松本 悠 院長の独自取材記事
きたなら駅上ほっとクリニック
(船橋市/北習志野駅)
最終更新日:2021/10/12
東葉高速線および新京成線の北習志野駅直結の駅ビルの3階にある「きたなら駅上ほっとクリニック」。院内は明るく清潔感あふれる色使いでまとめられており、診察室も落ちついて話せるような雰囲気づくりを心がけているという。できるだけ受診のハードルを低くしたい、と語る松本悠(ゆう)院長は、このクリニックを、ゆりかごから最期まで、必要な時に一休みできる「心の宿り木」のような存在にしたいと話す。かつては水球選手として活躍し、医師になってからも休職してバックパッカーとして世界中を回った経験を持つ松本院長。いつかは患者を連れて世界中を旅したいという壮大な夢を描いている。そんな松本院長に、さまざまな話を聞いた。
(取材日2019年4月11日)
心が疲れたらいつでも気軽に立ち寄れる場所に
2018年10月にこのクリニックを引き継がれたのですね。
前院長時代から認知症を主に多くの患者さんが来院されていましたが、医師の数の限りもあり初診まで随分お待たせしてしまっていました。私が引き継いでから、認知症はもちろん、生まれてから最期の時までの長い人生の中でちょっと心が疲れた時や悩みが深くなった時に気軽に立ち寄っていただき、人生のパートナーとして寄り添って行けるような場所にしたいと思い、幅広い分野に対応できるよう拡大しています。現在外来では医師が10名在籍し、お電話の他にインターネットでも予約を受けつけるようにしました。また、平日の夜は曜日により20時まで、土曜日も17時半まで受けていますので比較的若い層の患者さんも随分増えてきました。今は15歳以上の患者さんが対象ですが、早い時期に体制を整えて小児の診療も開始したいと考えています。日曜の診療も開始したいと思っています。
初診の患者はできるだけ早く受診できるように配慮されているそうですね。
このエリアは精神科の病院はいくつかありますがクリニックは比較的数が少なく、初診の予約が取りにくいケースも多いようです。精神科や心療内科を受診されたい方は、今困っているから早く診てほしい、ということでご連絡してこられるのでしょう。ですから私たちはなるべく早くお会いしたいと思っています。当クリニックでは早ければ当日に、遅くとも1週間以内に初診でかかっていただけるよう努めています。またどうしても相性がありますから、担当の医師を変えることもむしろ積極的に勧めています。医師は10名おりますから気軽にお申し出ください。医師を変えたけれど、やっぱり前の担当医師が良かった、ということでまた戻られる方もいらっしゃいます。
ご家族からの相談もあるのですか? 受診のタイミングについても教えてください。
ご家族がご相談に来られるケースも多いですね。当クリニックではご家族のための相談時間も設けています。また当クリニックにはご家族ぐるみで来院されている患者さんも多いんですよ。お子さまの問題が親御さんの診療を通じて解決につながることや、その逆ももちろんあります。ご家族皆さんとお話することで、早く問題解決の糸口が見つかることも多くあります。受診のタイミングとしては、お悩みが深くなって日常生活に支障が出るようになったら、早めに受診をお勧めしたいですね。そうでなくとも自分の中で悩みが深くなってきたと感じたら、私たちにお話しにいらしていただければうれしいです。
患者にとっての幸せとは何か、を考える
訪問診療にも取り組まれているそうですね。
訪問診療は心療内科や精神科の外来とはまったく別に、24時間体制で内科各科の先生とともに全身も心もケアできるようシステムを整えています。訪問診療というとご高齢の方のお看取りといったイメージが強いかもしれませんが、私たちは「人生に寄り添う」法人の理念に基づき、外来と併せてできるだけ長く診ていきたいと思っており、外来と訪問のシームレスな連携も特徴です。訪問部門は在宅でもっと高度な医療が提供できるよう、各科を合わせて総合病院のような体制をつくってきています。また引きこもりの方のご自宅訪問や行政からのご相談も受けており、医療を要するはずなのにつながっていない方へのアプローチにもとても力を入れています。
摂食障害やスポーツをする人の心の相談などにも対応していただけるそうですね。
幅広い疾患を診させていただくことができるのが当クリニックの特徴ですが、さまざまな分野で専門的な知識と経験を持った先生方がいるのもポイントです。拒食や過食といった摂食障害は、生理不順、不整脈や内臓疾患などの全身管理や豊富な臨床経験も必要になります。またスポーツをする人は、イップスに代表される突然のパフォーマンス不良やモチベーションの維持、ライフステージに応じた競技生活の悩みもあります。若い女性アスリートの鉄欠乏によるメンタル・体調不良も重要な問題です。そういった場合に頼りになる先生にも来ていただいています。皆意欲があり、経験豊富な先生方ですのでぜひご相談ください。もちろん認知症専門の医師も在籍しています。
診療のポリシーを教えてください。
幸せに感じること、というのは皆違います。ですからその方にとっての「幸せ」は何か、ということを考えるようにしています。精神科の治療においては、投薬などによって脳内の化学物質のバランスを改善する、患者さんの考え方、ものの捉え方をより生きやすい方向へ導く、患者さんにとって苦しく感じる環境を整える、という3つの診療の柱がありますが、それぞれを患者さんにとって、また治療のステージごとに良いバランスで調整することが大切だと思っています。患者さんにとって何が幸せかということを患者さんとともに考え、ゴールをどこに設定するかをよくご相談するようにしています。訪問診療ではそこにご家族も含まれますね。例えばお看取りに際してなら、どのような最期がご本人だけでなく残されたご家族にとって納得いくものになるのか、ということもありますし、早いうちから細かくいろいろなことをお話しさせていただくようにしています。
眠れぬ夜があったら受診を
医師になって良かったと思うのはどんな時ですか?
私は精神科の医師ですから、患者さんが治療のめどがついてクリニックにいらっしゃる必要がなくなり、いったん卒業される時に心からほっとします。本当に良かったですねと。またお元気に活躍されている姿を見るのもとてもうれしい瞬間です。患者さんは当初、先がまったく見えない状態で来院されると思います。ですからまずどんな症状なのか、お悩みは何かということをお伺いしたら、治療の流れをおおよその治療期間も含めて一通りご説明します。そうすると多少なりとも気分がほぐれ、暗闇の中に希望のようなものが見えてくるのではないかと思うのです。私は患者さんが回復しお元気になっていく時、自分が治療した、という意識はあまりないんです。私が関わることで患者さんが良い方向へ向かえたら良いな、お話したことがその後の人生で役立てば良いなと、そう思っています。
今後の展望を教えてください。
今現在10名の医師がいますが、より多くの患者さんを助けるには規模が必要です。分院を展開し、近いうちに医療過疎地などでも医療貢献したいと思っています。医師数が確保できれば法人内で医師やスタッフを融通したり、適切な専門家を派遣したりできます。また若い頃にバックパッカーで世界一周をした折、この壮大な景色をみたら、この素晴らしい音楽を聴いたら、ここで暮らしたら病める人も心が少しは軽くなるのではと思ったような世界各地での経験から、患者さんとともに転地療養のようなことにも取り組んでみたいですね。しかし一番重要なのは病む前の予防です。特に未来を創る子どもたちに、メンタル教育とまでは言いませんが、より良く生きるためのものの考え方などを伝えて、患者さんの数そのものを減らすことが理想であり、私の一つのゴールだと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
楽観的な人というのは、心の持ち方は楽しくポジティブに、かつ上手に諦めることができる人だと思っています。こうあらねばならぬ、と結果に固執せず、前を向きながら程良いところで落としどころを見極める。すべてがうまくいくわけでもないよ、とそんな肩の力を抜いた生き方ができれば、随分と楽になると思います。何かお悩みがあって眠れない夜があれば、ぜひお気軽にご相談にお越しください。お待ちしております。