山口 美薫里 院長の独自取材記事
山口歯科医院
(豊島区/要町駅)
最終更新日:2025/08/29

東京メトロ有楽町線・要町駅から徒歩2分にある「山口歯科医院」は、地域のかかりつけ歯科として3代続く老舗医院だ。住宅街に溶け込んだそのアットホームなたたずまいが、これまでの長く確かな歩みを感じさせる。院長の山口美薫里(みかり)先生は、虫歯・歯周病治療、入れ歯作製など一般歯科の幅広い診療に対応。患者との対話を重視し、治療内容の説明やセルフケアのアドバイスまで親身な対応が印象的な山口院長に、曽祖父の代から続く同院の歩みや、日々の診療にあたって大切にしていること、得意とする入れ歯治療、小児の診療や噛み合わせについてなど、幅広く話を聞いた。
(取材日2025年5月21日)
3代目院長としてオールラウンドな歯科医療を提供
3代続く歯科医院だそうですね。

私の曽祖父がここで開院し、父に引き継がれ、私で3代目になります。実家もすぐそばでしたから、このエリアも歯科医院も私にとっては幼い頃から慣れ親しんだ場所なんです。この辺りは古くからの住宅街で、患者さんの中には、父の代からもうかれこれ40年以上もかかりつけで通い続けてくださっているような高齢の患者さんもいらっしゃるんですよ。最近は平日の最終受付時間を夜7時30分に設定していることもあり、20代~40代の患者さんも多く来られています。
継承までにどのような経験を積んでこられたのですか。
大学卒業後は、「失敗を恐れず何でもやってみなさい」という方針の一般歯科医院に勤務し、いろいろな経験を積むことができました。院内に歯科技工室があったので、技工士さんとコミュニケーションを取りながらのチーム医療にも携わった当時の経験が、現在の診療にも生かせていると思っています。勤務先の休診日にはここに来て父と一緒に診療することもありました。父の世代は職人気質の無口な歯科医師が多かったと思いますが、父はその真逆で、患者さんから冗談交じりに「先生は診療時間より話をしている時間のほうが長いんだから」と言われるくらい、根っからの話し好き(笑)。何げない雑談も交えて患者さんにリラックスしてもらいながら診療するスタイルは、無意識ですが私にも受け継がれているかもしれませんね。
診療にあたって心がけていることを教えてください。

当院は地域のかかりつけ医として、一般歯科をオールラウンドに手がけています。だからこそ、患者さんが何を求めてここに来ているのか、何に一番困っているのかということを患者さんからじっくりお聞きし、その問題解決のために必要な治療の流れをわかりやすくお伝えするようにしています。患者さんの中には、過去の歯科治療で「上の虫歯を治療しているはずが、下の歯を削られた」「疑問に感じることがあったけど、言い出せなかった」といった苦い経験をお持ちの方が、思った以上に多くいらっしゃるんです。歯科医師が必要と判断して行った正しい処置であっても、十分に説明しなくては患者さんには伝わりませんし、小さな誤解の積み重ねが不信感につながってしまいます。当院では対話を重ねる中で患者さんが「なぜ?」と感じたポイントを残さず拾い上げて、小さなことでもしっかり説明するようにしています。
こだわりの入れ歯治療で患者の生活をより豊かなものに
疑問や不安がない状態で治療に臨めると安心ですね。

そう思います。ただし、口の中のことですから口頭の説明だけでは伝わりにくいこともあるため、エックス線装置をアップデートし、撮影後すぐタブレットを使用してエックス線画像を実際に見ていただいています。加えて当院では口腔内写真や歯の模型を活用したり、その場で図に描いたりして、視覚的なわかりやすさを意識した説明を行うようにしています。口腔内写真は治療前、治療中、治療後に随時撮影しますから、それらを並べて見るだけでも治療の進捗が理解しやすいと思います。ご高齢の患者さんなどで治療内容の説明がよくわからないといった方には、必要に応じてご家族宛てにその日行った治療内容を手紙に書いて、帰りにお渡しします。
診療の中で特にこだわりを持って取り組んでいることはありますか?
入れ歯治療です。保険診療で作るか、自費診療で作るかでつくりも異なりますから、患者さんのご希望とすり合わせながら、その方に合ったものを作っていきます。保険で作ったものと自費のものの大きな違いは見た目と装着感といわれていますが、感じ方には当然個人差があって、保険で作った多少厚みのある義歯でもさほど気にならないという方がいる一方、自費で薄い入れ歯を作ったのに口に入れるのが不快でつけたくないという方もいらっしゃいます。まずは保険で、合わなければ自費のものをご提案していますね。またどうしても入れ歯にはマイナスイメージがあるため、入れ歯のコストメリットや歯の欠損を放置するデメリット、高額な費用がかかるインプラントよりも、まずは入れ歯を試してみる価値は大いにあることを丁寧にご説明しています。いずれにしてもご自分の口に合った入れ歯はその方の生活を豊かにするはず。気になることがあれば何でもご相談ください。
お子さんの診療もされているのですね。

近年は、保護者の方の意識が高くなり、お子さんの虫歯は激減した一方で、歯並びに問題のある子が増えてきていると実感しています。顎が小さいがために歯が並びきらず、また正しい口腔機能を獲得できていないためにお口がポカンと開いてしまっている子どもがとても多いんです。将来、矯正という手段があるといっても、矯正は経済面を含め簡単な話ではありません。当院では小さいお子さんの口腔機能に注目しながら、まずは顎の正常な発達を後押しするため、家でできる取り組みをアドバイスしています。その上で将来的に歯並びが気になるようであれば、矯正歯科をご紹介いたします。
コミュニケーションを深め、患者と確かな信頼関係を
噛み合わせの診療も多く手がけてこられたと聞きました。

実は「痛み=虫歯」とは限らないのをご存じでしょうか。噛み合わせが悪くなることによって虫歯のような痛みが出る他、顎や首の痛み、肩凝り、口が開けられなくなるなど、さらに深刻な症状につながる可能性があります。噛み合わせの不具合は、いつも同じほうを下にして寝ている、同じ側で頬づえをついているといった無意識の習慣が影響していることもありますし、詰め物をした部分と噛み合わせる天然歯の硬さの違いから、詰め物が削れることによっても起こります。また年齢に適した「食べ物の硬さ」も考慮しなければなりません。噛み合わせが崩れてきていることにご本人が気づくことは難しいですから、やはり痛みや不具合がなくても、定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切です。噛み合わせに影響を及ぼしかねない歯ぎしりや食いしばりのクッションとなるマウスピースの作製も行っています。
噛み合わせをいい状態に保つためにも、定期的な通院習慣が欠かせないのですね。
お会計時の次回予約や、個別の案内はがき送付など、こちらから定期的な受診を促す方法もありますが、患者さんが口腔環境をご自身の体の一部と捉えて、自ら危機意識を持って通院習慣を身につけることが大切だと考えます。最近は歯に対する意識の高い患者さんが多く、本当に頼もしく感じるものの、歯間ケアでデンタルフロスを熱心にしすぎたり、ブラッシング時に力を入れすぎて歯茎が傷だらけになったりと、セルフケアをやりすぎている傾向があるのです。せっかくのセルフケアがトラブルのもとにならないようにケアを見直し、道具がご自身の口の状態に合っているかどうかも含めて、歯科医師のアドバイスを受けることをお勧めします。
最後に今後の展望と、読者に向けたメッセージをお願いします。

最近では、治療よりも定期的な検診やメンテナンスなどで、ご来院いただく方が増えています。その中で口腔内にトラブルが発生していなければ、それが最も良いことであるのは間違いないのですが、単調な時間となってしまうことは否定できません。患者さんに「来て良かった」と思っていただくためには、一歩踏み込んで潜在的なニーズを引き出すことも大切なのではないかと考え始めています。トラブルまでいかなくとも「歯の色が気になる」「この詰め物がもう少し目立たなければいいのに」など、細かなところの思いをくみ取ったご提案ができるよう気を配りたいですね。ただ、こうした一歩先を考えた取り組みは患者さんからの信頼があって成立するもの。長く築き上げてきた地域との関係を大切に、患者さんの健康なお口をより良い状態で保つためのサポートに努めていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とは総入れ歯/25万円〜40万円、部分入れ歯/10万円〜25万円、かぶせ物/6万5000円〜13万円、詰め物/2万5000円〜7万円