香月 憲一 院長の独自取材記事
学園南クリニック
(奈良市/学園前駅)
最終更新日:2023/02/20

奈良交通バス・学園大和町バス停から近い場所にある「学園南クリニック」。一面ガラス張りの窓がある医院の建物は、周囲からも目を引く。2014年に開業し、整形外科、リウマチ科、外科、形成外科に対応している。香月憲一院長は、大学病院や基幹病院に30年ほど勤め、整形外科の中でも特に手の外科を専門に経験を重ねてきた。大学で治療法や手術法の研究を行いながら、「いつかは患者さんに還元する側に回りたい」という思いが強くなっていき、55歳の時に開業。患者には近隣の住民や車での通院者が多く、女性の患者も多い。そのため、医院は温かみのある木造、開放的な窓にするなど居心地の良さにこだわっている。軽快なリズムでざっくばらんな話をする香月院長。自身の専門や診療への思いについて話を聞いた。
(取材日2022年10月27日)
大学病院などで手の外科を専門にキャリアを積む
ご出身と医師になろうと思われたきっかけについて、教えてください。

奈良市で生まれ育って、大学は大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部に行きました。医師を選んだのは、親が医師だったことが大きいですね。僕は長男なんですが、親と同じ職業を継ぐといった昔ふうの考えで、中学・高校の頃には何の疑いもなく医師になるということを考えていました。他に迷いもなかったですね。親は開業していたのですが、僕は医師はめざしても、開業医になる気は全然ありませんでした。というのも、昔の開業医は自宅兼医院というのが多かったでしょう。実家も廊下を挟んでこっちは自宅、あっちは診療所という造りだったので、仕事とプライベートが分かれておらず、患者さんが診療時間外に来られることもありました。そういった環境には、ある種、生活しづらさを感じていました。そのため、長く大学病院で勤めておりました。
整形外科を選ばれた理由は何ですか。
もともと外科に進みたいという気持ちがあり、消化器外科などと迷ったことがありました。以前在籍していた大学病院で、消化器の病気で入院されている患者さんの多くは、胃がんや大腸がんの方でした。ただ当時は、がんでも患者さんには告知をしていないことが多かったんです。ご家族には伝え、ご本人には違う病名を伝えたりなどしていました。患者さんを思ってのことだとは思いますが、そういった濁すような説明は自分にはうまくできないなと思ったんです。現在は、病名を伝えて治療法や手術のこともすべて、患者さんご本人にも説明しているとは思いますが、当時は性に合わず、整形外科に進むことにしたのです。
実際に、整形外科に進まれていかがですか。

整形外科の病棟の患者さんは、一部の悪性腫瘍などの患者さんは別として、皆さん快方に向かって、帰っていかれますよね。例えば骨折して入院しても、治療したら帰っていかれる。他の外科はというと、何回か入院を繰り返したりなど、長く疾患と付き合っていく必要があることも考えられ、そういう意味では整形外科で良かったかなと感じています。また、僕は整形外科の中でも手の外科に進みました。手の外科は、首や腰を診たり、ひざや肩などの関節を診たりするなどと同様に、整形外科の中の一つのジャンルとしてあるものなんです。研修医時代に、さまざまなジャンルを回っていた当時、出会った手の専門の先生が尊敬するいい方でした。また、手の手術は血管や神経を傷つけないために細かい仕事が多く、小器用な自分の性に合っていたということも、手を専門にする決め手となりました。
大学病院での研究を開業して患者に還元したい
開業しようと思われたきっかけは何ですか。

僕は大学病院に勤め、患者さんに役立つ治療法や手術方法の研究を長く行ってきました。研究するのは嫌いではなかったのですが、長年そういう仕事に携わっているうち、実際に自分で患者さんに還元する側に回ってみたいと思うようになったんです。その後、公的な病院に移りましたが、管理職の仕事が増え、患者さんを診る時間がどんどん少なくなりました。もともと真面目な性分なので、管理職の仕事をきっちり行うと、評価されてまた仕事が増えていくといったように、管理職の仕事でどんどん忙しくなっていくんですね。そのことに徐々に限界を感じていきました。最終的なきっかけは、父親が亡くなったことです。父親が精神的にも経済的にも支えてくれていたんだと、いなくなって初めて実感しました。自分でちゃんとしないといけないという思いと、家族をしっかり支えていかないといけないということを感じ、初めて開業を意識しました。
開業にこの地を選ばれた理由は何ですか。
前職の病院の近くに開業をしたらどうか、との誘いもあったのですが、自宅から近いところに開業したいという思いがありました。広さや方角など希望条件を伝え、不動産屋さんに探してもらい、ここを紹介されました。自宅からは徒歩圏内で、毎朝歩いて来ています。患者さんは、近所から歩いて来てくださる方々の他には、駐車場を計8台用意しているので、車で通院される方がほとんどですね。また当院は、リハビリテーション室をつくっていないんです。本来リハビリテーションとは、手術後に悪くなった関節の動きの改善を求めたり、衰えた筋肉を鍛え直すことだという考えがありますので、当初から当院のコンセプトから外していました。
建物がまたとても目を引く存在ですね。待合室の窓は全面ガラス張りで光が入り、居心地良さそうですね。

手の病気やリウマチの患者さんを中心に診たいと考えていたので、女性の患者さんが多くなるだろうと想定して、女性が過ごしやすい空間にしたいと思いました。医院というと、白色で消毒液の匂いがしているような少し冷たい感じの空間を思い浮かべますよね。そんな一般的な雰囲気にするよりは、あまり医院らしくない建物のほうがいいのかなと考えました。建築デザインは、美容院や店舗、美容クリニックなどを手がけてきたデザイナーさんにお願いしました。木造なので、ときどき木の匂いがしたりして心地良く、雰囲気づくりとしては正解だったと思います。ただ、やり過ぎたかなと反省するところもあります。全面ガラス張りというのは見栄えはいいですが、真夏は暑くてエアコンが効かないんですね。数年前ホームセンターでシェードを見つけまして、今は6月頃から9月のお彼岸頃までは、シェードをつけてしのいでいます。
手の外科の専門性を生かし、地域で役に立ちたい
お忙しい日々の中、お休みにはどのようにしてリフレッシュされていますか。

休みの日にはジムで走ったり筋力トレーニングをするようにしています。私どもの仕事は体が資本ですから、老化に負けないよう、健康には気をつけるようにしています。診察室では腰痛の患者さんには体幹の筋肉を鍛えましょうとか、関節痛の患者さんには減量して関節周囲の筋肉を鍛えましょうと言ってるのに自分がだらしない体では説得力に欠けますからね。うちには2匹の猫がいて今や何よりの癒やしになっています。お天気の良い日には猫とじゃれつつ、寄せ植えの鉢を作ったりして庭仕事をしたりすることもあり、春にはたくさんの花が咲くのが喜びですね。
今後の展望をお聞かせください。
開業して最初の頃は、健康診断を行ったり、当院が休診の日に他の医療機関に出向いて、患者さんの手術を行ったりと、ついつい頑張ってしまい、忙しい日々を過ごしてきました。ですが、忙し過ぎると患者さんへの説明が不十分になったりするなど、反省すべき点がいろいろあったと感じています。今後は手を広げ過ぎず、当院の診察に絞り、より丁寧に診療、治療をしていきたいと考えています。手術や専門外のことは、連携している基幹病院がありますので、そちらに着実に紹介していきたいと思います。
読者にメッセージをお願いします。

専門は手のけがや病気なのですが、ちょっとした悩みや他の基幹病院などでは言いづらいことなどを当院で相談なさる患者さんもいらっしゃいます。そういう相談も、地域で開業している医院として、どんどん受けていきたいと思っています。近隣の医療機関との連携も積極的に行っていきますので、患者さんも、何でも気軽に相談してほしいですね。