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館 直彦 院長の独自取材記事

たちメンタルクリニック

(大阪市天王寺区/大阪上本町駅)

最終更新日:2024/02/05

館直彦院長 たちメンタルクリニック main

近鉄大阪線・大阪上本町駅から徒歩約3分とアクセスしやすい場所にある「たちメンタルクリニック」は、精神科・児童精神科・心療内科を掲げる。館直彦先生が院長を務める同院は、力動精神医学の立場から、対話を重視するサイコセラピーを中心とした診療を行っている。精神科や心療内科などでよく行われる認知行動療法ではなく、「患者自身を苦しめる行動や思考の源がどこにあるのか」ということを、医師と患者で協力しながら深く探っていくというアプローチだ。今回は、館院長に、診療に対する考え方やこだわり、将来の展望、趣味や休日の過ごし方といったプライベートな素顔の一面に至るまで、詳しく聞いた。

(取材日2022年1月14日)

悩みや問題の本質を理解するためにアセスメントを重視

診療の際に重視していることは何ですか?

館直彦院長 たちメンタルクリニック1

当院では、精神療法に特化した診療を行っています。一言で精神療法と言っても、いろいろな考え方がありますが、中でもジークムント・フロイトによって創始された「精神分析」の考え方が最も本質的な治療法であると私たちは確信しています。「精神分析」とは、患者さんの体験や経験を主観的に理解しようとする方法で、生じている問題は各々のパーソナリティと置かれている環境とのあつれきによるものだという視点でアプローチをしていくものです。医師は多くの場合、環境に手を加えることはできません。私たちにできることといえば患者が自身のパーソナリティを知ること、理解を深めていくことです。お困り事や生育歴、家族歴などを伺う中で、患者さんの心のパターンや傾向についてアセスメントを行っていきます。

なぜアセスメントを重視しているのですか?

そもそもパーソナリティとはどのようなもので構成されているかというと、持って生まれた特性に加え、母親や兄弟・友人との対象関係、トラウマなど、さまざまな外的な環境要因によって成り立っています。それらにより、患者さんが抱える症状、対人関係や気持ちの動き、物事の捉え方の決定に影響を及ぼすと考えます。したがって、心理テストや面接を行った上できちんと評価をし、今後の治療方針を思案していくということに最も重きをおいています。アセスメントを通して患者さんが自己理解を深めることで、結果的に症状が取り除かれたり、患者さんの持つ視点が変わるというようなことにつながります。

カウンセリングの役割とは何ですか?

館直彦院長 たちメンタルクリニック2

カウンセリングと聞くといわゆる「親身になって相談に乗る」「寄り添う」ということを想像されるかもしれませんが、ここではある意味「寄り添う」といった形で患者さんに関わるということはしません。当院では、患者さんを自立した個人と考えて、その自立した個人が自分のことを自分で考え、行動し、決定していくということをサポートする役割というのがカウンセリングにはあるのだと思います。どういうふうなことが患者さんに起こっているのかということを詳しく探求するというのが基本姿勢なので、診断名をつけるということは重視していません。最近では、発達障害の問い合わせも増えていますが、原則として診断のみをご希望される方は受けつけていません。また、必要に応じて薬物療法を行うこともありますが、最低限度に抑えることも当院の特徴なので、これらの点についてご了承をいただけたらと思います。

「人のためになるように」との想いから精神科の医師に

なぜ大阪上本町で開業されたのですか。

館直彦院長 たちメンタルクリニック3

当院の場合、割と遠方から来る患者さんが多いので、やはりアクセスの良い場所というのは重要な要素だったと思います。また開業時、天理大学の教員をしていましたので、奈良から近鉄大阪線一本でアクセスできる大阪上本町という立地は、私自身にとっても便利でした。ちなみに、開業時はカウンセリングだけを行うオフィスでしたが、続けているうちに社会的なニーズが増してきたことを受けて、本格的に医療機関としてクリニックを立ち上げるに至りました。

施設や設備に関するこだわりがあれば教えてください。

待合室に、うつ病や薬、カウンセリングなどに関する専門書を置いておくようにしています。これは、患者さんが自分自身のことを自分で把握しているほうがいいという考えからです。ただ、当院の場合は、施設や設備などのハード面よりもソフト面、つまり、院内で働くスタッフの質をより重視しています。例えば、当院のスタッフは全員が臨床心理学に精通しており、受付なども専門知識を持ったスタッフが行います。受付での対応も、患者さんとの対話のための重要なステップだからです。専門知識のないスタッフの場合、どうしても対応が機械的だったり、あるべきスタンスとは異なってしまったりということもあります。当院では、スタッフ全員が患者さんの立場に立って物事を考えられる体制を、しっかりと整えるよう努めています。

先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

館直彦院長 たちメンタルクリニック4

実は、最初は理学部でバイオロジーを専攻していました。しかし途中で「やはり人と直接関わりがある仕事がしたい」と思い直し、学士入学で医学部へ入学し直したという経緯があります。その当時から、一番興味があったのが精神科でした。人の心というものに関心があったのです。精神医学などを学ぶ人間にはよくあることですが、自分自身を理解したいという気持ちもありました。ただ、最初はそうした自分本位なきっかけであっても、精神科の分野を学ぶうちに、自分というものも、結局は人との関係性の中で成り立つものだということを実感するようになり、自然と「人のためになるように」という気持ちを持てるようになりました。

悩みや苦しみをともに丁寧に考えるクリニック

休日の過ごし方や、ご趣味について教えてください。

館直彦院長 たちメンタルクリニック5

趣味はチェロ演奏です。中学校の頃から続けていて、今でも週2回くらい弾いています。人前で披露する機会はありませんが(笑)。休日自体が少ないので、他にはあまり趣味はないんです。クリニックの休診日も、勉強会や委員会、セミナー、翻訳などの仕事が入っているので、完全なオフは月に1回くらいです。とはいえ、翻訳などは、仕事でもありますがストレス発散にもなっています。誰かの考えを美しい日本語に変換する作業は、楽しいものです。翻訳でもチェロ演奏でも、「うまくできた」と思える瞬間があると、すごく楽しい。患者さんも、セラピーを通して自分自身を理解する瞬間があります。そういう美的な体験は、心をリフレッシュしてくれるものだと思います。

将来の展望について教えてください。

開業にあたっては、まず何より自分がかかってもいいクリニックをつくりたいという思いがありました。そして、もし私がスタッフであったならば、ここで働きたいと思えるようなクリニックにしたいとも思っていました。そして患者の立場ならば、自分の意見を尊重してもらいたいという気持ちが一番ではないでしょうか。開業から10年以上がたちましたが今後もその気持ちを忘れずやっていきたいと考えています。現在当院のスタッフは20人。後進の育成は患者さんのためでもあり、社会貢献の一環でもあると考えるため力を入れています。スタッフに対しては勉強会での発表や論文の作成などのプレッシャーもかけていきたいですね(笑)。また私自身も、勉強会を主宰するなど学術活動も行っていますが、こちらも並行して行っていきたいと思っています。

読者に向けてメッセージやアドバイスがあればお願いします。

館直彦院長 たちメンタルクリニック6

当院は、悩みや苦しみに対してゆっくりと丁寧に考えていきたいという人に来ていただきたいと思っています。ただし、一つ心にとめておいていただきたいのは、診断やカウンセリングを受けたからと言って、すぐに効果が出るものではないということ。変化につながるまでに時間がかかりますし、場合によっては何十年もかかることもあります。そのつもりで来ていただければと思います。

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