昼間 洋平 院長の独自取材記事
大宮駅前 ひるまこころクリニック
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日:2024/10/10
鉄道の要所である大宮駅から徒歩3分に位置する「大宮駅前ひるまこころクリニック」は2015年に開院した精神科・心療内科のクリニックだ。生まれも育ちも大宮という院長の昼間洋平先生は、精神科の領域の中でも薬物療法を専門としており、患者の服薬に対する不安に丁寧に寄り添い、減薬の相談にもこまやかに対応する。昼間院長は東京慈恵会医科大学附属病院、医療法人秀峰会北辰病院など数々の病院で研鑽を積み、主に急性期の患者の治療にあたってきた。その経験を生かし、精神疾患におけるさまざまな症状の診療を行っている。穏やかな人柄で、時にはユーモアも交えながら優しい口調で語る昼間院長に、受診の目安や診療のプロセス、今後の展望などについて詳しく聞いた。
(取材日2023年9月19日)
精神疾患は「早期発見」が大切
まず、来院される患者さんについてお聞かせください。
患者さんの年齢層は10代から90歳ぐらいの方まで幅広く来院されていますが、割合でいうと20代から40代の方が多い印象です。当院が大宮駅から近いということもあり、近隣にお住まいの方はもちろん、東京都内から来院される方や、中には新幹線に乗って来られる患者さんもいらっしゃるんですよ。来院されるほとんどの方が心も体も疲れ果てている状態ですし、疲れていても休み方がわからなくなってしまったのかなと感じます。職場のストレスチェックをきっかけに当院を受診される方もいらっしゃいますね。通い始めた当初は「まさか私が」とおっしゃっていた患者さんも、通院を重ねるうちに「やっぱり病気だったんだな」とご自身で気づく場合もあります。
精神科・診療内科を受診するタイミングについて教えてください。
心のバランスが崩れてくると、頭痛や胃痛のほか、食欲がまったくない、朝起きられない、寝つきが悪いなど自律神経に関わる症状が出てくることが多いです。自律神経というのは、自分の体を正常に保つための機能なのですが、精神疾患になるとそこがまず不調を来します。いわば体からのSOSであって軽んじてはいけないのに、皆さん忙しい日々を送る中で、無理をして通常どおりの生活をそのまま送ってしまうケースが非常に多いです。体に現れた警告を見て見ぬふりをするのではなく、普段の生活の中で「いつもと違うな」とご自身が感じた時が受診の目安でもありますし、一旦立ち止まってみることが大切です。一人で悩まずに専門の医師に相談することをお勧めします。
先生は早期発見・早期治療を重視していらっしゃるそうですね。
精神疾患は進行した状態になればなるほど、回復にも時間がかかってしまいます。また、精神状態が悪化してしまい思考能力が低下している時は「一体何をやっているのだろう」と自分を責めて自己嫌悪に陥り、余計に気分が落ちてしまうという悪循環になりがちです。そんな時に医師や周囲の人が「お薬を飲んで休もう」と適切なアドバイスを行っても、ご本人の耳に入らなくなってしまうんですね。ある程度、ご自身が危機感を持っているうちであれば、助言を受け入れて服薬、食事、睡眠などを意識してきちんと休むことができますので、早い回復も見込めます。そんな理由から私は、なるべく心の不調に早く気がついて治療を始めることが大切だと考えています。
精神疾患の治療に対する不安を取り除く
先生は精神科の中でも薬物療法が専門とお伺いしました。治療の進め方について詳しくお聞かせください。
精神科のお薬に対してハードルが高いと感じる患者さんもいらっしゃいますから、一通り薬のメリット・デメリットをお話しして、服薬するかどうかを患者さんに決めていただくようにしています。ケースによっては、服薬が不可欠な場合があるのですが、その際も「薬を飲むことが悪い流れを断ち切るための良いきっかけになりますよ」という感じで丁寧に説明を行います。ある程度、患者さんの症状が治まっている場合は減薬の相談にも応じますよ。しかし、薬を飲んですぐに「症状が落ち着きました」とおっしゃる患者さんの場合には注意が必要です。ケガに例えると、傷口の止血をした直後にいきなり手を離したらまた出血してしまいますよね。状態の見極めは非常に重要ですから、患者さんの服薬に関する不安の解消に努めています。
先生が診療において大切にしていることは何でしょうか。
当院のスタッフにも伝えていることですが、患者さんのお話は否定せずにいったん全部お聞きした上で、今は何が一番問題になっているのかを整理して対応するということは心がけています。診療のスタンスとしては、患者さんの状態によって私がキャラクターを変えることはありませんし、対応がぶれないようにしていますね。それに、疲れている医師には診察してもらいたくないでしょうから、私自身の体と心をメンテナンスすることにも重点を置いています。食生活には気を使っていますし、リラクゼーションのために整体にも行っています。インドア派なのでほとんど運動はしていませんが、家でゲームをしたり動画を見たりして楽しんでいますよ。私は家が大好きなんです(笑)。
家族や身近な人が精神疾患になった場合、どのように対応すれば良いでしょうか?
ご家族や周囲の方が精神疾患になった時は、症状が急に出てくる場合もあるので驚くかもしれませんが、あまり腫れ物に触るような接し方はしないで普段どおり接することをアドバイスしています。病気であっても本人は本人ですから、周囲の人が態度を大幅に変える必要はないんです。病気のことを悪く言うのは良くないですが、言葉がけをする時にも過敏になり過ぎないようにしていただきたいです。例えば、糖尿病のご家族がいたら「食事に気をつけて」くらいは言いますよね。精神疾患の方も同じで「無理はしないでね」などの声かけはして良いと思います。それと、ご家族がクリニックの受診に付き添ってくれたり、家に休む環境がきちんと整っている患者さんは早く回復が見込めるんですよ。
患者が地域で生活しやすくなる手助けをしたい
先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。
私が受験生だった当時、兄が生活保護に関するケースワーカーをしており、兄の話を聞いていると医療の話題が出てきて、その時に「医師になって状況を少しでも変えたい」と思ったんです。東京慈恵会医科大学に入学後は、脳の仕組みに強い興味を持ち、脳外科と神経内科を志望して勉強していたのですが、「何か違うな」と感じて。5年生の時に、6年次の希望を出す段階で最後に精神科の教室に行ったら衝撃が走ったんです。病棟実習の時に、重い症状が出ていた患者さんが2週間ほどでまったく様子が変わっていく姿が強烈に印象に残りました。調べてもわからないことだらけで、ずっと勉強なのだなと思いましたね。そこから精神科の領域に引き込まれて現在に至っています。
クリニックの開院前は急性期の患者さんを診療なさっていたそうですね。
はい。クリニックに来院される患者さんよりも症状が一段階重い患者さんの診療にあたっていました。救急車で運ばれて来る患者さんもいますし、さまざまな症状の方の対応を行いましたが、私自身があまり動じることはなかったですね。以前勤務していた北辰病院や心療内科病院で関わっていた患者さんで、開業後も私のもとに長年通ってくださる方が多くいらっしゃいます。今でも2つの病院とは密接な連携があり、入院が必要と判断した場合には迅速に対応することができます。さまざまな急性期のケースを診てきましたから、当院を受診した際に症状が深刻な患者さんの場合でも、今までの経験を生かして適切な診療につなげることが可能です。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
患者さんの中には社会の雰囲気に圧倒されて、通院だけはできるけれども職業訓練施設に通うことや友人と遊びに行くのはまだ難しいという方がいらっしゃいます。今後の展望としては、そのステップにいる患者さんが地域で生活しやすくなるお手伝いができたら良いなと考えています。当院のビルの5階にある精神科デイ・ショートケア「陽だまりの部屋」の活動に参加することで徐々に社会生活に慣れていってほしいと願っています。私からのメッセージとしては、ストレスを抱えていて体に不調が出ている場合は一人で悩まず、早めに対策を取ることをお伝えしたいですね。スタッフ一同、困っていらっしゃる方のお役に立ちたいと思っていますし、少しでも不安や心配なことがあればお気軽に当院にご相談ください。