吉見 洋志 理事長の独自取材記事
吉見医科歯科クリニック
(さいたま市浦和区/浦和駅)
最終更新日:2026/08/12
浦和駅西口から徒歩約1分。飲食店などが入る複合ビルの4階に位置する「吉見医科歯科クリニック」は、理事長兼総院長の吉見洋志先生が「患者さんの痛みを何とかしたい」という強い思いを原動力に診療にあたる歯科と内科のクリニックだ。院内はシンプルで落ち着きのある空間が広がり、プライバシーに配慮して診療室は半個室および個室を採用。さらに、各種滅菌設備を備え、歯科室にはユニットごとに口腔バキュームを設置するなど、感染症対策にも十分に配慮している。患者の痛みを少しでも軽減するために、一人ひとりに誠実に向き合う吉見理事長に、同院の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2026年6月19日)
患者の「痛み」を何とかしたいという一途な思い
こちらの診療内容の特色を教えてください。

当院が特に専門的に行なっているのは、慢性疼痛とりわけ口腔顔面痛を中心とした痛みに関する診療です。これは私のライフワークといえるもので、二十数年前から専門的に取り組んできた分野になります。歯科医院を受診される患者さんの中には、実は歯が原因ではない痛みを抱える方が多くいらっしゃいます。ところが歯科ではどうしても歯に焦点があたってしまい、本来の原因ではないところにアプローチしてしまうという悲しい事態が頻発していました。これは歯科医師が口腔顔面痛や慢性疼痛といった分野など特に歯に原因が無いのに歯が痛むという非歯原性歯痛を学ぶ機会がなかったからです。ですから患者さんは、「痛み」がいつまでも取れることなく我慢を強いられてきました。中には歯を抜かれていることも。もちろん原因が歯にないわけですから、歯を抜いても痛みは止まりません。私はこの現状を何とかしたいという一心でここまでやってきました。
「痛み」を薬などでやり過ごしている人、我慢している人も多いようです。
痛みは命に関わらないといわれることもありますが、実はそうではありません。日常的に断続的にやってくる「痛み」。服薬などでやり過ごすこともあるでしょうが、根本原因にアプローチできなければ、「痛み」に悩まされる現状を改善することはできないでしょう。「痛い」「痛くなるかもしれない」という状況は、体がきついだけではなく心も疲弊させます。その結果、うつ病などの精神疾患につながる場合さえあるのです。私は今も毎年2万人もの自殺者が出ている日本において、痛み診療の質を高めることが、その数を減らすことにつながると確信しています。痛みで困っている患者さんのために、何ができるかを常に考え、その使命感に基づいて行動してきました。
院内に無菌室を作って、研究・実践の場とされています。

複雑な痛みの診断と治療に専門的に応じるために、多角的なアプローチで患者さんにとってベストな提案を模索しています。患者さんの「痛い」というお悩みに対して、理屈だけでなく、実際に痛みを取り除く処置を提供することが、当院の使命だと考えています。できるだけ短期間で、身体的な負担を少なく対応できるか、そのために院内に無菌室を設けました。痛み以外にもお子さんの症状でお悩みの親御さんが相談に来られることも。これまで困難な道のりもありましたが、取り組んで良かったと心から思いますね。
一分でも一秒でも早く「痛み」を改善してあげたい
先生が「痛み」に向き合おうと思われたきっかけは何ですか?

勤務医時代に「歯が痛い」と来院されたある患者さんです。でも調べてみると実は歯には何の問題もない。患者さんから「なぜ痛むのでしょう?」と聞かれても、歯には何の問題もないので答えることができませんでした。実は同じような患者さんがその方以外にもたくさんいらっしゃって、そこで「痛みの本当の原因を見つけなきゃいけない」という課題に直面したわけです。私たちの世代の歯科医師は、大学でそうした歯以外の痛みについての診断のスキルを教わっておらず、本当に困ってしまう状況だったわけです。そんな時に知ったのが、アメリカで痛みに関して学び、日本に帰ってこられた先生の存在でした。どうしてもお会いしたくて先生の診療所に赴いたのです。
そこから「痛み」への取り組みが本格的に始まったのですね。
先生の診療所を訪れる患者さんは、「痛み」に心底困っていらっしゃる方々ばかりでした。私はそこで初めて、口腔顔面痛という分野を知り、非歯原性歯痛を知りました。何度も断られましたが、なんとか勤務を許され、学ぶ機会を得ました。患者さんと真摯に向き合い、その原因を徹底的に突き詰め、適切に診断すること、その診断に基づいて治療を進めていくことの重要性を教えていただきました。その先生から教わったことが、今の私の診療の基礎となっており、この出会いがなければ今の私はいません。先生が示してくださった開業医として「痛みに向き合う」という姿勢がなければ、これまで30年近く解決できなかった痛みを、今のようなかたちで解決に導けるようにはならなかったと思います。あの出会いが、私の人生を変えてくれたんです。
その後、先生の活動はどのように広がっていったのでしょうか?

最初は口腔顔面痛、つまり口の中や顔の痛みの診療をしていましたが、腰や膝、頭、首、肩と、体のあちこちに痛みを抱えた方たちまで来院するようになりました。そうすると、歯科の私の領域だけでは解決することができません。そこで脳神経内科の医師に勤務してもらい、内科と歯科のクリニックとして新しいスタートを切りました。今では、麻酔科や整形外科の医師も加わり、痛みのプロフェッショナルチームとして患者さんに向き合っています。
医療の本質は、健康な状態へ戻すこと
患者さんの反応はどうですか?

長年のお悩みが短期間で解決に向かうと、「魔法みたいだ」とおっしゃていただくことがあります。しかし私にとっては、これが医療の本来あるべき姿だと思っています。患者さんが望める変化・改善は、単なる「痛みの軽減」ではありません。何十年も抱えていた痛みからの解放は、体が本来持つ健康な状態への回帰であり、医療がめざすべき究極の目標ではないかと考えています。患者さんの中には遠路はるばる来院される方もいらっしゃいます。ですので、私たちは期待を裏切ることのないよう全力を尽くして診療に取り組んでいます。痛み治療は今でも管理できる状態にすることがゴールです。しかし、痛み治療が進歩すれば完全に痛みから解放される「治療」がゴールとなることも夢ではありません。患者さんの心からの笑顔を勝ち取る痛み治療をこれからも行ってまいります。
患者さんは全国各地から来院されているそうですね。
全国で約150施設の医療機関が当院と連携して痛み治療などを行っています。近隣の連携施設では対応が難しい特殊なケースもありますから、中には、北海道から飛行機で直接お越しになる患者さんもいます。ありがたいことに私のやっていることに賛同してくださる医師や歯科医師も徐々に増えてきて、研究会組織も立ち上げることができました。私たちの取り組みは国内よりも海外のほうが受け入れてもらいやすいようで、今後は海外向けの論文発表などにも取り組んでいこうと思っています。もっともっと仲間が増えて、患者さんが痛みを我慢する時間が一秒でも短くなれば、と願ってやみません。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私自身はこの診療姿勢を極めることが、社会全体への貢献につながると確信しています。一つのクリニックで、一人の患者さんの痛みに向き合い、改善へとつなげてく。その積み重ねこそが、医療の本質であり、社会への最大の貢献です。「患者さんが痛みを持ってこられたら、痛みのない状態で帰っていただく」このとてもシンプルな原則が、実は最も難しく、最も尊い医療の姿勢なのではないでしょうか。これからも丁寧に患者さんお一人お一人と向き合い、お悩みの解決に向けて尽力していきたいと思います。

