下村 裕章 院長の独自取材記事
しもむら内科クリニック
(高槻市/高槻市駅)
最終更新日:2024/12/24

「しもむら内科クリニック」は阪急京都本線・高槻市駅からも、JR京都線・高槻駅からもバスで10分以内。藤の里停留所のすぐ前にある。院長の下村裕章先生は、母校の大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)の大学病院にて総合内科医長を務めたベテラン医師で、日本内科学会総合内科専門医。2012年に開業した同クリニックには、生活習慣病の治療に注力し、投薬や生活習慣の改善指導で病気のコントロールをめざす。また、日本東洋医学会漢方専門医の資格も持ち、西洋医学的には病名がつかない不調に悩む患者に、漢方と西洋医学の両方の良さを取り入れた治療を行う。絵を描くのが好きで、穏やかな雰囲気の下村院長に「母親を診るつもりで患者さんを診る」という診療方針や、また漢方と西洋医学のハイブリッド治療のメリットについて聞いた。
(取材日2024年3月21日/情報更新日2024年10月18日)
西洋医学と漢方のハイブリッド治療で幅広い症状に対応
こちらに来院される患者さんはどのような方が多いのでしょうか?

開業当初は地域の高齢の患者さんが多かったのですが、最近は若い患者さんも増えてきた印象です。このエリアには医療機関が多いので、当院を選んで来ていただいているのはありがたいことですね。主訴としては、中高年から高齢の方の高血圧症、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が多いです。そうした患者さんにはエックス線や心電図、採血などの検査を院内で行い、受診当日に結果をお知らせしています。また、めまいや痛み、しびれなどの不定愁訴を訴える方も来院されますね。そうした方々は漢方治療を希望されることも多いので、時間をかけて問診を行い、漢方的な体質や病能を示す「証」を判断し、それに従って治療方針を決める「随証治療」で漢方薬を処方します。不定愁訴以外でも漢方薬で改善をめざせるケースがあるのでぜひ相談してほしいです。
生活習慣病の患者さんにはどのように向き合っていますか?
服薬治療を行うケースが多いのですが、第一に必要なのは食事と運動の習慣を見直すことです。ただ、患者さんにとってライフスタイルを急に変えるのは難しく、生活習慣病による動脈硬化で痛みを感じるわけでもないので、問題を放置しがちです。しかしそれでは良くないので、自分の将来を安泰に保証するために治療をしないといけないということを写真や図表を提示しながら説明します。時には、調理の仕方や調味料の使い方など、日々の食生活に役立つ情報提供もしているんですよ。治療方針に納得して、服薬や生活改善を続けていただくことで、病状のコントロールを良好に行えればと考えています。患者さんの中には、インターネットや雑誌が発信する情報をうのみにして治療を敬遠される方もいらっしゃいます。その場合は、なぜ薬物治療や生活習慣の改善が必要であるのかを、できる限りの時間を使って納得していただけるようにご説明しています。
先生が漢方を取り入れた経緯をお聞かせください。

若い頃は、漢方薬は「エセ医学」のようであまり期待できないと考えていました。しかし、自分が慢性じんましんになり、ステロイドを含む西洋医学の薬を飲んでもまったく良くならないと感じたときがあり、試しに漢方薬を飲んでみたことがあったんです。それが漢方薬の有用性に気づくきっかけになりました。それ以降、「様子を見ましょう」となっていた、西洋医学では手詰まりになっていた患者さんたちを助けてあげたいとの思いから一念発起し、独学で漢方について勉強したのです。患者さんと漢方治療に取り組む過程で、私自身もハッピーな気持ちになれると思いました。漢方の勉強・治療が面白くて仕方がなくなり、気がついたら漢方セミナー講師として全国を飛び回ることになっていましたね。現在は日本東洋医学会の代議員も務めています。
母親を診療するつもりで患者に接する
患者さんに接する際に心がけていることを教えてください。

新米医師時代の恩師の言葉、「If this patient is your mother?」を座右の銘にしています。この患者さんがもしあなたのお母さんだったらどう治療していくべきなのか、という問いかけであり、若い頃からずっと大事にしてきた重い言葉です。恩師は生前、「弟子は師匠を乗り越えないといけないんだ」と私に言ってくれたことがあり、弟子として認めてくれているのだと感無量になり、その感激を今も糧にしています。そして、「この患者さんに最も有益な治療はなんだろう」と考えながら、お話をよく聞き、相談に乗り、時にはお願いをしたり、指導したりしながら毎日診療にあたっています。これからも「身内だったらどう治療するのか」と自分に問いかけ続けて、すべての患者さんに明るい表情で帰っていただけるように努めていこうと思います。
最近増えてきている疾患や、先生が特に注目している治療法はありますか?
花粉症が増加傾向で、特に重症の患者さんに対して、根本の体質にアプローチする舌下免疫療法を行うケースが当院でも増えてきています。これは患者さん自身で1日1回、アレルギーの原因物質であるアレルゲンを含む錠剤を舌の下に置いて、1分たったら飲み込むというもので、アレルギーのもとを体内に少量ずつ入れることにより、徐々に体をアレルゲンに慣らしていくという治療法です。以前は注射のため定期的な通院が必要だったのですが、舌下免疫療法は自分で服用できますし、眠気や集中力低下などが起こることもありません。
舌下免疫療法は花粉症以外にも適応されるのですか。

適応はスギ花粉症とダニアレルギーで、5歳以上が対象となり、保険診療扱いとなります。高槻市では18歳以下のお子さんの場合、子ども医療費助成制度が受けられます。スギ花粉は5月頃から、ダニアレルギーはいつでも治療をスタートできます。
あふれる医療情報に流されず、まずは相談してほしい
明るく居心地の良いクリニックですね。先生のアイデアが反映されているのですか?

元気を引き出せる色として、クリニックのテーマカラーをオレンジにしました。看板やホームページもオレンジを基調としています。また、患者さんの心が落ち着きゆっくりと過ごせるようにと思って、観葉植物をたくさん置いたり、待合室を広めにしたりしました。車いすでも来院できるように、玄関までのアプローチやトイレはバリアフリーにしています。自分自身も絵を描くことがあるのですが絵画鑑賞も大好きなので、お気に入りの画家の絵を診察室や待合室に飾っているんですよ。
先生が描いた絵も飾られていますね。
子どもの頃は図工や美術の授業が大好きで、小学生の時は油彩を習っていました。ずっと続けたかったのですが、高校生の時に選択科目で美術を選べず……。それ以後、旅行先で簡単にスケッチする程度で、絵は描いていなかったのです。しかし、地域の医師会に美術部ができたことをきっかけに再開しました。中学生以来40年ぶりに描いた絵や、毎年行っているその医師会美術部の展覧会に出品した絵を診察室に飾っています。受診した際に、ぜひ見ていただいて感想をいただけるとうれしいです。その他に有名な絵画を模写したものも飾っているので、探してみてください。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

今は健康や医療に関するさまざまな情報に、簡単にアクセスできる時代です。そのため、誤った情報、体質や症状に合わない情報をうのみにしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。その結果、症状が重くなったり治らなくなったりするのが心配です。気になる症状があるときは、まず当院にご相談ください。一人ひとりの患者さんにとって適切な治療を提案できるように、また、日々進歩する医療に置いていかれないように、研鑽を積んで自分自身を常にアップデートし続けていこうと思います。地域密着型のクリニックとして、患者さんの役に立てたらうれしいですね。