クリニックでも自宅や施設でも
患者と家族に寄り添う認知症治療
あかねクリニック
(江東区/東大島駅)
最終更新日:2025/01/09


- 保険診療
ほかに類を見ないスピードで進展する日本の高齢化。急速に増加する高齢者人口に比例して、増えているのが認知症だ。認知症は、サポートする側の負担も大きく、専門的な知識を持った専門家の存在が欠かせない。「あかねクリニック」の諸冨夏子院長は、長く地域医療に携わってきた経験を生かし、クリニックでの診療はもちろん、訪問診療でも認知症を診ている。「患者さんとご家族にとってのベターをめざしていきたいと思っています」と話す諸冨院長に、認知症の現状や、同院の訪問診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2024年3月21日)
目次
増加する認知症に訪問診療でも対応。生活背景や心情を踏まえた適切な医療の提供で、変わらぬ暮らしを支える
- Q現場でも、認知症患者の増加を感じていますか?
-
A
▲穏やかな口調で丁寧に説明してくれる諸冨先生
高齢化の進展とともに、認知症の患者さんも増えています。背景には、医療の進歩もありますね。以前なら寝たきりになる方が多かった脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、大腿骨頸部骨折、肺炎なども、適切な処置ができれば違った結果になることが見込まれるようになりました。余生が長くなり、糖尿病、動脈硬化性疾患、喫煙等、さまざまな要因で認知症を発症する確率も増えてきています。高齢者は複合的な疾患を持っていることが多いので、全人的に患者さんを診て適切な医療機関へ紹介することも意識しなくてはなりません。認知症を患いながらお一人で生活されている方も多く、超高齢社会においては医療・介護・福祉の連携が不可欠だと感じています。
- Q具体的には、どのように治療を行うのでしょう。
-
A
▲クリニックは複合施設「メディカルケアタウン東大島」の中にある
症状の進行を抑制するために薬の処方やケアを続けたり、本人やご家族のサポート体制を構築するなど、完治をめざす医療とは異なるのが認知症治療です。将来的には完治が望める時代が来るかもしれませんが、現時点では予防と早期発見が中心となります。実際に受診いただいた際、明らかに認知症が疑われる場合は精密検査や治療を行います。ですが年齢を重ねると、物忘れや聞き間違いはどなたにでも起こり得るもの。認知症かと思っても一時的であったり、実はその方の性格だということもあるんです。生活に密着しながら継続的に診療を続けることで、その症状が認知症によるものなのかどうかを確認し、些細な変化を見逃さないようにしています。
- Q家族が気をつけることや相談すべきタイミングを教えてください。
-
A
▲家族だけで抱え込まず、気軽に相談をと呼びかけている
先ほど申し上げたように、ちょっとした物忘れや記憶違いは、年とともに起きる自然な現象です。しかし、ご家族が「おかしいな」と感じた時にご相談いただくことで、その後の経過を見ながら病的なものかどうかを客観的に判断していくことができるのです。人に打ち明けられず、ご家族だけで抱え込んでいるケースは少なくありません。症状が進んで他者に迷惑をかける懸念がある場合などは、速やかに外部に支援を求めていただきたいと思います。ご本人が病院へ行くのを嫌がる場合は、ご家族だけで説得しようとせず、当院や地域包括支援センター、行政など、第三者を交えて話をすることをお勧めします。
- Q訪問診療で認知症の患者さんも診ているそうですね。
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A
▲長年訪問診療を行ってきた同法人ならではのノウハウが充実
はい。訪問診療では医療従事者である私たちが患者さんが暮らすご自宅や施設に足を運びますが、普段の暮らしを拝見することによって、わかることもたくさんあるんです。家の中のちょっとした段差などを把握できれば、生活の中に潜む危険を回避するための具体的なアドバイスができます。また、患者さんが生きていく上で大切にしていることを知る機会が増え、患者さんの心情を踏まえたサポートができるようになるのも大きなメリットですね。患者さんのご自宅には連絡用のノートを置いてあり、その日の気づきを記録しています。私たち、ご家族、ホームヘルパーさん、訪問看護師さんなど、みんなでその内容を共有しながら患者さんを支えています。
- Qこちらのクリニックの訪問診療の強みを教えていただけますか?
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A
▲近隣の家庭にもすぐに駆けつけられるよう体制を整えている
医療と介護の視点から多角的な支援につなげていけることです。ケアマネジャーのほか、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーションなどに従事する方との連携はもちろん、当院の事務職員や看護師も積極的に患者さんの情報を収集し、まさにチームで一人ひとりの患者さんを診ている感じですね。患者さんが人生を終える最期の時まで、その希望を最大限尊重しながら並走できるのは、当院のチーム力あってこその強みだと思っています。年齢を重ねて通院が困難になった方、老老介護や独居でサポートなしでは通院が難しい方などを、医療や福祉からこぼれ落ちてしまわないようにすくい上げるのが当院の訪問診療の役割です。