治療を始める前に知っておくべきこと
インプラント治療の安全性とリスク
神楽坂わたなべ歯科クリニック
(新宿区/飯田橋駅)
最終更新日:2021/10/12


虫歯や歯周病、事故などによって大切な自分の歯を失ってしまった時に、入れ歯やブリッジに代わって人工歯根を埋入するインプラント治療が多くの患者に選ばれている。入れ歯のような違和感や煩わしさがなく、ブリッジのように健康な歯を削る必要もない。自分の歯と同じように食事を楽しめて、審美性も高いというようにインプラントの利点は多いが、外科手術が伴う治療にはリスクがあることを知っておかなければならない。多くの難症例を手掛け、インプラント治療を行う歯科医師向けの研修会で講師も務める「神楽坂わたなべ歯科クリニック」院長の渡部康男先生に、治療を検討している方への注意点やアドバイスを伺った。
(取材日2015年5月7日)
目次
誰もがどこででも受けられるようになってきたインプラント。だからこそ、より慎重な判断を
- Q治療前の診査の重要性について教えてください。
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A
▲17年以上、そして様々な症例の手術経験があり、レベルの高い治療が受けられる
術中、術後のリスクを避けるために、過去の手術歴や通院中の疾患の有無を手術前に知る事がとても大切です。代表的な全身疾患としては高血圧症、心疾患、糖尿病、骨粗しょう症があります。高血圧症、心疾患は重度の場合、手術中に致死に至る可能性もあるのです。コントロールができていない糖尿病では術後に2次感染を起こし、インプラントが脱離または感染により周囲骨が失われる可能性もあります。また高齢の場合は、骨粗しょう症で骨が弱くなっていないか、手術に耐えられる体力が有るか否か十分注意する必要があります。がんによる放射線治療や過去に大きな手術をした方も注意が必要です。このためかかりつけ医に対診書を取り、日常的に医科医師との連携を図る必要があります。当院では医科に通院中でない方にも血液検査を行い、全身に異常がないか確認してから手術をいたします。
- Q治療対象となるのはどのような方でしょうか。
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A
▲インプラント治療専用のオペ室。空気まで滅菌されているので安心
全身疾患を持っている方以外は、誰もが受けられる治療です。診断方法としては、通常のレントゲン検査では得られない精密な画像を元に診断を行うために、CT検査で3次元的に骨幅を計測し、埋入できる骨幅・骨量があればインプラント手術ができると判断します。顎の骨が足りなくても補填できれば可能です。重度の歯周病で歯を失った場合も、骨量があれば治療は可能です。この場合は、手術部位に歯周病菌が多くあるとそこから感染を起こすことが多いため、術前治療としてしっかり治すことが必要になります。
- Q骨が足りない場合の対応は?
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A
▲インプラントメーカーで最も歴史のあるノーベルバイオケア社公認インストラクター医院
歯が抜けてしまうと時間の経過と共に歯を支えていた骨(歯槽骨)は天然歯が存在した骨幅・骨量より吸収されてしまいます。上下顎では約6mmよりも骨幅・骨量が少ない場合は、骨の長さや厚みを増すために骨造成や骨移植を行ってからインプラントを埋入します。特殊な器具を用いて頬骨の裏の空洞(上顎洞)に自家骨や人工骨を補填するサイナスリフト、頬骨の裏の空洞(上顎洞)の底を押し上げて骨を追加するソケットリフト、オトガイ部の骨や下顎角付近の骨を採取し現存の骨と採取した骨をネジで留めるベニアグラフト、粉砕した自家骨もしくは人工骨を置いて骨の再生を促進するGBRなどがあり、これらを必要に応じて組み合わせて行います。当院では他院からの紹介で難症例患者さんを多く治療しており、およそ7割が骨を増やす処置が必要な患者さんです。いずれも熟練を要する難しい術式で、体への負担が大きいことを認識していただきたいです。
- Q治療を受ける上での注意点を教えてください。
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A
▲衛生管理が徹底しているヨーロッパ基準であるクラスB滅菌器も完備
昨今、インプラント治療において安さ・早さが求められる傾向を危惧しています。当院では感染予防に力を入れていて、手術室を完備し、使い捨て器具を用います。治療は短期間では終わらず、診査・診断から治療完了まで1年はかかります。インプラントはスウェーデンのノーベルバイオケア社のブローネマルクを主に使用しています。世界中に存在するメーカーの中で最も歴史があり、2013年時点で48年に及ぶ臨床経過を有し、さらには数多の研究論文が存在する科学的にも裏付けられた信頼性の高いインプラントです。製品の品質も非常に高く、世界中で臨床応用されているため、もしものトラブルもグローバルに対応することが可能です。昨今は非常に安価なインプラントも数多くあり、科学的データがないものも存在しています。患者さんにとって安全なインプラントを行おうとすれば、安くて早いは優先されるべきではありません。コストパフォーマンスを求めることは危険が伴うのです。
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。