな運動療法機器を使って診療を行う。笑顔で親しみやすく話してくれる金子院長に、開業に対する思いや同院の特色、整形外科の医師として年代別に注意してほしいポイントなどを聞いた。
(取材日2016年8月6日)
MRIなどの高度な検査で医療をもっとわかりやすく
この医院のある場所はご実家の近くと聞きました。
ええ、実家はすぐ近くです。もとは江戸川区東小松川の生まれで、中学生のときに南篠崎町に引っ越してきました。それから高校まで過ごし、大学は栃木県、勤めた病院は埼玉県と、18歳からずっと離れて暮らしていたんですよ。以前から地元での開業を考えていたので、20年かけてようやく故郷に戻ってきました。しかし20年たつと近所も様変わりして、畑や町工場だったところにマンションが並んでいるのにビックリしますね。また高齢の方などは、仕事を引退した後にスポーツを楽しむ健康志向のアクティブシニアが目立ちます。そうした方も含め、病気でなくても健康について気軽に相談に来ていただける医院をめざしています。
開院から1ヵ月ですが、どんな方が受診されていますか?
今のところ慢性的な痛みにお悩みの高齢の方、スポーツによるけがなどで受診されるお子さんが中心です。ご家族やお知り合いの紹介など口コミで来られる方も多いので、そうしたご期待にしっかり応えたいですね。体のあちこちが痛んだり、うまく動かなかったりすると「年だから仕方ない」とあきらめる方も多いのですが、それでは治る病気も治らなくなります。たとえ年のせいだとしても、不調の原因は何でどうしたら治療できるのかを、問診や検査を通じて探すのが私の役目だと思っているんです。例えば筋力が落ちているとか体が硬くなっているとか原因を一つずつ検討して、改善できるよう指導することが治療の第一歩です。
MRIによる検査も重視されているそうですが?
骨を見るレントゲンと違い、MRIなら骨内の出血や筋肉や神経の様子までわかるからです。例えば高齢の方によくある圧迫骨折もレントゲンは骨に異常がなければ見つけられません。これでは腰痛で受診しても原因がわからず、診断がつくのは病気がある程度進み、骨がつぶれた後になります。一方でMRIを使えば骨の内部の出血が把握でき、変形前に圧迫骨折の疑いと診断ができるのです。また座骨神経痛やヘルニアなどは治療中も痛みが続き、「本当にこのやり方で大丈夫だろうか?」と不安に思い、治療を中断する方も多いのです。しかしMRIなら神経を見て原因や治療の進み具合を把握でき、患者さんも治療の効果を実感しながら続けていただけると思います。またMRIは被ばくの危険性もなく、特に当院はオープン型のため検査時の閉そく感もほとんどありません。怖がるお子さんもいませんし、必要ならお母さんが添い寝したまま検査ができます。
スポーツに熱中する子の保護者が気をつけたいこと
お子さんの場合はどういった症状が多いでしょうか?
野球やサッカーなどスポーツをやるお子さんで、体が未成熟な小・中学生はオーバーユーズになることが多いですね。練習や試合で痛みを感じても熱中して続けてしまうのでしょうが、それでは良好なパフォーマンスは望めません。さらに終わって痛みを感じるためスポーツ自体が楽しめなくなり、結局やめてしまう子がいるのも残念な話です。やはりご両親を含め身近な大人がそうした状況に早く気づいてあげて、一緒になって治療や予防に取り組まないといけません。若い子はしばらく時間がたつとある程度回復して痛みを感じなくなるので、スポーツを終えた直後に子どもが痛がっていないか、歩き方がおかしくないかなどをしっかり確認してほしいですね。
では30、40代にはどんなアドバイスがありますか?
その世代ではランニング障害の方をよく診るのですが、主な要因は若い頃よりも筋力が落ちてクッション性に乏しくなり、ダメージの蓄積が大きくなることです。これはランナーに限らず一般の方にも言えることで、筋力が落ちるとこれまでと同じように動いているのに足や腰が痛い、デスクワークで肩こりがひどい、姿勢が悪くなるなど日常生活にさまざまな影響が出てきますから、積極的にトレーニングをして筋力を保つよう心掛けてほしいですね。また肩の凝りなどは対症療法で痛みを和らげることもできるんです。エコー(超音波検査装置)を使って凝りの原因となる炎症の場所を把握して薬を入れる方法で、「エコーガイド下筋膜リリース」と呼ばれ、当院でも積極的に行っています。
高齢の方はどんな点に注意すればいいでしょうか?
高齢になると筋力と体の柔軟性の衰えが目立ちます。そこで高齢の方に何か運動しているか尋ねると、たいてい「散歩をしています」とお答えになるのですが、それは生活習慣病の予防や心肺機能の維持には効果的でも、あまり筋力のトレーニングにはなりません。整形外科の医師としてはもっと筋力と柔軟性に着目してほしいと考えています。例えば腸腰筋など腰回りの筋肉、太ももの筋肉などの筋力を維持・向上させることで、足を上げたつもりが上がってなくて段差につまずく、といったケースを減らせると思います。また姿勢が悪くなってバランスがとれず、倒れた拍子に手をついて骨折するなどのリスクも避けられるでしょう。当院には理学療法士2人が常駐していますから、こうした治療方針や患者さんの状態を十分に把握した上で、適切に運動療法の指導ができるのも強みの一つとなっています。
患者の人生の可能性を広げる治療をめざして
先生が整形外科の医師になられた理由をお聞かせください。
医師をめざしたのは両親が薬剤師で、医療の世界が比較的身近だったからです。治療をして元気になっていく姿を見て、「医療の力はすごい」と実感したことが後押ししてくれました。治療によって患者さんの人生の可能性を広げられる、そんな医師になりたいと思ったのです。当初は心臓血管外科や消化器外科など手術による治療中心に考えていましたが、手術に適応しない患者さんをほかの科の医師に診てもらうことに疑問を感じ、すべて自分で診られる診療科がいいと思って選んだのが整形外科なんです。お子さんから高齢の方まで年齢も幅広く、手術もそれ以外の治療も1人で担当できるのが魅力でした。
開業されるまでどんな経験を積まれましたか?
大学卒業後は獨協医科大学越谷病院に入りましたが、病院のある埼玉県東部は全国有数の医療過疎地域。大学病院といっても研究よりは治療が中心で、私も整形外科以外に救急医療も担当し、入院した方の手術や外来の患者さんの診療など幅広い経験をしました。その後、医局の派遣で東京都内から北海道までいろいろな病院を回る中で、例えば農家の方なら治療中も休まず仕事に行けることが大切だったり、町工場に勤める方が一瞬の出来事で非常に重いけがをされる不幸な例に遭遇したりと、さまざまな患者さんから多くのことを学んだのです。開業準備のため大学病院を辞めてからは、しばらくリハビリテーション病院の院長を務めました。このとき脳梗塞で半身まひの患者さんがリハビリで回復していくのを見るなど、改めてリハビリの大切さを知り、開業後はリハビリや高齢の方の筋力維持などにも力を入れたいと思ったのです。
最後に先生のこれからの目標を教えてください。
私は整形外科の使命を「60、70%ほどに落ちたパフォーマンスをできる限り100%に近づける」ことだと考えています。その100%は人によって違い、家庭で自立して暮らせること、仕事で満足のいく結果を出すこと、スポーツの大会で勝つことなどさまざま。これからも患者さんのニーズに合わせて、楽しく生活していただけるようなサポートをしたいですね。さらにクリニックでの診療にとどまらず、将来はハンディタイプのエコー(超音波検査装置)を持ち、理学療法士と一緒にスポーツの現場に出かけて診療する取り組みも始めたいと考えています。プライベートでは、子どもたちがもう少し大きくなったらキャンプなどアウトドアを一緒に楽しみたいのですが、妻も娘たちも虫が苦手なので、これはどうなるかわかりませんね(笑)。