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中島 一光 院長の独自取材記事

いきいき在宅クリニック

(大府市/大府駅)

最終更新日:2025/12/10

中島一光院長 いきいき在宅クリニック main

24時間365日連絡の取れる体制を整え、在宅医療に取り組む「いきいき在宅クリニック」。中島一光院長は「看取りまでできる在宅医療」を使命とし、患者の人生を支え続けている。「私たちは医療やケアを提供しますが、患者さんやご家族からはそれ以上に大切なものをいただいています」とほほ笑む院長。開業して10年、多くの患者たちの生き方や最期の時に寄り添い続ける中島院長の在宅医療にかける思いをひもとく。高窓から差し込む一筋の日差し。それが、まるで患者の命を輝かせる希望の光のように感じる取材となった。

(取材日2024年11月11日)

一人ひとりの「命」を輝かせるために

公園の緑が臨めて、雰囲気の良い待合室ですね。

中島一光院長 いきいき在宅クリニック1

当院は訪問診療を主軸としておりますが、特に在宅ホスピスケアを受ける「最期の時と向き合っている」方が多くいらっしゃいます。ですから患者さんやご家族が穏やかに過ごせるように、相談の際は待合室のソファースペースを使い、安らげる空間を提供したいと考えています。テラスやキッチンは、患者さんやご家族との交流やイベントにも利用しています。また、地域医療に貢献するため一般内科や呼吸器内科の外来予約診療にも対応しています。

在宅医療を軸としているのはなぜですか?

勤務医時代から在宅医療を考えていましたが、24時間365日患者さんを支えるのは決して地域の先生方が簡単にできるものではありません。「ならば自分がやるしかない」と、意を決して病院を飛び出したわけです。その後、東京で在宅医療・終末期医療の現場に身を置いたのですが、ある日、東海市で在宅医療をされていた伊藤光保先生からお電話をいただき「不治の病となった自分の後を継いでほしい」という言葉。私は「お役に立てるのなら」とお返事し、大急ぎで大府市に戻り開業しました。その後、現在地に移転し、今は大府市を中心に東浦町、東海市、豊明市、知多市などで訪問診療をしています。ご高齢の方やがん患者さんを診ることが多く、最近は病院だけではなく、ケアマネジャーさんや患者さんのご家族からの直接の依頼も増えました。

終末期医療に注力されているのはなぜですか?

中島一光院長 いきいき在宅クリニック2

忘れられない光景があります。それは医師不足に悩む病院へ応援で出向いた時のこと。意識がほぼなく人工呼吸器と胃ろうを装着している方が何人もいらっしゃいました。機械で呼吸させられ、栄養が送り込まれる。それが何年も続き、家族もお見舞いに来られない。私は「いったい人の命とは何なのだろう」と思いました。もちろん患者さんが望めば、人工呼吸も胃ろうも重要な手段です。しかし、ただ命を永らえることが果たして幸せなのでしょうか。命はもちろん大切です。でも、命の長さよりも大切にしたいものはないのでしょうか。あの光景は私に大きな課題を与えました。人の命には必ず終わりが訪れます。それを受け入れる覚悟、命の質、そして人としての尊厳。これらと向き合っていくことが私の使命だと感じたのです。

最期の時と向き合う患者と、共に喜び共に泣く存在へ

先生が医師を志されたのは、いつですか?

中島一光院長 いきいき在宅クリニック3

小学生の頃、テレビドラマで医師が放った「医者は人間である前に神なのだ」という言葉が衝撃的で、胸に響いたのを覚えています。これは決して「医師は偉い神様だ」という意味ではありません。患者さんがもし神に見捨てられたらどうなるのか、医師だけは最後の砦として患者さんと向き合わなければならないという覚悟を促す言葉です。医師とはなんてすごい仕事なのだろう。そう思った私は卒業文集に「医者になる」と書きました。その後、大学を卒業した私は先輩の影響で呼吸器内科を専門とすることに。呼吸器疾患患者の息苦しさや不安感を懸命に理解し、治療しようとする先輩の姿に心を打たれたのです。

丁寧な対話は在宅医療にも重要ですね。

在宅医療を始める前に必ず患者さんやご家族とじっくり話します。特に終末期の方とは「最期の時と向き合い、どう生きるか」をともに考えてきました。終末期医療には心の支えが欠かせません。大切なのは「not doing, but being」。医療やケアの提供はもちろん、「一緒にいるよ」「一緒に戦っているよ」という気持ちです。もし患者さんの足がむくんでいれば、マッサージをしながらお話を聞く。その積み重ねが安心を与えると信じています。「Being」は難しいですよ。もし悪いニュースがあっても、そこから逃げず一緒に考え、悩んで、一緒に笑って、泣いて。しかし私たちは家族にはなれないし、感情移入しすぎればケアではなくなる。第三者でもない「第2.5者」の距離感が理想なのです。その点当院のスタッフは、日本看護協会緩和ケア認定看護師としての専門知識と経験を持つ者もおり、適切な在宅医療を実践しています。

身体的な苦痛にも寄り添っていらっしゃいますね。

中島一光院長 いきいき在宅クリニック4

「緩和なくして在宅なし」と考えています。例えばがんの苦痛は、症状が軽いうちから医療用麻薬で適切にコントロールすれば穏やかに過ごすことが望めます。それによって、患者さんがこれからどう生きるかを考える余裕にもつながり、実際に行動を起こされる方もいるでしょう。残り少ない命だからこそ自分が望むように生きてほしい、それが私たちの願いです。かけがえのない時間を親しい人と住み慣れた場所で過ごし、穏やかな最期を迎える。これが、最期の時を受け入れたからこそできる本当に「生きる」ことなのだと思います。

先生は情報発信にも精力的ですね。

在宅医療の現状や情報を広く伝えることは、現場に立つ私たちの役割です。私が講演会に出向くほか、横江由理子看護部長も看護師の立場から講演や執筆・書籍の監修などをしています。一般の方には「家は安心して療養できる最良の場所なんだ」と知ってもらい、医療者には「自分もそんな在宅医療をやってみたい」と思ってもらえたらうれしいです。

ポジティブに「人生の締めくくり」を支える

日々大切にされていることは何ですか?

中島一光院長 いきいき在宅クリニック5

まず、訪問をしたらできるだけ患者さんの笑顔を引き出すことです。時には駄じゃれも言いますよ(笑)。でも、駄じゃれは万葉の時代から続いてきた言葉遊びですから「これは文化の継承なんです」とお伝えしています。そうすれば、ほら、また笑顔がこぼれるでしょう? もう一つは、先進の知識や患者さんの情報を現場へ出向く看護師や薬剤師と毎朝しっかり共有することです。スタッフは訪問中に一人で判断を迫られる場合もありますから、24時間365日現場で迅速かつ適切に対応できる体制を整えています。また、ケアマネジャー、介護ヘルパー、行政など多職種との連携も大切です。

開業から10年。改めて感じることはありますか?

私たちは医療やケアを提供する側ですが、逆に患者さんから教わることも多いんです。数多の生き方を通して、人生の何たるかを教えていただけるのです。忘れられないのは、がんの末期で携わった80代の患者さん。お看取りのまさにその時、その場に居合わせた家族全員が拍手をしたのです。患者さんは最期の時に着たいと望まれていた「わが人生に悔いなし」と書かれたTシャツを着て亡くなられました。希望どおりの旅立ちを皆で喜んだのです。

亡くなることは決してネガティブなことではないのですね。

中島一光院長 いきいき在宅クリニック6

最期の時を考えることは生き方を考えること。そして、一人の最期は残される人たちの生にもつながっています。ある詩に「今日は死ぬのにもってこいの日だ」という一節があります。自分が亡くなれば、もう畑が耕されることはないでしょう。でも、わが家は家族の笑顔に満ちている。残していく者たちが幸せなら良いではないか、というものです。もちろん「亡くなって良かった」とは言えません。ですが、「この亡くなり方で良かったね」と感じられたらと思うのです。こうした思いから、実際にお看取りの後にこの詩を朗読することもあります。このような経験は、どれだけ医学に精通しても、いくら教科書を読んでも学べることではありません。またご遺族様から頂く言葉やお手紙は私たちの大切な宝物です。

今後の展望も教えてください。

これからもできる限り24時間365日安心を提供し、信頼をいただく姿勢を続けたいと思っています。ただ、医師の働き方改革もあり、それは一般的には難しい時代になってきました。今のところ私は24時間働けますが(笑)。在宅医療の大きな特徴は、患者さんそれぞれに合わせた個別性を重視できることです。できる限りその方の「我がまま」つまり「あるがまま」を最期までみんなで支えていきたい。言うは易し、と言われるかもしれませんが、そんな終末期医療を追い求めたいですね。

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