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宮川 尚之 院長の独自取材記事

宮川ホームケアクリニック

(岡崎市/美合駅)

最終更新日:2019/10/01

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「宮川ホームケアクリニック」は岡崎市美合町に医院を構え、在宅医療に取り組んでいる。院長の宮川尚之先生は、病気を患ったことをきっかけに大学病院の消化器外科から透析専門病院へ移行。その際、最期を病院で迎えるという医療に疑問を持った経験から「在宅医療をやらねばならない」との思いを強くして開院。さまざまな現場経験の中で、医師として一方的に医療を行うのではなく、「その人がもともと生きてきたコミュニティーで最期まで活躍させてあげたい」と感じているという。患者や家族の話に耳を傾けることを重視している院長に思いを聞いた。
(取材日2018年10月9日)

在宅医療に取り組み医療の現実と正面から向き合う

もともとは消化器外科を専門にされていましたね。

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大学病院の消化器外科で勤務していたのですが、実は私自身が肺結核を患ってしまったんです。このまま外科は続けられないと思い、一旦、血液透析の技術を身につけることにしました。透析治療に取り組んでいる中で、縁あって岡崎市内の透析専門クリニックの院長をさせていただくことになりました。透析を繰り返していると、最終的に患者は血圧が保てなくなり、病院に移っていただくということがよくありました。病院でお亡くなりになる方が大部分ですが、透析は長いお付き合いですし、最期を自宅で看取るところまで自分でできないかという思いが強くなりました。

それが在宅医療の道に進まれるきっかけだったのですね。

もともと在宅医療をやりたいという思いは研修医時代から持っていました。その実現のために、通院困難な透析患者の往診を始めたことがきっかけですね。続けているうちに、地域包括支援センターなどから透析以外にも困難な症例があるからみてもらえないかと要請を受けるようになりました。自宅に伺うと、引きこもりのような状態になりカビ臭い部屋で寝ていらっしゃる方などとお会いすることもありました。また、緊急搬送で市民病院に付き添うと、自宅でもできるような点滴だけ受けている患者さんがずらっと並んでいる光景を目にすることもしばしばあって。そういう現実を目の当たりにして「自分が立ち上がってなんとかしないといけない」と思ってしまったのです。そして2013年、在宅医療が専門の当院を開業しました。

現在はどのような方を在宅で診られているのでしょうか。

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当院では大きく2パターンです。1つは岡崎市民病院などの基幹病院からの紹介、もう1つはケアマネジャーさんや訪問看護師が担当されている方の中で通院困難な方ということで紹介されるパターンです。現在診させていただいているのは、10代の方から100歳以上の方まで、本当に幅広いです。若い方の場合、先天性疾患を患う方が多いです。対して60~80代までくらいの場合はがんが多く、パーキンソン病などの難病の方もいらっしゃいます。80歳を超えてくると、持病によるフレイルが進行し通院困難となる方もいらっしゃいますし、100歳近い年齢になると通院が難しく、寝たきりになり、看取りを視野に入れる方がおられます。

できる限り患者の話を聞くことに時間を割く

自力で通院できない家族を抱える方にとっては心強いですね。

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そうですね。複数の疾患を抱える場合にはいくつかの科に通う必要があり、ご家族の負担も大きいです。それであれば私が2週に1回自宅に訪問し、一元的にかかりつけ医として診療をしていくほうがいいですよね。当院は精神科も標榜しており、アルツハイマー型認知症でごはんが食べられなくなった方や、自閉症のお子さん、統合失調症などの精神疾患を抱え外に出られない方にも対応しています。ただ、うつ病の方の場合、最終的には自立を促さないといけないので、どこまで訪問診療をすることがその方のためになるのかは慎重に判断しています。

どのような体制で在宅医療をしていらっしゃるのでしょうか?

現在は精神科を専門とする非常勤医師2人と、訪問診療に精通した看護師、そして8人の事務スタッフがおります。私が訪問するのは基本的には1人の患者さんにつき2週間に1回です。在宅医療を選択されている方のところには地域の訪問看護師が伺っていることが多いので、調子が悪い時は訪問看護師のところに連絡が行き、まずは診ていただいています。日々の変化や患者の訴えについては当院に連絡し、カルテに反映しています。また、「岡崎幸田いえやすネットワーク」といったICTを利用し、情報を共有しています。2週間に1回の診療の前に私はそれをしっかり読み込んで臨むようにしています。

診療の際心がけていることは?

医療従事者はつい、あれやこれをしてあげたいという気持ちが前に出過ぎて一方的に話をしがちですが、私はまず話を聞く姿勢を大切にしたいと考えています。2週に1度の診療時間が、パソコンのカルテを見てばかりいるのではもったいないですから。できるだけ現場で入力をせず、話に集中できる工夫をしています。私は毎日3時半に起きるのですが、5時半くらいまではその日に訪問する方のカルテを見て診療をシミュレーションしています。訪問看護師さんが伺っていらっしゃるのでその情報にも目を通し、今日はどんなことを訴えられるかな、とある程度予想をつけておきます。そうすると現場でパソコンを見る時間が少なくて済みます。診療は20分くらいなので、その時間が凝縮されたものになるよう努力しています。

具体的にどのような点に注意を払われているのでしょうか。

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薬を減らすことはできないかということも考えるようにしています。ポリファーマシーといって複数の薬が処方され、逆に具合を悪くされている可能性がある方もいらっしゃいます。そもそも体が弱っている高齢者に生活習慣病のお薬を出すことは本当に必要なのか。食事もろくにとれなくて困っている方たちに、体の成分を下げようとするお薬を出す必要があるのかと思うんです。これだけは最低限のレベルという薬の量にしたいので、コンプライアンスをよくするために、1日1回の内服にする、長時間作用型の薬や、合剤を上手に組み合わせるといったロジックを考えるためにも、朝早く起きて考えています。

最期まで社会に貢献させてあげられるアプローチを

ご自宅で最期を迎えたいという人は多くなっているのでしょうか?

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高齢者が増え、全体の死亡率は増えているのですが、確かに病院での死亡率は減っています。一方で自宅で亡くなる方の率は変わらないんです。そのかわりに施設で亡くなる方が多くなっています。中には自宅に帰りたいと願っておられる方もいらっしゃると思いますが、かなわず亡くなる方もいらっしゃいます。当クリニックでも5施設訪問させていただいていますが、そこでの看取りも非常に多いです。在宅専門の当院であっても自宅での看取りは全体の半分程度です。自宅での看取りが増えるには、最期は自宅でというご本人ご家族の意思の有無はもちろん、支援する側の「自宅で看取る」という意識も重要なのです。

先生の在宅医療への思いを改めてお聞かせください。

2040年に向けて、子ども・高齢者・障がい者などすべての方が地域で暮らし、生きがいをともに高め合うことができる「地域共生社会」を実現していくことが課題です。例えばある認知症の高齢女性の場合、その方はお弟子さんを多く抱える書道の先生なんです。いざ書道となるとさらさらと文字を書き、その方の許可がないと出展できないといった具合に、皆頼りにしていらっしゃいます。このように、その人が生きてきたコミュニティーでその人らしくいることこそ、その人の命を生かすことなんだと感じるのです。すべての人が尊厳をもって、これまで生きてきた地域で支えられる側だけでなく、支える側としても貢献する。そのための命を支えることが大切だと思います。

家族が先生にお世話になる方もいらっしゃると思います。読者に向けてメッセージをお願いします。

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基本的に医者というのは「治す」ということに注目し、皆さんもそのような先生を探されているかもしれませんが、病気でも老衰でも「死」は人にとって平等に訪れるものです。それを支援することが在宅医療の仕事だと思います。どのような最期を迎えるのがよいか、ご本人・ご家族・医療介護チームが一緒になってご本人の意思決定を支えていく、この過程を何より大切に考えています。その中で意見が変わったり、意見を伝えることが難しい状態にもなるでしょう。でもその方の最期の時まで“その人らしさ”を追求する。それが私の使命であり、これからの在宅医療の姿勢であると思っています。

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