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藤原 正三 院長の独自取材記事

湘南台スマイルクリニック

(藤沢市/湘南台駅)

最終更新日:2020/04/01

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精神科医と内科医でペアを組む訪問診療は貴重ですよと、ざっくばらんな口調の藤原正三院長。私鉄、地下鉄の3路線が乗り入れる湘南台駅、西口すぐの「湘南台スマイルクリニック」はそうしたユニークなクリニックだ。在宅療養の患者の多くは高齢で80%近くは認知症を含めた精神疾患がみられる。このためグループ内のクリニックが平塚市で始めた精神科の訪問診療には各方面から引き合いがあり、その高いニーズに応えようと2014年に藤沢市を拠点とする同院をオープン。「精神科医の訪問診療で認知症が軽くなればご本人も落ち着き、ご家族の負担を減らせますから」と在宅療養の質を大きく向上させたいと目標を力強く語る藤原院長。その中で自身が内科医として果たす役割の重要性など、訪問診療への熱い思いを聞いた。
(取材日2014年9月19日)

ニーズは高いが、精神科の訪問診療はまだ少数派

こちらの訪問診療は精神科と内科と聞きましたが?

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ええ、珍しいでしょう。内科はまだしも、精神科を掲げる訪問診療のクリニックはごく少数です。横浜市健康福祉局の資料によると、「在宅療養支援診療所で精神科を標榜しているのは全体の2.8%」に過ぎません。精神科の訪問診療に対するニーズに少しでも応えるため、2014年に藤沢市を拠点とするクリニックを立ち上げたのです。私は2011年11月から平塚市での訪問診療に参加し、当院開業を機に院長になったんです。

在宅のどういった面で精神科医が必要なのでしょうか?

在宅療養の患者さんの多くは高齢で、80%近くは認知症を含めた精神疾患がみられます。精神科へのニーズはもともと非常に高かったのですが、診るクリニックが極端に少ないのです。このため「認知症などがコントロールできれば在宅療養も可能」という方まで、病院に入院させるような状況もありました。そうした矛盾解決の糸口として、当院では精神科の訪問診療を積極的に行い、在宅療養の質を大きく向上させたいと考えているんです。認知症が軽くなればご本人の気持ちも落ち着きますし、在宅療養に携わるご家族の負担を減らせます。暴れるので在宅の治療も進まず、入院先にも当てがなく……といった難しいケースも、原因は何か、在宅で診ていけるのか、病院での入院治療が必要かなどを精神科医が適切に診断すれば、医療面でのサポートが可能になるのです。

その中で内科医はどのような役割を果たすのですか?

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精神科医による治療が効果を上げて精神症状が落ち着いてくると、注意すべきは身体合併症になります。認知症を含め精神疾患の患者さんは、さまざまな病気を併発されることが多く、体の抵抗力が弱まっていると重症化もありますから。熱が出た、食事を戻したといった体調の変化から、肺炎やぼうこう炎の兆候はないか、そのほか重い病気が隠れていないかなどを診断するのも内科医の役割。幸い、私は卒業した大学の附属病院で救急救命センターに長くいて、個別の専門分野だけでなく患者さんの全身を診た経験が豊富です。幅広い観点で患者さんの体の不調に早く気づき、適切に診断や治療を行う能力は十分に養えたと思っています。

自宅での療養だから本人や家族の希望を最大限生かす

先生は訪問診療でどのような点を重視されていますか?

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病院は病気から早く回復していただき、ご自宅にお戻しすることが最大の目的です。一方、在宅療養はご本人やご家族の希望を生かし、できるだけ長く、あるいは楽に過ごせることが大事。患者さん、ご家族の治療や命に対する考え方は多種多様です。そのさまざまな価値観を受け止め、話し合いながら一緒に治療していく「オーダーメード医療」が、訪問診療では重要と考えています。ときには医学的な正しさとは違う道を選ぶこともあるでしょう。認知症で食事が難しい方、飲み込みがうまくできない方は、胃ろうなどで栄養を保つのが医学的には正解です。しかしご本人やご家族が「口から食べたい、食べさせたい」と希望されるなら、肺炎や窒息のリスクを説明した上で、食べていただくことも考えられます。逆に希望されない治療は行わない場合もありますし、現場で声をお聞きすることが何よりも大切なことだと考えています。

訪問先でそうした信頼関係を築かれるのですね。

私は最初に患者さんがご家族とお会いしたとき、「ご自分の家なのですから、ご希望は何でも話してください」とお伝えするんですよ。そこでお聞きした気持ちをふまえながら、「これならいかがですか」「こんなやり方もできます」と提案するのが医師の役目。私もざっくばらんに話すせいか、「こんなに何でも話しやすい先生は初めて」とよく驚かれます(笑)。そもそも訪問診療は衛生管理、機材、ケアをする人材などの条件が病院とは大きく異なり、医学的な正解を完全に実行するのは難しいもの。点滴も在宅では長く続けられません。ところがそうした悪条件で治療しても、予想以上に快方に向かう場合があるのですから不思議なものです。ご自宅に戻り、ご家族が近くで見ている安心感がいい結果を生むのかもしれません。一方でご自分のベッドで静かに最後を迎えることも、ご家族には喜んでいただけます。

ではこちらの訪問診療の特色や強みは何でしょうか?

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まず精神科と内科の医師、そして看護師が常にチームとして1人の患者さんを診ることです。ご自宅や施設には医師と看護師がペアで伺うので現場の対応力も高く、内科医が診療をするときに精神科医の意見を参考にしたければ、その場で電話をして聞けばいいのですから。最初の訪問が内科医になるか精神科医なのかは患者さんの症状次第です。また、内科医と精神科医が交互に対応することもあり、それが当院の強みでしょう。また患者さんのご自宅でも正確な検査ができる、ハンディな超音波検査装置も導入しています。サイズは大きくないですが、診断には十分な力を発揮してくれます。ご家族にも画像を見ていただき、「この部分は○○が疑わしい」と説明することで、患者さんの状況を理解しやすくなるメリットもあります。病院紹介が必要な場合も、現場でしっかり診断しているので医療機関の受け入れは非常にスムーズですね。

訪問診療の不満を感じ、その解決に自ら現場へ

先生が訪問診療に興味を持たれたのはなぜですか?

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大学病院の救命救急センターにいた頃、運ばれてきた在宅療養の患者さんを診て、「ご本人が望まない病院に送るより、ご自宅で治療できたのでは?」と現場の診断力不足を感じることがあったからです。また病状を普段からご家族に説明できていれば、容体が急変しても、ご自宅で看取る覚悟をお持ちになったかもしれません。そうした訪問診療に対する疑問が重なり、次第に「自分が現場で何とかしたい」と思い始めました。そんなとき開業のお話を頂いたわけです。もともと私は警察官の仕事を辞めて医学部に入ったので、人の役に立ちたい気持ちは強かったのかもしれませんね。

訪問診療では、ご自身のお休みはどうなるのでしょうか?

クリニックは土・日・祝日が休診日で、医師やスタッフが休む日は用意されています。私も家族と出かけたり、ジョギングなどで体調を整えたりして過ごしますね。在宅療養の患者さんやご家族は24時間・365日体制を希望されるでしょうが、当院ではそこまでの対応は難しく、診療時間外や休診日は電話で緊急の呼び出しを受けるオンコール体制です。グループで5人の医師が順番にオンコールを担当するので、医師一人ひとりの負担は軽減されますね。クリニックが訪問診療に本気で取り組み、長く続けるなら、こうした対策はとても重要なんです。ただ私自身でいうと、自分に診てほしい、看取ってほしいという患者さんの場合、休日でも駆けつけることがあります。やはり主治医としては患者さんやご家族の様子が気にかかって、休んでいる気になれません。

最後にクリニック全体の目標や夢を教えてください。

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「精神科の訪問診療をするクリニック」と、当院の特色を多くの方に知っていただきたいと思います。認知症などでお悩みのご家族が、訪問診療するクリニックが見つからず、探した末にようやく当院を知ったという話もあるくらいですから。精神科医と内科医が組んだ新しい訪問診療を普及させたいですね。そのためには同じマインドを持った医師、看護師、スタッフの力がもっと必要になります。医学的な正しさより、患者さんと家族の両方に満足してもらえる医療が当院のポリシー。訪問診療への思いが熱く、愛のある人が参加してくれると、在宅療養を求める患者さんやご家族の希望をもっとかなえられると思います。

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