小國 務 院長の独自取材記事
里町眼科
(安城市/新安城駅)
最終更新日:2021/10/12
安城市柿田公園東交差点の北東角にある「里町眼科」。カフェのようなおしゃれな外観と、オフホワイトとピンクのツートンカラーのソファーが並ぶ待合室は、落ち着きがあり、温かみのあるクリニックだ。小國務院長は勤務医時代に網膜に関連する疾患の治療に従事し、手術経験の豊富なドクター。その経験を生かして、同院でも日帰り手術を行っている。また、入院手術のほうがより適切と判断した場合には要望に合った病院を紹介している。白衣を見て泣く子どもが多いことから診療着をブルーに替えたり、患者の反応を見ながら治療の説明方法を変えたりといった柔軟な対応は患者にはありがたい。人と話すことが好きだという小國先生に、医師をめざしたきっかけや、日帰り手術に力を入れるクリニックの診療について聞いた。
(取材日2018年6月13日)
手術は術後の経過も考え、入院か日帰りかを決定
医師をめざしたきっかけから教えてください。
僕は生まれた直後にNICU(新生児集中治療室)に入ったそうなんですが、その時お世話になった小児科の先生がすごく感じの良い先生でとても良くしてもらった、と幼い僕に親が何度か話してくれたんです。そういったことも影響して、医療系の番組やドラマに興味を持ってよく見ていました。実家が学習塾ということもあり、中学受験をして私立に進んだのですが、その学校が医学部受験をする子が多い学校だったんですね。もともと興味はありましたし、周囲の環境も手伝って大学の進学先を医学部に決めたんです。
眼科を専攻されたのはどうしてでしょうか。
医学部をめざした時から手術をしたいという気持ちがありました。5年生の時に全科を実習で回るのですが、眼科は顕微鏡で手術をするんですね。目は光を通すものだけにほかの体の組織と違って光が反射するような感じできれいなんです。また顕微鏡の中で操作することにもすごく興味が湧いたんです。子どもの頃にプラモデルを作るのが趣味で、細かい作業が好きだったんですよ。だから顕微鏡での細かい作業にも心惹かれたんだと思います。選択実習の際に眼科で指導担当の先生に顕微鏡を使う作業の筋が良いと褒められ、「眼科の医師になったほうがいいよ」と言われてその気になりました(笑)。好きなことが向いていると言われたことで、眼科を専門とすることを決心しました。
日帰り手術をされているとのことですが、どういった手術が多いのでしょうか。
手術の数としては白内障が一番多く、毎週コンスタントに行っています。あとはこの辺りは農家さんも多いためか、日光に当たる時間が長いとなりやすい翼状片(よくじょうへん)という疾患が多く見受けられます。この病気は手術しても再発しやすいため工夫が必要な手術なのですが、今のところ当院で行ったケースでは再発もなく、自信を持って取り組んでいる手術の一つです。当院で行う手術はすべて日帰りになりますが、手術後に痛みが生じたり、眼圧が上がって気分が悪くなったりするなどの術後の不安定さが考えられる患者さんには入院設備がある病院を紹介しています。
診療のクオリティーを保つ医療機器
開業時には、大規模病院でも使われるレベルの医療機器を導入されたとか。
はい。ただ、医療機器はどんどん新しくなり、10年たつと古いものになってしまうので、定期的に新しくしていかないといけません。当院も開院から5年たったので、それぞれ整えていこうと思っています。新しい機器を導入することはいろいろと大変なことも多いのですが、診療のクオリティーに直結するので譲れませんね。眼科は機械を介して診察することがほとんどです。変化の一例をあげると、ここ10年で画像の解析技術てすごく進化したんです。網膜の断層写真を撮って解析するOCTという機械があるのですが、僕が医者になった頃と今とを比較すると、アナログテレビとデジタルハイビジョンテレビの違いより大きな差があるんですよ。
医療機器の進歩を生かすことも、よりよい診療には重要なんですね。
そうですね、医療機器の発達によって診断しやすくなりましたし、昔はわからなかったものもわかるようになりました。治療できなかった疾患もある程度治療できるようになりましたし、手術もすごく変わりましたね。医療は日進月歩でどんどん変わっていきます。今は画像検査で写真を撮ったら一発でわかる疾患も、昔はそんな検査機器自体がなかったので、一生懸命目で見て悪いところを探したんですよ。ただ、当時培った「診る力」は今の診療にも生かされていると思います。
影響を受けた先輩や師事された先生はいますか?
大垣市民病院で勤務をしていた時に教えていただいた上司は厳しい方でしたが、その先生に教えていただかなければ今の自分のスタンスはないだろうと思うくらい強い影響を受けました。まだ手術経験の浅い僕への指導が的確で理論的なんです。また手術の際に機械を設定する必要があります。通常は業者任せなんですけど、その先生は全部自分で理解していないと駄目だという主義。機械が壊れたり、業者の人がいなかったりしたらどうするんだと言うんですね。なるほどそうだなと思って、それからはどんな機械も業者さんの設定作業に質問しながら知識を身につけました。それで救われたことも何度もありますし、何より自分で設定できることで手術がやりやすくなりました。自ら自分好みに設定するのは眼科医師でも少数派だと思いますが、同じ考えの先生たちと学会でお会いしたときにマニアックな話をするのも楽しいですよ(笑)。
患者にとってより良い治療の道筋を示す
スタッフの皆さんも丁寧な方ばかりですね。何か先生からお伝えになってるのでしょうか?
ありがとうございます。当院のスタッフは、患者さんが診療室で僕に言い忘れたことや、時には僕への感想や印象などもこっそり打ち明けられたりしていまして、僕とは違う距離感で患者さんに親しまれているみたいでうれしいです。なので僕もとても頼りして、特に教えることなどないくらいなのですが、忙しい時にその忙しさを患者さんに見せないように、ということは心がけてもらっています。患者さんをできるだけお待たせしたくないと考えると「早くしなくては」と思ってしまうので、つい急いでいる感じが出てしまいます。しかしそうなると患者さんにも移動などを急ぐ雰囲気が伝わってしまいますし、口調も厳しくなりがちですよね。でも自分のペースで仕事をやるよう心がけてもらうことで、気持ちの余裕も生まれミスを防ぐことがができると思うんですよ。決して手を抜くということではなく、余裕を持つことは大切だと思っています。
診察の際、心がけていることを教えてください。
今は治療の選択肢が多いので、すべての治療についてリスクも含め説明し、患者さんに選んでもらうことが主流となっています。しかし現実には選択肢があり過ぎて迷ったり、リスクを聞いて次に進めなくなったりする人もいます。以前、ある方がそういう今の医療の現状に対し「いろんな治療を示してリスクの説明や悪いことばかり言われると、この先生自信がないのかな、責任を取りたくないからそう言うのかなと感じると思う」とおっしゃったんです。そう言われるとそうだなと思ったんですよね。それ以来当院では、治療の種類を説明する時に「今の状態だとどの治療が適切か」も同時に示して、ある程度の道筋が見えるようにしているんです。もちろんリスクの説明はしますし、「この治療法しかない」というような言い方はしません。でもその方法のほうが患者さんもご自身で考えやすいようで、納得のうえ治療もスムーズに進みやすいように感じています。
今後のクリニックの展望についてお聞かせください。
この先、医療機器も手術の方法も変わっていく中で、今後も大規模病院と同レベルの医療機器の充実を維持しながら、全国レベルでの眼科のスタンダードな治療を受けられるような道筋をつくれるクリニックでありたいと思っています。眼科の治療は専門性が高いだけに、病院によって治療方法や専門も違います。当然、自分自身も万能ではありません。常にアンテナを張って、この症状にはこの病院、この疾患にはこの先生、と適切な医療機関を紹介できるようにしたいと思っています。ベストと言ったら言い過ぎかもしれませんが、よりベターな選択ができる地域の窓口として良きアドバイザーでありたいですね。