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木俣 肇 理事長の独自取材記事

木俣肇クリニック

(寝屋川市/寝屋川市駅)

最終更新日:2023/02/28

木俣肇理事長 木俣肇クリニック main

「木俣肇クリニック」は京阪本線・寝屋川市駅から北東へ歩いて4分ほど、ビルの3階にある。家庭的な温かみが感じられる同クリニックには、遠方からも足を運ぶ患者が絶えないという。その主な目的は、木俣肇(きまた・はじめ)理事長とスタッフがチームとなって行う「ステロイドを使わないアトピー性皮膚炎の治療」だ。理事長は長年にわたる研究や臨床経験から、アレルギー疾患の根本的なメカニズムを重視。またアトピー性皮膚炎では細菌感染やストレスにも注目し、それぞれにアプローチして「治癒をめざす」治療に取り組んできた。さまざまな捉え方があるアトピー性皮膚炎の治療だけに、患者や家族の苦しみにも思いを寄せる木俣理事長。「この治療を必要とする患者さんに正確な情報を届け、治療を提供したいのです」と強い使命感を抱き続けている。

(取材日2023年1月28日)

アレルギーの発症機序に注目して研究と診療に取り組む

最初に、こちらの診療内容と治療方針をご紹介ください。

木俣肇理事長 木俣肇クリニック1

アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを中心に、アレルギー性鼻炎や花粉症、じんましん、気管支喘息など、アレルギー疾患全般を治療しています。これらの病気では、子ども、大人など患者さんの年齢、あるいは皮膚や目、鼻など症状の出ている部位に応じて、それぞれ別の医療機関に通院している方もいるでしょう。ですが、私はいずれも根本的には同じ発症メカニズムであることに注目して検査や治療を行いますので、当院だけで多彩なアレルギー症状やご家族みんなのアレルギー疾患を治療できます。また、ステロイドや免疫抑制剤は使いませんし、皮膚症状にも保湿剤もまったく使いません。内服薬や生活指導を中心に治療を行うことが、当院の大きな特徴です。

先生がそのような治療をされるようになった現在までの歩みを、お聞かせください。

私は京都大学を卒業後、まず小児科に入局し、福井県の中核病院に勤務しました。非常に大きな病院で多くの診療科があり、当時は今と違っておおらかだったのでしょうね、外科や皮膚科、手術室などにも出入りして診療経験を積ませてもらえました。若手ならではの体力と勢いでしたが、あの頃の経験が今、幅広い年齢の患者さんを治療できる素地になっています。その後、大学の小児科に戻ってからアレルギー疾患に興味を持ち、大学院で診療と研究を開始。もっと専門的な研究がしたいと希望し、縁あって米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校に1985年から3年ほど留学しました。

当時はどのような研究をされていたのですか?

木俣肇理事長 木俣肇クリニック2

アレルギーの発症機序、つまり病気が発症するメカニズムの研究です。アレルギーを媒介するIgEというタンパク質がどう産生されるのか、メカニズムの解明に取り組み、帰国後も大学で診療と研究を続けました。その頃からアトピー性皮膚炎が増えてきましたが、国内ではIgEの研究者で臨床もする医師は少なく、当時は専門的な治療法もありませんでした。ただ、小児科での経験を踏まえてアトピー性皮膚炎を診ると、細菌感染があるという印象を早い時期から持っていました。また治療で使われるステロイドが、IgEの産生に関わっていることもわかってきました。そこで治療では、まずアレルギーの原因を特定するためのプリックテストや、どんな細菌に感染しているかを同定するための細菌培養同定検査を実施。それを踏まえ、ステロイドを使わずに抗生物質や消毒薬、抗ヒスタミン薬など抗アレルギー薬も用いて、一人ひとりに合わせた治療を行うようになりました。

ステロイドを使わない治療で治癒をめざす

研究といえば、先生はちょっとユニークなテーマの研究も発表されていますね。

木俣肇理事長 木俣肇クリニック3

キスをすると、アレルギー患者のアレルギー反応が減弱するのではという仮説のもと行っている研究ですね。京都大学を退職してからも、地域の病院で診療をしながらアレルギーに関するさまざまな研究を続けていました。キスの研究もその一つで、当初はキスではなく、笑うとアレルギー反応が減弱するのではないかというものでした。実は当時、私自身もアレルギー症状があって、アレルギー反応を見るプリックテストを自分に行っていました。またその頃は映画を観るのが好きで、アメリカの白黒映画に出てくるチョビひげのコメディアンも映画の中でよく笑っていたんです。そこでふと「笑ったらアレルギー反応が減るのでは」と思いつき、研究を始めました。感情とアレルギーの関係にはずっと注目しています。

こちらでご開業されたのはなぜですか?

正直なところ、私の治療は患者さんにはプラスとなっても、クリニックの利益にはなりにくいのです。使う検査も薬剤も保険適用で患者さんの負担を抑えられるものを選んでいます。「労力は多く収益が少ない治療」ということで、勤務先は何度か変えざるを得ませんでした。いよいよ次の勤務先が決まらず困っていたところ、ある患者さんとそのご家族から開業のご提案をいただいたのですね。そのご厚意によって、2014年からこちらで診療を行っています。

現在の診療の様子を教えてください。

木俣肇理事長 木俣肇クリニック4

ステロイドを使わず治療を行っていますが、今日、アトピー性皮膚炎の治療薬としてはステロイドが主流です。またステロイドを使わない治療にもさまざまな考え方や手法があり、私のようにIgEに注目した治療を行う医師は非常に少ないのが現状です。患者さんは近隣だけでなく、全国から来られています。年齢は生後数ヵ月の赤ちゃんから90代の高齢者まで幅広く、アレルギー発症の低年齢化、高年齢化が進んでいると感じます。アトピー性皮膚炎が疑われれば細菌培養同定検査やプリックテストを行って感染の有無や原因菌、アレルゲンを調べ、結果に応じて抗菌薬や抗ヒスタミン薬など抗アレルギー薬の内服薬を組み合わせて処方します。食事や睡眠といった生活の指導にも力を入れています。抗菌剤などの外用薬はほとんど使わず、かゆみや傷には、竹を原材料とする医療用不織布ガーゼで患部を保護しながらリバウンド期に注意しつつ改善をめざします。

患者が受けたいと思う治療を提供し続ける

患者さんと向き合う際に、心がけていることは何でしょう?

木俣肇理事長 木俣肇クリニック5

当院を受診されるアトピー性皮膚炎の患者さんは多くが重症で、過去にいくつもの病院で治療を受けている方や、長年治療をしても良くならないという方が多いです。だから医療に対する不信感がありますし、気持ちに余裕がなく、ご家族ともにつらさの渦中にいます。ですので患者さんのお気持ちを厳粛に受け止め、治療内容や今後の経過を写真なども使いながら繰り返し説明することを心がけています。私とともに経験豊富なスタッフたちが真摯に患者さんを支え、生活指導や電話での問い合わせにも応じてくれているので、とても助けられていますね。

先生ご自身は、リフレッシュや健康管理をどのようにされていますか?

大学時代には部活で卓球に打ち込み、学生らしい濃密な人間関係を得ることができました。当時の仲間に会うと、今でも楽しい時間が過ごせますし、学生時代の人脈は今も生きています。また、現在は競技はしていませんが、卓球の試合や将棋の対局を見るとぐっと引き込まれ、かなり気分転換になりますね。また健康については、私自身もかつてはアレルギー症状が強く、治療もしました。ですから症状がほぼ落ち着いた今も、食生活や睡眠には注意しています。かつての症状や今の生活習慣は、患者さんと話をする際にも役立っていますね。

今後の展望をお聞かせください。

木俣肇理事長 木俣肇クリニック6

今、食物アレルギーの方が増えていることが気になっています。プリックテストで以前は陰性でも、ある時期から陽性になる方もいます。今の食品やサプリメントにはいろんなアレルゲンが紛れ込んでいて、自覚なく摂取してしまうことも。そばやピーナッツでは突然強い症状が出ることもあるので、なるべく早く気づいて治療することが大切です。それからアトピー性皮膚炎については、皮膚の病気だと軽く扱われがちですが、患者さんの毎日や人生、性格にも大きな影響を及ぼします。「症状をコントロールしてうまく付き合う」という考えもあるかもしれませんが、私は治癒をめざした治療を行っています。ご自身が納得できる治療法を選ぶことは患者さんの権利ですから、選択肢の一つを守るためにも、できる限り診療を続けていきたいですね。

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