全国のドクター9,182人の想いを取材
クリニック・病院 158,625件の情報を掲載(2024年4月25日現在)

  1. TOP
  2. 広島県
  3. 広島市東区
  4. 広島駅
  5. ライフサポートクリニック広島
  6. 新宅 恵子 院長

新宅 恵子 院長の独自取材記事

ライフサポートクリニック広島

(広島市東区/広島駅)

最終更新日:2022/07/07

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島 main

広島駅新幹線口より徒歩5分の「ライフサポートクリニック広島」は、2015年開業。児童・思春期精神科の診療と、生活習慣病およびその予備軍の患者に対する栄養指導に特化したクリニックだ。新宅恵子(しんたく・けいこ)院長は、自身の子育てのつらい経験から、同じような人の支えになりたいとの思いから開業に踏み切った。来院者一人ひとりとゆっくり時間をかけて向き合うため、診療は完全予約制となっている。クリニックは狭い路地のマンション3階にあり、駅の近くながら人目につきにくい。ソファーが置かれ、温かい雰囲気の診察室で迎えてくれた新宅院長に、開業までの経緯や診療内容について詳しく聞いた。

(取材日2021年11月30日)

栄養指導と子どもの発達サポートを2本柱に

クリニックの特徴について教えてください。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島1

当院は2つの分野を扱っています。一つは児童・思春期精神科で、子どもの不登校や発達の偏り、子育ての悩みや、親子関係の心配事など、さまざまな相談に応じています。もう一つは、栄養相談部門として、ライフスタイルに合わせたオーダーメイドの栄養指導・運動指導を行っています。

診療方針についてお聞かせください。

個別に十分な相談時間を確保するため完全予約制としています。子育てや人間形成に必要なのは「愛情・栄養・トレーニング」という考えのもと、来院される方の立場や考え方に共感し、つらさに寄り添い、自分を変えたい、変わりたいという思いをしっかりサポートしていくことをモットーとしています。

児童・思春期精神科と栄養相談部門の詳細について教えてください。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島2

児童・思春期精神科では、まず私がじっくりお話を伺い、問題を整理することから始めます。当院には臨床発達分野や学校生活の問題に精通した臨床心理士や公認心理師の他、作業療法士が在籍しているので、スタッフと協力しながらカウンセリングを行うほか、必要に応じたケアや個別の支援を行います。症状が強い場合は薬物や入院治療を勧めることもあります。開業以来、多くの患者さんにご利用いただきましたが、患者さんが増えすぎて本来の診療が難しくなったため、残念ながら現在は新規受付を停止しています。一方栄養相談部門では、生活習慣病の方・予備軍の方などの生活指導を行っています。専門スタッフが体組成データをもとに、患者さんの体の状態や生活スタイルに合わせ食事管理や運動指導を行っています。

自身のつらかった育児体験を生かしたいと開業を決意

開業までの経緯を教えてください。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島3

私は生まれも育ちも広島です。大学は広島大学医学部に進学。内科を専攻したのは全身を診ることができる医師になりたかったからです。人とコミュニケーションを取るのが得意なところも生かせるとも考えました。大学の方針で、内科のすべての科を2年かけて回り、卒業後は広島大学の消化器・代謝内科に入局。消化器・代謝内科に進んだのは、教授や先輩たちの雰囲気の良さが理由でしたが、さまざまな臓器の疾患に関連するので、今の診療につながっていると感じています。研修後は県内の複数の総合病院に勤め、結婚・出産後も、健診施設に勤務したり、在宅医療に携わったり、医療福祉専門学校で学生を教えたり、さまざまな経験を積みました。そして2015年に当院を開業したのです。

児童・思春期精神科を診るクリニックの開業に至ったのは、ご自身の育児体験がきっかけだそうですね。

子育ては思いどおりにいかないと頭では理解していたものの、予想以上に大変でした。成長のスピードがアンバランスな子どもで、言葉を介しての理解・吸収・表現は年齢より遅れていましたが、言葉を介さない知覚などの理解力は実年齢プラス5歳以上。賢い子と思っていたけれど語彙が見合っていなかったのです。和を好み、他人と敵対することのなかった私が、子どもに大声を上げるなどして自己嫌悪に陥り、虐待する親の気持ちまでわかる気がしました。

とても苦労されたのですね。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島4

どうしたらよいのか、もう自分や家族の力だけでは解決できない。まず学校の先生に打ち明けたところ、理解を示してくださり助かりました。私は3人姉妹の末っ子で、真ん中の姉が米国で臨床心理医(Psychological doctor)の仕事をしており、その姉に相談すると、子どものことを客観的に捉える術と子どもの言動に対する対処法を具体的に示してくれました。県内の専門家も紹介してもらい通院したのですが、そうした医療機関は少なく予約も取りにくいこと、ほかに相談する場がほとんどないという現状を知りました。私は心理学の専門家ではないけれど、自分のつらい経験を生かし同じように悩む方たちの力になれるのではと考え、広島大学の人間社会科学研究科附属心理臨床教育研究センター長と県内の心理学専門の先生方に指導を仰ぎ、開業への足がかりにしました。

栄養相談部門の開設についても、きっかけがあったそうですね?

当院が重視する「愛情・栄養・トレーニング」は、自身も障害児の母で、心理学、栄養学などを国内外で勉強した先輩からの教えがもとになっています。脳の細胞の1つまで口から摂取する栄養が関連していると思うと、カウンセリングだけでなく栄養指導も欠かせないと気づきました。健診施設に勤務していた時代には、生活習慣病やその予備軍の方がとても多いことに驚きました。しかし多くの患者さんは生活習慣の見直しについて関心が低く、栄養指導を受けずに帰ってしまう方も。だったら個別にこまやかな対応をすれば本人の意識も高まるのではと思いました。私は問診の時、以前のデータと比較し変動があると、気になってついあれこれ聞いてしまうのですが、施設の方針と合わずきちんと説明したいのに、短時間で説明を終えなければならなかったんです。徐々に自分の納得のいく対応をしたいという思いが募り、開業したら指導に力を入れようと決めました。

どこにも相談できずに困っている人の支えになりたい

さまざまな経験をお持ちのようですが医師を志すようになったのはなぜですか。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島5

子どもの頃から体の仕組みに興味があり、人体に関する子ど向けの本を買ってもらっては、それを見るのが好きで、いつの頃からか全身を診ることのできる医師になりたいと思うようになっていました。また年の離れた一番上の姉が障害者で、将来を心配した両親は、私たち妹に「経済的に自立し、長女のサポートするためにも医師になってほしい」と願うようになり、私の夢と両親の望みがうまくマッチしたというわけです。子どもの頃から勉強は嫌いではなかったのですが、ただ運動はとても苦手でしたね。もっと速く走れたら、逆上がりができたらと、いつも思っていました(笑)。

最初に子どもの発達について関心を持ったのは、学生時代だったそうですね。

学生時代に家庭教師をしていた時、勉強熱心でとても素直なのに成績がなかなか伸びない子がいたんです。そのことがきっかけとなってLD(学習障害)という概念を知り、関心を持ったことが今につながっています。日本では1つの知能検査で診断しがちですが、アメリカでは5~10くらいの心理検査を行います。当院の検査も米国の姉から学んで取り入れてきました。例えばADHDのお子さんは、順番に入ってくる情報が交錯して混乱しがちですが、視界から入ってくる情報の理解力は高い場合もあるので、得意な力を使って苦手なことを補うよう複数の心理検査の結果を参考に指導していきます。

今後の展望を伺います。

新宅恵子院長 ライフサポートクリニック広島6

自分のつらかった経験を人のために役立てたいという思いが強く、相談室を開くイメージで作ったのがこのクリニックです。栄養相談部門を始めたきっかけは、発達障害のあるお子さんに偏食の傾向が強いことが多かったこともあります。もう少し落ち着いてきたら、また発達の悩みを持つ患者さんの受け入れも再開したいと考えています。もっと早く受診すれば良かったという親御さんはとても多いですね。お子さんの診療は、親御さんのお話も聞きますので時間はかかりますが、親が責任を感じているのを許してあげる人が必要です。今後は薬を出すだけの医者ではなく、患者さんの睡眠や栄養、運動面などの基本的生活習慣をしっかり見ていきたいと思っています。

Access