小林 俊一 院長の独自取材記事
仁愛堂クリニック
(江戸川区/平井駅)
最終更新日:2026/02/12
平井駅北口から徒歩4分。住宅街に溶け込む「仁愛堂クリニック」は、一般の住宅のような外観とアットホームな雰囲気が印象的だ。院長の小林俊一先生は消化器内科を専門とし、2012年にこの地で開業した。AI内視鏡を使った検査と、苦痛を軽減する工夫で、早期発見・早期治療に力を注いでいる。医師だけでなくスタッフ全員で患者の健康教育に取り組む姿勢も特徴で、同院は「健康や病気について学べるクリニック」を理念に掲げる。物腰がやわらかく患者の話に真摯に耳を傾ける小林院長は、勤務医時代の経験から予防医学の大切さを痛感したという。その原点と地域の健康を支える思いについて聞いた。
(取材日2026年1月16日)
勤務医時代の経験から予防医学の大切さを実感
まずは開業の経緯と、こちらの地域についてお聞かせください。

以前勤めていた病院が近くにあり、縁があってこの場所で2012年に開業しました。平井は東京の下町でありながら、都心のような慌ただしさはなく、どこか落ち着いた雰囲気が漂う街です。長く住まれている方が多い地域で、当院にも10年以上通ってくださる患者さんがいらっしゃいます。開業当初は高齢の方が中心でしたが、最近はマンションの建設などで街の様子も少しずつ変わり、会社帰りの方や主婦の方、家族連れの方も増えてきました。高齢の方から若い世代まで幅広い患者さんが来院される中で、風邪やインフルエンザといった急性疾患から、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病まで、さまざまな症状に対応しています。患者さんとは長いお付き合いになることも多く、そうした関係性を大切にしながら日々の診療にあたっています。
先生が医師を志されたきっかけを教えてください。
医師を志したきっかけは子どもの頃に見たテレビでした。医療過疎地域で奮闘する医師の姿を見て、自分もそういう人になりたいと小学生ながらに強く思ったのです。番組で紹介されていたのは海外の話でしたが、日本であれば治療できる病気でも、その地域に生まれたばかりに助からないという現実に衝撃を受けました。何とかしたいという純粋な思いが、医師をめざす原動力になったのだと思います。消化器内科を専門に選んだのは、大学5年生のときの臨床実習がきっかけでした。内視鏡の機器を実際に操作させてもらい、手を動かしながら患者さんを診ることの面白さを感じたのです。消化器疾患は患者さんの数も多く、より多くの方の力になれると考えたことも、この道を選んだ理由の一つです。
予防医学に注力されていると伺っています。

ええ。病院で勤務していた頃、定期通院されている患者さんに別の病気が見つかることがありました。例えば糖尿病で何年も通っていた方が、ある日「胃の調子が悪い」と訴えられ、検査をすると進行がんが見つかるというケースです。病院は専門特化しているため、どうしても一つの疾患に目が向きがちです。だからこそ、街のクリニックが患者さんの体全体を把握し、必要な検査や予防について伝えていく役割を担うべきではないかと考えるようになりました。その思いが、予防医学を大切にする今の診療姿勢につながっています。
苦痛を減らした内視鏡検査で早期発見・早期治療を
内視鏡検査について詳しくお聞かせください。

当院では胃カメラと大腸カメラによる内視鏡検査に力を入れています。病院時代に末期のがん患者さんを数多く診てきた経験から、早期発見・早期治療の大切さを痛感してきました。胃がんも大腸がんも、早い段階で見つかれば内視鏡で完治をめざすことができるのです。ただ、検査がつらいと「もう二度と受けたくない」と思われてしまい、定期的な検査につながりません。そこで当院では「また受けてもいい」と思っていただけるよう、患者さんになるべく苦痛を感じさせない工夫を重ねています。胃カメラでは基本的には鼻から挿入する細いカメラを使用し、ご希望があれば眠っている間に検査を終えるために鎮静剤を使用することも可能です。大腸カメラでは体内に吸収されやすい炭酸ガスを使用するため、検査後のおなかの張りの軽減が見込めます。
検査の精度を追求して、設備にもこだわっておられるとか。
当院ではAI内視鏡を導入しています。このAI機能は、ちらりと映っただけの疑わしい箇所もキャッチしてくれます。この機能によって、私とAIでダブルチェックができる体制が整いました。良性か悪性かといった質的な診断は医師の判断になりますが、病変の見落としを防ぐという点では非常に心強い存在です。せっかく勇気を出して検査を受けていただくのですから、見落としがあってはいけません。先進の機器も積極的に取り入れることで、精度の高い検査を提供したいと考えています。カメラ自体も小さなものを導入しており、しなやかでやわらかい設計になっているため、患者さんの負担軽減にもつながっています。
総合的な診療にも取り組まれていると聞いています。

内視鏡検査に専門性を持ちながらも、当院では総合診療として全身を診ることを大切にしています。消化器領域のクリニックでは腹部エコーだけを行うところも多いのですが、当院では頸動脈エコーで動脈硬化の状態を調べたり、心エコーで心臓の働きを確認したりすることも可能です。24時間装着して心臓の状態を記録するホルター心電図や、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いるCPAP、在宅酸素療法なども幅広く対応しています。一方で、入院が必要な治療や出血リスクの高い手術については、患者さんの安全を最優先に考え、連携している病院にご紹介しています。当院は患者さんの全身状態を把握して日常の健康管理を担う。そうした役割分担を意識しながら診療にあたっています。
「私と家族のかかりつけ医」として健康の輪を広げる
診療において大切にされていることを教えてください。

患者さんのお話をしっかり聞くことを大切にしています。特に生活習慣病のように自覚症状が少ない疾患では、治療へのモチベーションを維持することが難しいもの。だからこそ、数値が良くなったときには「すごく頑張っていますね」とお伝えするようにしています。検査や治療については、なぜそれが必要なのかを丁寧に説明することも欠かせません。選択肢が複数ある場合は、それぞれのメリットをお伝えした上で、患者さんご自身に選んでいただく形を取っています。医師から一方的に指示するのではなく、対話を通じて患者さんと一緒に決めていくことで、納得感のある診療を心がけています。
スタッフの皆さんと取り組んでいることはありますか。
医師だけでなく、受付スタッフや看護師も一丸となって患者さんに健康知識を伝えています。毎月、季節や時期に応じた疾患啓発のテーマを設定し、資料を作成して患者さんにお渡ししたり、ホームページで月ごとに情報発信をしたりといったことですね。例えば、禁煙の大切さや、気管支喘息の管理の方法、新しいワクチンの情報などです。特に工夫しているのが「未来が分かる資料」と呼んでいるもの。血圧が高い状態を放置したら、将来どのような病気につながり得るのか。治療の意味や、治療しなかった場合のリスクを具体的にイメージしやすいようにお伝えすることで、患者さんの健康意識が変わり、実際に行動が変わっていくのを感じています。受付で案内を受けた患者さんから「私もやったほうがいいですか」と質問されることも増えました。せっかく来院してくださった皆さんには、一つでも健康知識を持って帰っていただきたいと常に意識しています。
クリニックの理念と今後の展望をお聞かせください。

当院は3つの理念を掲げています。一つ目は「実践型全人的医療」。患者さん自身が健康知識を身につけることで、本当の意味で全身を診る医療が実現できると考え、私が名づけた言葉です。患者さんには「健康や病気について学べるクリニック」とお伝えしています。二つ目は「私と家族のかかりつけ医」。患者さんご本人だけでなく、そのご家族にも健康の輪を広げていきたいという思いを込めました。ご家族から「あなたも検査を受けてみたら」と伝えてもらえれば、これまで医療機関に縁のなかった方にも届くかもしれません。三つ目は「理念に基づいたチーム医療」。スタッフ全員で患者さんの健康を支えることを大切にしています。健康寿命を延ばし、最期までその人らしく生きられるよう支える。そんなクリニックでありたいと思っています。

