田本 直弘 院長の独自取材記事
米子こどもクリニック
(米子市/東山公園駅)
最終更新日:2021/10/12

米子生まれ、米子育ちの田本直弘院長が2012年に開業した「医療法人田本会 米子こどもクリニック」。小児科、新生児内科、アレルギー科、内科を診療し、子どもから大人まで幅広い層の健康を見守る。田本院長がめざすのは「近所のお兄ちゃん」のような気軽に頼れるクリニック。「子どもたちとその家族が笑顔で健康に過ごせるように」という一本の太い柱のもと、さまざまな相談に親身に対応する。「お母さんから『遊びに行く感覚で来られるクリニックでよかった』と言っていただくことも」とほほ笑む。好奇心旺盛で新しいことにもどんどん取り組み、昨年からはウェブ上での動画配信も始めた。私生活では5児の父でもあり、子育て経験も豊富だ。そんな田本院長に、小児医療への熱い思いを中心にじっくり話を聞いた。
(取材日2021年1月25日)
気軽に相談してもらえるクリニックをめざして
医師を志したきっかけを教えてください。

父が歯科医師、母が薬剤師、親戚にも医療関係者が多く、自然にめざすようになりましたね。小学校の文集にも「将来の夢はお医者さん」と書いていました。子どもの頃にお世話になった小児科の先生の影響も大きいですね。病気がちな僕に「隣に引っ越して来たら」とおっしゃるほど親身になって診てくださり、僕の家族もみんな信頼していて、「あんなお医者さんになりたいな」と憧れていたんです。開業したのもその先生の存在があったから。僕の中では「お医者さん=町のクリニック」で、医師をめざしたときから開業しようと思っていました。
小児科を選んだのはなぜですか。
僕はもともと子どもが大好きで、大学時代にはアルバイトやボランティアで子どもたちと関わって、小学校の先生にもなりたいと思っていた時期もあったんです。でも、お医者さんになればどんな形でも子どもと関われるかなと考えて、当初の思いどおり医師の道を選びました。小児科に進もうと気持ちが固まったのは研修医の時ですね。研修中は全診療科を回るのですが、小児科に行った時、救急車で運ばれてきたお子さんをスタッフ一丸となって何がなんでも救おうとする姿を見て、心を揺さぶられたんです。「とにかく助けるぞ」という、その真っすぐな姿勢が僕に合っていたんでしょうね。
どんなクリニックをめざしていますか。

僕はなんでも相談していただける「近所のお兄ちゃん」みたいな存在になりたいと思っています。そんな想いが届いて、お母さんから「遊びに行くような感覚で来られる」と喜んでいただくことも。その分、本気で心配しますし、一方で、親御さんが言ってほしくないと思われるようなことをお伝えすることもあります。例えば、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の兆候が見られるお子さんが「授業中45分間じっとしていられない。でも、15分だったら集中できる」のであれば、「まず国語の勉強を15分、場所を変えて算数を15分、さらに場所を変えて社会を15分。そうしたら全部集中してできますよね」とご提案します。そのほうが親御さんもお子さんも楽なはず。病名がつくのは嫌だと思われる方もいるかもしれませんが、そのままの状態でいるほうがひずみがどんどん大きくなってしまうと思います。親も子も我慢しなくていいようにということを常に考えていますね。
子育ての実経験を踏まえたアプローチやアドバイスも
先生には5人のお子さんがいらっしゃるそうですね。

もうすぐ6人目が生まれます(笑)。ですから、親御さんのお気持ちはよくわかるつもりです。ただ、僕が育った家庭は厳格なほうで、昔は「子どもはこうあるべき」という思いが強かったんです。でも、4人目、5人目が生まれるとそうも言っていられなくなって、自分を縛っていた鎖が1つずつほどけていくような感じがしたんですよね。親御さんの中にも僕と同じように見える方もいらして、その鎖を解いていくと楽になるんじゃないかなと思っているんですよ。そんな経験も踏まえて、クリニックでの診療はもちろん、市内の園医や校医も務めさせていただきながら、この地域が子どもが育つ環境、お母さん方が子育てする環境として、より良くなるように少しでもお手伝いができたらと考えています。
医療とは別のアプローチでのご提案もされているとお聞きしました。
例えば、子どもが夜泣きすると「なんとかしなくちゃ」と思うお母さんが多いですが、僕は「泣くということは生きているのだから、心配いらない」と思うんです。お母さんが熟睡していたら、きっと子どももぐっすり寝るのではないでしょうか。悩んでいる時って視野が狭くなっていることが多いので、違う角度から「こういうやり方してみない?」とご提案して、解決に導けたらと思っているんです。お一人で抱え込んでおられるようなら、僕は踏み込みますよ。おせっかいかもしれませんが、そういう医師が一人ぐらいいてもいいかなと思っているんです。
子育て中の方に伝えたいことはありますか。

小児医療では、ご家族と医師はチームであると思っていただきたいですね。おうちでの様子や食事の内容、いつ熱が出たのかなどは診察だけではなかなかわかりませんので、ご家族の協力が不可欠です。気がついたことがあればなんでも伝えていただければいいですし、わからないことがあればどんどん質問してください。また、子育て中に迷うのが、病院に連れて行くべきかどうかではないでしょうか。例えば夜中に40度の熱が出ても大きな声で泣いているときは、まず大丈夫でしょう。大声で泣いているのなら体力があるということですから。ただ、ぐったりしていて42度を超えると急性脳症や熱中症の可能性もありますので、すぐに救急車を呼んでください。こういったことも、わからなければご連絡をいただければと思います。
家族みんなを見守るファミリークリニックになりたい
アレルギー疾患の治療に力を入れているそうですね。
スギ花粉症とダニアレルギーに対しては、「舌下免疫療法」を取り入れています。これは、原因となる物質を少しずつ服用して体を慣れさせていくことで、数年かけて症状を和らげていくための方法です。お子さんだけでなく大人の方も対象としていますので、どなたでもご相談ください。アレルギーの血液検査も行っています。ただ、アレルギーの有無を調べるというよりも症状が出たときに調べるということを重視していますね。というのも、例えば、卵アレルギーの結果は0~6段階で示されますが、0でも食べられない人もいれば6で食べられる人もいて、結局、食べてみないとわからないんです。ですから、アレルギー検査の結果はあくまでも参考値として捉えていただければと考えています。
ホームページやSNSなど情報発信に積極的ですね。

去年の5月から動画共有サイトでの配信も始めました。医師も看護師も一人の人間で、格好良いばかりではありませんので、もっと親しみを持ってほしいなと思っているんです。僕は看板にも自分の顔写真を載せているんですが、それはどんな人かわからないと相談しにくいと思うから。自分とクリニックを知ってもらうためにもどんどん発信しています。動画共有サイトには僕がうちの子どもたちに注射を打つ動画もアップロードしているのですが、泣いても頑張っているという姿を見て「僕も頑張って注射打ってもらおう」と思ってもらえたらうれしいなと。役立つ情報も入れながら作っていますので、興味のある方はのぞいてみてください。
最後に、読者へのメッセージと今後の展望をお願いします。

困ったことがあればいつでもお気軽にお越しください。僕に対して一般的な先生のイメージと違うなと思われることもあるかと思います。でも、それは教科書どおりの診療ではなく、患者さんのためになることは何かを常に胸に留めて行動しているから。どのクリニックでも医師との相性があると思うので、まずは相談だけでも来ていただいて、それから決めてもらえたらと思いますね。今後の展望としては、医療法人として展開している糖尿病のクリニックや訪問看護ステーションも含めて、お子さんだけでなく大人の方も診ることで地域の皆さんのファミリークリニック的な存在になりたいと考えています。これからもスタッフ一同力を合わせて心のこもった医療を提供していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。