若い頃から予防したい骨粗しょう症
骨に良い生活や骨折対策とは
三重膠原病リウマチ痛風クリニック
(鈴鹿市/白子駅)
最終更新日:2024/10/30


- 保険診療
骨粗しょう症のイメージといえば「高齢女性に多く、骨折しやすい病気」だろう。確かに、閉経前後からの骨折で見つかったり、検診で骨量の低下を指摘されたりして気がつく人は多いという。ただ、「三重膠原病リウマチ痛風クリニック」の田中郁子理事長は、「骨折してから治療ではなく、骨折しないように治療することが重要」と警鐘を鳴らす。女性にとって、自身はもちろん、家族が骨折したり寝たきりになることは、介護の担い手として、その後の日常生活や人生を大きく変えてしまう事態だ。だからこそ「年齢や性別を問わず、家族みんなの骨づくりを意識してほしい」と田中理事長。クリニックで日々骨粗しょう症診療を行う田中理事長に、骨の基礎知識をはじめ、骨粗しょう症の原因や予防対策などを詳しく教えてもらった。
(取材日2024年9月10日)
目次
成長期には骨を育てるための食生活や運動を。40歳を過ぎたら骨量を調べ、それに応じた対策や治療を
- Q骨粗しょう症とは、どのような病気なのでしょうか。
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A
▲国の骨粗しょう症診療に深く関わり、指導的立場にある田中理事長
骨粗しょう症は、骨の強度が下がり、骨折しやすくなる状態です。ただ、骨が弱くなったことは自覚できませんし他に大きな症状もありません。骨折して初めて、自分が骨粗しょう症であると気づく人が多いのです。骨は、骨吸収と骨形成という骨代謝を繰り返し、少しずつ新しい骨に生まれ変わる骨の新陳代謝を行っています。この骨吸収と骨形成のバランスには性ホルモンが関わります。閉経後女性では女性ホルモンであるエストロゲンの減少とともに骨量も急速に減り、骨折しやすくなるのです。骨粗しょう症が女性に多いのは、すべての女性が50代には閉経を迎えるからです。
- Q検査・治療方法について教えてください。
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A
▲専門スキルの高いスタッフが検査にあたる
まず骨量を測定します。最も推奨されているDXA法という検査で腰椎や大腿骨などを測定し、若い人の平均的な骨量からどの程度減少しているのか調べます。同時に、骨折や骨の変形がないかレントゲン検査で調べたり、血液検査で骨形成と骨吸収の状態、骨量が低下する疾患が隠れていないか検査することも。レントゲンだけではわからない骨折は、MRIで診断します。また、高解像度CTを用いて骨の質である骨微細構造を確認するために、本院の名古屋膠原病リウマチ痛風クリニックを紹介することも可能です。骨は少しずつ変化していきますので、治療では患者さんの骨の状態やライフスタイルに合わせより適切な薬を選び、長く続けることが大切です。
- Q若い頃における、骨粗しょう症の予防対策を教えてください。
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A
▲清潔感のある診察室で、リラックスして診療を受けられる
十分な栄養や運動刺激によって、丈夫な骨がつくられます。ただ日本人はどの年代でもカルシウム不足の傾向にあるので、いろいろな食品から1日800mg以上のカルシウムを取りたいものです。またカルシウムの吸収に必要なビタミンDも重要で、食事や日光浴することから得られます。成長期は外でしっかり体を動かし、偏食や極端なダイエットは避けましょう。妊娠・出産・授乳期の女性は、よりカルシウム必要量が増えます。不足すると自身の骨からカルシウムを削り、赤ちゃんや母乳に回しています。高齢期は骨折しやすくなるため、筋力を維持することで転倒予防が必要になります。女性はすべての年代で骨に対して意識を向けることが重要でしょう。
- Q骨粗しょう症が進行しやすい年代で、気をつけたいことは?
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A
▲開放的な院内で、「また来たい」と思える癒やしのある空間だ
まず何よりも、現在のご自身の骨量を知ること。女性は40歳を過ぎたら、検診などで骨量を測定しましょう。過去のダイエットや運動不足、妊娠・出産経験等に加え、月経不順や女性ホルモンを抑えるための治療なども骨量減少のリスクになり、若くても骨が弱っていることも。50歳頃からは、カルシウムを1日1100mg程度取ることや、運動内容も考えていきましょう。骨に刺激を与え強くするための運動とバランスを鍛え転倒を防ぐための運動がありますが、体力や持病との兼ね合いもありますので、医師に相談しましょう。転倒を避けるために、床に障害物を置かない、階段への手すりの設置、家の中を明るくするなど、生活環境の見直しも重要です。
- Q田中先生のご経歴やご活動について教えてください。
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A
▲骨粗しょう症、膠原病治療の第一線に立つ田中理事長
私は、長らく大学での診療や骨の研究に携わり、現在は骨粗しょう症に関する管理・治療ガイドラインの策定、医師、看護師、放射線技師などの医療職に向けて、骨粗しょう症の専門教育を行っています。多くの医療職者が骨祖しょう症診療に携わることは、高齢社会であるわが国には重要な点だと考えているからです。すべての患者さんが大学病院などの大規模病院に通院できるわけではありません。患者さんが受診しやすいクリニックで、より専門性の高い診療をすることが、地域医療には必要であろうと考え開業しました。そこで得た現場の知見や情報を専門家の立場で広く発信し、必要な医療を提言していくことも自身の重要な役割だと考えています。