檀野 祥三 院長の独自取材記事
腎泌尿器科だんのクリニック
(大阪市鶴見区/横堤駅)
最終更新日:2025/06/10

大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線・横堤駅から徒歩2分の場所にある「腎泌尿器科だんのクリニック」。患者の視線がお互いの顔に向かないよう配慮された待合室には、心地良いクラシックや映画音楽が流れ、爽やかなアロマの香りが漂っている。また、患者が自由に飲めるウォーターサーバーや、待ち時間の表示モニターなどもあり、診療の順番を待つ患者への配慮が感じられる。泌尿器科というと、年配の男性患者が多いイメージだが、ブックラックには絵本など子ども向けの書籍や、若い女性向けの雑誌などもある。小児夜尿症で受診する子どもが多いためだ。 注力している小児夜尿症や、患者のプライバシーやデリケートな感情に寄り添う診療方針について、檀野祥三院長に詳しく語ってもらった。
(取材日2017年5月17日)
患者のプライバシーに配慮したデリカシーのある対応を
開業に至る経緯を教えてください。

私は関西医科大学の出身で、大学のキャンパスは、ここから車で15分ほどの滝井というところにありました。卒業後も、その関連病院である城東区の大阪府済生会野江病院や、鶴見区のコープおおさか病院で、計13年間働いてきました。この鶴見区周辺は、医師として長年働いてきた愛着のある土地なのです。ただ、医師になった当初から開業しようと考えていたわけではありませんでした。2012年から保険適用となった前立腺がんのロボット支援手術が徐々に増えてきたことで、勤めていた病院での手術件数が減少し、外来のウェイトが大きくなって、いっそのこと自分の診療所をつくって、自分が思う通りにやってみようと思い立ち、この慣れ親しんだ鶴見区で開業しようと決意した次第です。
デリケートな分野の診療ですが、患者のプライバシーにはどのような配慮を?
当院のスタッフは私以外全員女性で、男性が性機能治療や性病で来院した場合、女性スタッフは一切診察室には入室しないようにしています。診察ベッドも診察室には置かず、奥に別途部屋を設けてそこに設置し、タオルケットなどを掛けながら診察します。また診察室には、スピーカーから自然なマスキング音が流れるシステムを導入して、会話が外に漏れないよう工夫しています。それから、当院では患者さんを診療室にお呼びする際、個人情報保護の観点から、あえてお名前を呼ばず番号でお呼びしています。待合室のソファーは玄関を背にしてすべて一方向に向けて置き、正面のモニターや壁面の絵画に視線が行くよう配置することで、患者さん同士の視線がなるべくお互いに向かないよう配慮をしています。
施設・設備に関するこだわりについてお聞かせください。

開業にあたっては1年半の準備期間を取り、椅子ひとつ、壁紙ひとつに至るまですべて自分で選びました。こだわったのは、女性が気軽に入れる雰囲気のクリニックにするという点。泌尿器科は女性の受診率が低く、不調があっても受診せずに一人で悩んでいる人がとても多い。そこで、当院では壁紙に淡いピンクやグリーン、ブルーなどのパステルカラーを採用したり、リラックスできるBGMやアロマなどを使うことで、女性がより入りやすいクリニックをめざしました。設備面ではトイレに力を入れています。尿流量測定装置といって、排尿時に尿の流速、量を測定でき、尿の通り道の閉塞の程度、膀胱の収縮力などを観察できる装置がついたトイレです。
小児の夜尿症(おねしょ)に注力
注力している治療や検査はありますか?

膀胱炎や過活動膀胱、男性の性病、前立腺肥大症、前立腺がんや腎臓がん、膀胱がんの診断など、泌尿器科全般を幅広く診ています。尿道カテーテルの交換や腎ろうなどは訪問診療でも対応しています。また、子どもの数が多い鶴見区という土地柄、小児夜尿症の診察がとても多いので、その治療には注力しています。夜尿症は治療を行っている医院自体が少ないため、親御さんやお子さん本人も、誰にも相談できずに悩んでいることが多いんですよ。小学生も高学年になると林間学校や修学旅行など泊まりがけの学校行事などもあるのに、夜尿症のせいで不安に思うこともあります。
小児夜尿症には、どのような方法があるのでしょう?
お子さんが夜尿症の場合、センサーつきのおむつを使用するトレーニングや、お薬での治療、そして生活指導があります。トレーニングとは、夜尿症のお子さんに水分で反応するセンサーつきのおむつをして寝てもらい、センサーが水分を感知したらアラームで起こすという方法です。夜尿症の尿は一気にたくさん出るのではなく、最初は少量です。そのときに起こすことで、尿をだんだん膀胱にためることができるようになっていくと考えられています。
診療方針や、診療の際に心がけていることはありますか?

一方的な治療にならないよう、話をよく聞き、説明することを心がけています。例えば、ご高齢の患者さんが、進行が比較的ゆっくりな前立腺がんだった場合、体に負担をかける治療を積極的に行うことが必ずしも必要ではない、ということもあります。そういう場合は患者さんのご希望の合わせて、慎重に経過を見ながら、その患者さんに合う治療内容を選択していきます。また、泌尿器科の症状は全般的にデリケートな問題で、なかなか人に話しづらい部分があるので、そこをいかにしっかりと聞くことができるかも重視しています。その分、患者さんをお待たせしてしまうことも多いのが申し訳ないのですが……。
地域の健康増進に貢献したい
医師をめざしたきっかけは?

私が高校1年生のとき、母が病気で亡くなりました。母が亡くなった日、医師になろうと決めたんです。もともと祖父や父方の親戚には医師が多く、医師という仕事が身近なものだったということもあります。また、母を担当してくださっていた若い先生のこともよく覚えているのですが、妊娠中の奥さんがいるにもかかわらず毎晩遅くまで病院に残り、患者のために尽くしてくれる姿が、とても立派だと思っていました。
休日の過ごし方を教えてください。
私はマラソンが趣味で、年に1回はフルマラソンを走ることにしています。2017年は京都マラソンに出ました。走るようになってもう12~13年はたちますが、最近はタイムを気にせず楽しく走るようにしています。往診のない日は、午前の診療が終わった後、近所の鶴見緑地公園まで走りに行ったりもしますよ。走った後にシャワーを浴びられるよう、院内にシャワールームもつくりました。ドクターは走っている人が結構多いんですよ。少し前から妻もマラソンを始めたので、一緒に走ったりもします。
将来の展望についてお聞かせください。

特に「クリニックを大きくしたい」などの大きな考えがあるわけではありませんが、当院はこの鶴見区でまだまだ認知度が低いので、そこは改善していきたいです。例えば、鶴見区の医師会が毎年、各女性会を対象に健康に関する講演を開催するのですが、そうした際は私も医師会のメンバーとして積極的に参加し、講演の司会を務めたりもしています。このような地域の健康増進のための活動を通して、もっともっと地域に溶け込み、当院のことも知ってもらい、人々の役に立っていきたいと考えています。あと、泌尿器科はそれほど怖いところではないということも、もっと知っていただけたらと思いますね。頻尿や尿失禁の診察なら、診察でするのは尿検査と問診と超音波くらいです。下半身の衣服を脱ぐようなことは、実はめったにありませんから、どうぞお気軽に受診してください。