三井 理恵 院長の独自取材記事
ミューザ川崎こどもクリニック
(川崎市幸区/川崎駅)
最終更新日:2021/10/12

川崎駅直結の複合施設2階にある「ミューザ川崎こどもクリニック」。皮膚科が専門の三井理恵院長は、自らの子育て経験から得た母親目線のアイデアを盛り込み2016年に小児科と皮膚科を標榜するクリニックとして開業。2020年4月には同じフロア内にワクチン・健診センターとして「ミューザ川崎こどもクリニックPLUS」を増設。ちょうど新型コロナウイルス感染症流行の時期に重なり、感染症対策として重要な役割を担っている。小児科診療の他、喘息やアレルギー、肥満や低成長、発育・発達相談などの専門的な診療も行い、各分野の専門家が診療にある。「プライマリケアと専門的な診療を両立させ、さまざまなニーズに応えていきたい」と語る三井院長に、コンセプトや患者目線の医療提供への思いなどを聞いた。
(取材日2020年7月21日)
非感染専用のクリーンエリアを増設
開院して4年がたちましたが、この間、設備面などで新しくなった点はありますか。

今年の4月に「ミューザ川崎こどもクリニックPLUS」を増設し、ワクチン・健診センターとして拡大しました。これは風邪などの感染症のお子さんと、ワクチン接種や慢性疾患で受診されるお子さんたちとを待合室を含めて完全に分離し、院内感染を防止していくために設けたものです。開業当初からワクチン接種などでお子さんを連れて来られたお母さんたちから、風邪のお子さんと一緒になることへの不安の声もあり、時間帯を分けるなどできる限りの工夫はしてきましたが完全ではありませんでした。この度、同じフロア内で通路を隔てた区画に非感染専用のスペースを設けることができ感染対策を強化した体制を整えることができました。ちょうど新型コロナウイルス感染症流行の時期に重なったのは偶然でしたが、このタイミングで対策ができたのは良かったと思っています。
こちらは皮膚科と小児科を標榜しておられるのですね。
はい、複数の小児科医師が風邪などを診察する小児科一般診療の他に喘息やアレルギー、成長などじっくり時間をかけて診る必要がある慢性的な症状に対しての専門的な診療を行っています。また、私は日本皮膚科学会皮膚科専門医として子どもから高齢の方までの皮膚のトラブルに対応しています。子どもは大人に比べ皮膚症状が出やすいので急にオムツかぶれや湿疹ができたり、子どもに多い感染症には皮膚症状が伴うものが多いのですが、当院は小児科と皮膚科を1ヵ所で受診できますので患者さんには喜ばれていますね。また、お母さん方はどうしても子ども中心になってしまい、自分のことを後回しにしがちですが、当院の皮膚科はご家族一緒に受診していただけますので、忙しいお母さん方のお役にも立てているのでは、と感じています。
クリニックのコンセプトをお聞かせください。

主人が小児科の医師で、大学病院や市中病院での勤務を経て研究や学校保健に携わった中で、子どもの一部を診るのではなく、全体を診ることの大切さを実感したそうです。また私自身が親となり、育児を経験してみて、どんな小さなことでも相談できる場所があると心強いと実感しまして、そのようなプライマリケアを提供できるクリニックを作りたいと思ったのが原点です。一方で、じっくりと専門的な診療についても時間をかけて付き合っていくという部分も大事だと考えていますが、一般外来ではそのような時間はなかなか取れません。そのため、複数診体制にして一般外来と専門の診療の2つの枠をつくり、プライマリケアと専門的な診療の両立を図りました。そうすることで患者さんに寄り添い、さまざまなニーズに応えていけると考えています。
多様なニーズに対応するため、専門診療を充実させる
開院当初と比べ診療面で充実してきた点は何かありますか。

開業当初に比べて専門の診療の内容が濃く、充実してきていると思います。急な発熱などへの対応ももちろん大事ですが、やはりお子さんの成長に寄り添って長く診ていくことの重要性をずっと感じていました。今回の拡張で専用エリアも作られ、ドクターも当初に比べて増え、小児科の先生方にはそれぞれの専門性を生かした特徴ある診療をしていただいています。アレルギー疾患や内分泌、発達などの分野に加え、この度新たに心臓の専門のドクターにもきていただき、循環器もカバーできるようになりましたので、さらにより広く、いろいろなニーズに応えられるような体制になってきました。
こだわりの機器はありますか。
インフルエンザの検査では、以前は発熱から24時間ぐらい経過してからの検査が一般的でしたが、当院では発熱から6時間で陽性反応を確認する機器を導入しています。早めに判断でき投薬が始められれば、その分長引かずに済むでしょう。アレルギー検査については、いきなり採血では小さいお子さんだと抵抗がありますよね。当院ではより簡単に検査を行うことのできる機器を導入しました。注射器ではなく、指先に軽く針を当てる採血方法で検査ができ、41種類のアレルギー反応を調べます。また、喘息のお子さんの検査に使う呼吸機能検査の機器も導入しています。
女性の医師を含め、女性が働きやすい環境づくりに尽力されているそうですね。

特に皮膚科と小児科は女性の先生がすごく増えていて、私の同期もほとんどが女性です。女性医師がキャリアを続ける中で一番の悩みどころは結婚、出産や育児の時期との向き合い方です。私も3児の母なのでよくわかるのですが、女性医師は良い医師であろうとすると、良い母ではなくなっていく気がし、良い母であろうとすると医師としての責務を果たせないのでは、というジレンマを抱えがちです。そこで私たちはクリニックでありながら複数の医師で勤務日を調整し、手分けして何人かが受け持つ形にし、それぞれのライフスタイルに合わせて協力してキャリアを続けていってもらっています。子育てしながら医師としての仕事を続けたいという熱意のある先生方、またスタッフや看護師の多くも子育て中の方々ですが、そういう女性たちが意欲をもって活躍していただける環境を提供する、というのも当院の役割の一つだと考えています。
今後も患者目線のクリニックをめざして
最近はホームページでの情報発信にも気を配っておられると伺いました。

今回の新型コロナウイルスの流行の中で、私たちクリニックでの大きな変化としてはSNSを使った発信をするようになったことです。それまでは気が向いた時にたまに発信する程度でしたが、コロナが流行してからはドクター持ち回りで、その時々に必要な情報をブログで発信をしていくようにしています。特に反響が大きかったのは子どものマスクについてです。小さな子どもはマスクをすると窒息の危険があったり、脱水症状がわからなかったりとデメリットが大きいため、「2歳未満のマスクは不要、むしろ危険」だと発信したりもしました。コロナはまだ未知の部分が多いウイルスで、その分、患者さんたちの不安も大きいのですが、その時々での正しい情報を能動的に発信することで不安解消につながっていければいいな、と思っています。
今後の展望をお聞かせください。
開業当初から、いずれは、と考えていた病児保育室の設置や皮膚科の訪問診療などは、まだ実現はしていませんが、今後の課題として取り組んでいきたいと考えています。まずは目の前の患者さん一人ひとりに向き合い、寄り添うことを大切にして、クリニックも一緒に成長していきたいですね。院長である私は皮膚科の専門家ですが、当院は小児科がメインのクリニックです。だからこそ私の役割はお母さん目線、患者さん目線で、こういうクリニックがあったらいいな、というのを小児科の先生方に示していくという、プロデューサーとしての立場でいられることに最近気がつきました。そこは今後も大切にしていきたいと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。

当院は皮膚科と小児科、2つの専門的な診療を行っています。どこに相談したらいいのか迷ったら、ちょっとしたことでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。必要な場合には連携している病院への紹介もしますし、当院で診ていける症状についてはきちんと対応してまいります。また診療エリアとは別区画に非感染専用のワクチン・健診センターを新設しました。予防接種等の際も、どうぞ安心してご来院ください。