小原 功裕 院長の独自取材記事
おばら内科腎クリニック
(富士見市/鶴瀬駅)
最終更新日:2025/02/07

地域のかかりつけ医としての一般内科診療と、透析治療を含めた腎臓疾患の専門的な治療を診療の2本柱とする「おばら内科腎クリニック」。院内に入ると受付から左側には透析室、右側には待合室と診察室2室という構造。待合室は天井を高く取り、大型のガラス窓からは明るい陽光も差し込む開放的な空間となっている。日本透析医学会透析専門医でもある小原功裕院長は親しみやすい先生で、患者にも気さくに話しかける人柄。そのような小原院長を信頼し、家族3世代で通う患者も多い。患者の増加に伴い、2025年にはクリニックのそばに透析治療専門の分院も開院予定だ。患者のライフスタイルを重視し、生活の質に配慮しながら、無理なく治療を継続できる環境や体制を整えることに尽力する小原院長に、診療や患者への思いを聞いた。
(取材日2024年11月25日)
明るく開放的な空間と、感染症対策に配慮した環境を
クリニックの特徴を教えてください。

当院は腎臓疾患と、地域のかかりつけ医として内科全般を診る、いわば2本立ての診療を特徴とするクリニックです。私は長年、腎臓や透析治療と全身の血液管理・機能管理に専門性高く携わってきた経験から、幅広く全身を診る地域のかかりつけ医として、何でも相談できるクリニックをめざしています。院内は患者さんとスタッフの動線を考えたレイアウトにし、透析患者さんは受付からそのまま透析室に行けるようにしたほか、院内感染防止のために天井は高くして、医療機関用の空調も導入して十分に換気できるよう配慮しています。車で通われる方も多いため、駐車場は35台分と広めに取っています。また、透析患者さん向けの送迎バスも運行しており、半径15km圏内の、東は大宮・西は所沢・南は朝霞・北は川越までお迎えに行き、負担が少なく通ってもらえるようにしています。
透析室など、院内設備には先生のこだわりがたくさん詰まっているとお聞きしました。
はい。30床ある透析室は、部屋の中央にガラス張りのナースステーションを設け、それを取り囲むように透析用ベッドを配置。感染症対策として、ベッドはそれぞれ間隔を空けて置いています。また、感染防止のための個室の透析室と、在宅透析の方法を身につけてもらうためのトレーニングルームも備えているのですよ。そのほか一般内科では、検査のために他の施設に出向いてもらわずに済むよう、全身の断層画像が撮影できるマルチスライスCTも導入。院内で常勤の診療放射線技師が撮影も含めて対応できる体制を整えています。
多くの患者さんが透析治療のために通院されているのですね。

現在、20代から90代まで幅広い年齢層の患者さんが透析治療のために通院されていて、当院では若い方も多くいらっしゃいます。透析室は毎日ほぼ満床の状態になっています。在宅透析では東京都や千葉県など遠方の患者さんもいらっしゃいますが、通院による透析治療は地元の患者さんもかなり増えていますので、2025年11月には新たに透析治療専門の分院を開院する予定です。そうすれば、より多くの患者さんに安心して透析治療を受けていただけるようになると考えています。
治療中もリラックスして負担なく過ごせるよう工夫
診療において先生が心がけていることを教えてください。

治療を終えた患者さんに、体も心も元気になって帰っていただくことをめざしています。病気は、ストレスが何よりも良くありません。透析治療の患者さんは、週3、4回通うことになります。それだけ多く通う場所ですから、可能な限りストレスフリーにして、透析中も時間を有効活用できるような取り組みを導入しています。例えば、運動できるようにトレーニング用の器具を備えたり、リラックスできるような場所を設けたり……。食事を取ることも可能ですよ。こうした患者さん一人ひとりの体調やライフスタイルに合わせた治療スタイルを、当院では「オーダーメイド透析」と呼んでいます。このスタイルを聞いて気に入ったと、当院での透析治療に切り替えられる患者さんもいますね。
オーダーメイド透析についてもう少し詳しく教えてください。
患者さん一人ひとりに合わせて、透析時間や回数を決めるのがオーダーメイド透析です。透析は、一般的に1回につき4、5時間行われます。しかし、体の大きさによって透析時間は変わってくるもの。例えば、体重が40kgの小柄な人と、100kgの大柄な人で同じ透析時間で良いはずがありません。当院では、患者さんの全身状態や生活背景なども含めて考え、相談しながら適切な時間や回数を設定します。長い人は8時間ほど透析を行いますが、当院では時間を有効活用できるような工夫もしています。透析治療に患者さんを合わせるのではなく、患者さんの生活に合った透析治療ができることが理想。例えば、仕事をしている方なら、仕事も治療も無理なく続けられることを重視しています。
在宅透析も行われているそうですね。

はい。これは、患者さんの自宅に装置を設置し、ご自身で透析を行う方法です。その大きな特徴は、時間の自由度が高く、治療における体の負担を抑えられること。例えば、施設では週3日×4時間の治療を在宅で週6日×2時間とすることもでき、どちらも透析時間は12時間ですが、1日あたりの透析時間を減らすことで体への負担を抑えることにつながります。当院では、在宅透析のためのトレーニングを1~2ヵ月行う中で、自己穿刺を含め在宅透析をしている人を実際に見てもらい、ハードルを下げることを試みています。そうすることで「これならば自分にもできそうです」と思っていただきやすいのではないかと思っています。また「在宅血液透析見守りシステム」も導入。在宅透析される患者さんの状態を遠隔でモニタリングできるようになったので、より安心して治療を受けてもらいやすくなったと思っています。
地域のかかりつけ医として全世代の健康を見守っていく
フットケアや食事に関する指導も行っているのですね。

フットケアの外来は月に1回、行っています。糖尿病から腎臓を悪くし、透析治療が必要になる患者さんは少なくありません。この過程で足の血行障害が起こると「うおのめ」や「たこ」などでも、悪くすると足を切断しなければならないリスクがあります。それを予防する目的でフットケアを行っています。フットケアの指導は幅広く、靴の履き方や靴のオーダーまで指導します。また、月2回の管理栄養士による食事指導も行っています。腎臓に負担をかけにくい食事を心がけていただくために食事内容を指導したり、処方箋に沿った制限食をご紹介しています。患者さんのご家族にも説明し、家族ぐるみで治療に取り組んでいただくことを大切にしています。
一般内科や小児科などの診療で力を入れていることはありますか?
当院は透析治療において専門性を高く持っていますが、地域のかかりつけ医としても貢献していきたいと考えています。今では、お子さんとその両親、祖父母と3世代で通院してくださるご家族も多いですよ。一般診療ではすべての病気を全身疾患と捉え、子どもから大人まで、内科や小児科という枠にこだわらずに診ています。例えば糖尿病なども重篤化すれば透析治療が必要になる病気ですから、早期に治療を開始することが大切です。またお子さんの発熱などにも迅速に対応し、睡眠時無呼吸症候群の治療も行うなど、幅広く地域の一次医療機関としての役割を果たしていると自負しています。もし、より専門性の高い治療や検査が必要な場合には、速やかに適切な病院をご紹介するというスタンスで診療しています。
今後の展望をお願いします。

私は子どもの頃に左手に力が入らなくなった経験があり、その際、親身になって検査してくれた医師に感激して医師の道を選びました。今度は私がその役割を果たすくらいの気持ちで日々診療に臨んでいます。スタッフも同じ気持ちを共有してくれており、これからもチーム医療で患者さんをバックアップしていきます。その一方で、今後はもっと在宅透析が増えて、負担少なく皆さんのライフスタイルを維持できるようになることを期待しています。前に述べたとおり、在宅血液透析見守りシステムも導入しましたし、これからはオンライン診療もさらに普及していくでしょう。在宅透析をテレビ電話でサポートすることも可能ですので、在宅でできる患者さんが増えていくはずです。それもオーダーメイド透析の究極の形だと思うので、なんとか早く普及していくといいですね。