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功刀 賢 院長の独自取材記事

しながわ在宅クリニック

(大田区/馬込駅)

最終更新日:2019/08/30

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大田区、品川区、目黒区を主要エリアとして、訪問診療を行う「しながわ在宅クリニック」は、医療を必要としながらも、身体に障害があり歩行が困難な患者や、精神的な問題から外出が困難な患者のために、功刀賢(くぬぎ・まさる)院長が開院した。時間をかけて患者に寄り添い、患者の言葉に耳を傾け、自分らしく生きることをサポートすべく、診療にあたる功刀院長。患者が行き場を失うことがないよう、できる限り患者を受け入れる姿勢から医療への熱い思いが感じられる。「訪問診療であるからには、診療所とは違ったやり方があるんじゃないか」と訪問診療の在り方を日々模索する功刀院長に、訪問診療という道を選んだ経緯から今後の展望まで、たっぷり語ってもらった。
(取材日2015年9月9日)

通院できず困っている状態を解消すべく訪問診療の道へ

訪問診療とはどのようなものですか?

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さまざまなご事情があって、診療所まで通えない患者さんのご自宅に伺って診療します。診察して、診断して、薬を出して、経過を見ていくという流れは診療所と変わりありません。ここに「しながわ在宅クリニック」として診療所を設けていますが、ここで診療をするというより、診療前に患者さんのご家族やケースワーカーさんとのミーティングに使っていますね。

先生が診療のスタイルとして訪問診療を選んだ理由は何だったのですか?

病院に行けない、あるいは、行くことが困難な患者さんがたくさんいますので、受診できない人を受診できるようにしたい、病気で困っている状態を解消したいという思いがもともとありました。山梨の病院の心療内科で勤務していた時のことですが、秋口に寒くなってくると、お薬を長く出してくれと言われることがありました。理由を尋ねると、病院へ行くことができないとおっしゃるのです。雪が降ると大変な地域ですし、病院が坂の上にあったので坂を上れないとか、家族に頼んで車で送ってもらうことも患者さんにとっては通院の高いハードルなんですね。だから春までのお薬を出してくださいとのことだったのです。そんな現状を見て、病院へ行くのが大変という患者さんがいるのであれば、私のほうから患者さんところへ行こうと思ったんです。

先生のご専門は精神科ですね。

そうです。精神科を専門にしたのは、今まで精神科の医師に診てもらうことがなかったという人たちに医療を提供したいと思ったからです。昔から精神科や心療内科に通うことには偏見が強くありました。その偏見をなくし、精神科へのハードルを下げたいというのが目標でした。ただ、実際に医師として仕事を始める頃には、うつ病が「心の風邪」と言われ、メディアで取り上げられるようになり、だんだんとハードルが下がってきていましたね。最近は、自ら訴えて来院する方も増えてきましたので、当初の目標は少し達成されたかなと感じています。現在は、病院の中だけで生活してる方々を社会に復帰させることに使命を感じるといいますか、役に立てればと考えています。

開業までの経緯をお聞かせください。

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東邦大学医学部を2002年に卒業し、大学の医局に2年、神奈川の病院で2年、山梨の病院で5年、墨田区のクリニックで3年弱勤めた後、ここを開業しました。開業の意志が芽生えたのは勤務医時代です。精神科の医師として訪問診療に携わっていく中で、もっとうまくできるんじゃないか、工夫できるんじゃないかということをいつも感じていました。しかし、勤務医だとどうしても自分が思ったとおりにできません。そういう思いが積み重なって、自分で開業して、やっていこうと思うようになったんです。

時間をかけて患者の言葉に耳を傾ける

精神科の患者さんを訪問診療で診るということは、外来診療とは違った視点も必要なのでしょうね。

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訪問診療では、大きな機械、装置を使った精密検査ができません。持ち運びができるコンパクトサイズの機器もありますが、CT、MRIといったものは基本的に診療所に行ってもらうことになります。しかし、ご本人が病院には絶対に行きたくないという場合もあるんですね。そんな時、どのような状況においても詳細な検査を受けさせるべきか、無理矢理にでも連れて行ってやるべき検査かどうか、精神科の医師として患者さんの状況、年齢、精神状態などさまざまな事柄を考慮し判断します。そして、精密な検査が必要だと判断した場合は、速やかに診断書を用意し、提携病院をご紹介しています。患者さんの様子や今後の診療方針などをご本人やご家族とよく話し合って、患者さんやご家族が納得すれば、精密検査をしないという選択をすることもあります。

どのような思いで訪問診療に取り組んでいますか?

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精神科医療の裾野を広げたいという思いのもと、病院に行きづらく感じている患者さんを受け入れたいと思っています。過去の診療が合わず、精神科医療に対して、不信感を抱いている患者さんもいます。そういう方を断ってしまうと、行き場がなくなってしまいますので、積極的に受け入れたいと考えています。

実際の診療で、具体的に心がけていることは何でしょう。

そして、診療では患者さんやご家族から話を聞く時間をしっかり持つようにしています。患者さんは、周りが思っている以上に、きちんと考えています。こういう生き方をしたいという希望は誰もが持っているんですね。でも時間をある程度かけないと、そこがなかなか見えてこない。入院している患者さんは、諦めていることも多く、本当の気持ちを言わないことも多い。その結果、患者さんが今の状況にいることを望んでいると受け止めてしまう人もいる。本当はそうじゃない、言わざるを得ないというか、ほかに行くあてもないからそう言ってるだけかもしれないのです。一度見えてくれば、その後は、本人としてはわかってもらってるという楽な気持ちになるし、こちらとしてもサポートしやすくなります。本人らしい生き方ができるように援助していきたいです。

患者に寄り添い、患者の思いに沿った支援を

お忙しい毎日かと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?

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診療所は土日が休みなんですが、急に具合が悪くなってしまった方がいる場合は、緊急往診に向かうこともあります。でも休める日には、趣味でもある車の運転を楽しんでいます。スピードを出して運転したいというより、小回りが利く、小さい車を自分の思うように運転するほうが好きですね。また、パソコンを使ってブログもやっていますが、なかなか大変ですね。文章はかなり推敲します。ニュアンスが伝わるかなとか、誤解を招かないかなとか、あれこれ考えながら更新しています。

今後の展望はありますか?

現在、千葉のいくつかの病院では、ACT(包括型地域生活支援プログラム)という、地域全体で支える取り組みを行っています。具体的には、病院に入院するような重症度の患者さんでも、入院せずに、栄養指導、作業療法、看護師、ドクターなど、大規模なチームで濃密に支援していくという、アメリカ発祥のプログラムです。これは新しい訪問診療の道筋を模索するその一例ですが、訪問診療であるからには、やはり診療所での診療とは違ったやり方があるんじゃないかと思っています。今後も患者さんと近い距離で、その人らしい生き方をサポートしていきたいですね。

最後に、先生が診療で大事にされていること、診療スタンスについてお聞きします。

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私は、患者さんが自分の望む人生を生きる、その援助をしたいと考えています。周囲の人がこうあってほしいということと関係なく、人に迷惑をかけない範囲で、こうしたいという希望をできるだけかなえたい。ご家族は独立して働いてほしいという希望を持っていても、患者さんはそう思っていないかもしれない。そんなとき、私は患者さんに寄り添ってお話を聞きます。たとえそれが世間ではあまり快く受け入れられない希望だとしても、なるべくその思いに沿った形で支援したい。手垢のついた言葉ですが、自分らしく生きてほしいんです。病気になってしまったこと、病気になりやすいこと、それは幸福とは言いがたいかもしれません。でも、そのハンディの中でその人なりの幸せを感じる瞬間があると思うんです。それが世間や家族が思うようなことと違ったとしても、私は応援したいなと思います。

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