内藤 広太郎 院長の独自取材記事
本牧港湾診療所
(横浜市中区/元町・中華街駅)
最終更新日:2025/01/08

本牧埠頭・港湾エリアで働く人たちと家族の健康を支えてきた「本牧港湾診療所」を継承し、開業した内藤広太郎院長。大学病院や中核病院の循環器内科で診療に携わってきたが、循環器疾患にもつながる生活習慣病の診療に携わることができ、出身地の横浜に貢献もできると開業の道を選んだという。生活習慣病を指摘されても治療継続が難しい患者や、生活習慣の改善ができない人に対しても、一方的に治療方針を押しつけることなく、患者が理解し納得して治療に取り組めるように心を砕く内藤院長。豊富な診療経験に裏づけられた高い診療技術と、気さくで温和な人柄が受け入れられ、病気の相談に訪れる患者も増えているようだ。そんな内藤院長に、診療所の特徴や院長としての思いを聞いた。
(取材日2020年12月17日)
本牧港湾エリアで働く人や家族の健康を支える診療所
まず、この診療所の成り立ちについて教えてください。

横浜港の物流拠点である港湾エリアには、多くの企業があり、働いている方がたくさんいらっしゃいます。そうした皆さんの健康を支える医療施設として、約50年前に開設されたのが当診療所です。社宅も多く従業員のご家族も来られますし、また、各企業の医務室的な役割も持っています。最近、地域のクリニックでは、高齢の患者さんが多いのが一般的ですが、ここはまさに現役世代の健康を支える、社会の中で頑張っている人たちを支える医療が特徴です。ですので、来院されるのは港湾地域に関連した方々がほとんどですが、特に地域や年齢に制限があるわけではありませんので、全国どこから来ていただいても問題はありません。
港湾エリアならではの特徴があるのですね。
そうですね。診療面では一般内科と、生活習慣病の診療が中心で、健康診断も数多く行っています。皆さん忙しい仕事の合間に来られますから、当院も予約制にはしていません。「仕事があるので15分も待てない」という方も多いので、定期検査や、定期的に通院する患者さんにはさっと対応できるように日頃から心がけています。幸い、スタッフは、先代院長時代からのメンバーなので、段取りをよくわかってくれていますし、患者さんとも顔見知りなので助かっています。企業で働いている外国人の方も多く、あるいは、日本人と結婚した外国人の女性も多いのも特徴です。英語圏の方は少なく、日本語はある程度できる方が多いので、よくお話を聞きながら対応しています。
この辺りで働く人たちの健康診断や健康管理も行っているそうですね。

近隣の企業で働く皆さんの多くが当診療所で健康診断を受けています。特定健診や、船員の健康証明書、海技士や小型船舶操縦士の身体検査証明書等も扱っています。また、40代50代の男性は、過去に公的な風疹の予防接種が実施されず、抗体を持っていない人が多いので、風疹抗体検査および予防接種にも対応しています。禁煙相談の外来も設けています。
循環器内科の専門性も生かして、生活習慣病診療に注力
生活習慣病の診療について教えてください。

高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症といった生活習慣病の方がたくさん通院されていますので、元気に仕事を続けるため、快適に日常生活を送るために、治療を継続し、生活習慣を改善し、健康を維持するサポートを行っています。特に、生活習慣病を管理することは、循環器疾患の発症を予防することにつながりますので、そのことを理解していただくように努めていますね。健康診断で血圧や血糖値などに悪い数値が出ても自覚症状がなく放置している方も多いので、将来的に大きな健康被害につながることを理解していただくところから始めています。
専門の循環器疾患の診療についても聞かせてください。
勤務医時代には狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの心臓病の方々をたくさん診てきました。これらの病気は医学の進歩により以前に比べて予後が大きく改善していますが、一度かかると生涯付き合っていく必要があります。すでにこれらの疾患にかかられてしまった方ももちろん、胸の痛み、息切れ、動悸、むくみなどが気になる方にも気軽にご相談いただきたいと思っています。精密検査としては、心臓超音波検査(心エコー)や、長時間心電図(ホルター心電図)の検査を行うことができます。さらに心臓病や高血圧、糖尿病などと密接に関連のある「睡眠時無呼吸症候群」に関しても、検査や治療(CPAP)を行うことができますので、いびきや昼間の眠気など気になる症状がある方はご相談いただきたいですね。
その他の精密検査について教えてください。

必要な方には、総合病院でのCT、MRI、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を当診療所から直接申し込むことが可能なシステムがあります。大きな病院を受診する際には当たり前の、医師と会うための長い待ち時間が不要で、予約して検査のみを受けることが可能です。もちろん、総合的に精密検査が必要と判断した場合は、通常どおり近隣の医療機関に紹介させていただきます。
先生の診療方針について聞かせてください。
病気を診断・治療する上で医師の果たす役割は大きいですが、患者さんに対して診療方針を一方的に押しつけるというのは好きではありません。患者さんの環境や考え方もさまざまですから、できるだけ患者さんの希望を探り出し、その方にとって何が本当にベストかを判断したいです。病気の治療法を選択する際に、病気がよくなるかどうかという以外にも考えるべきさまざまな要素があります。病気のことやそれぞれの治療法のメリット・デメリットをなるべく患者さんにも理解していただいて、納得される治療を選んでいきたいと考えています。特に生活習慣病は自覚症状がほとんどないことが多く、患者さん自身が理解し納得されないと治療を継続できません。薬一つにしても、積極的に服用を希望される方、そうでない方がいらっしゃるので、そこをくみとって対応したいと考えています。
港湾で働く人や地域の人たちの健康ニーズに対応
ところで、継承までの経緯について聞かせてください。

医師を志したのは、人の役に立てる職業であることと、学生時代にやっていた水泳で栄養面を含めたコンディショニングの重要性を痛感し、医学に興味をもつようになったからです。スポーツ医学を学んでアスリートをサポートしたいとの思いがありました。スポーツ医学には循環器を専門とする医師が多いことも、循環器内科を選んだ理由の一つでした。その後は、大学病院や地域の中核病院などで、循環器内科の診療に携わってきました。循環器内科は、内科といっても、カテーテルなどの血管内治療や、ペースメーカーを埋め込む治療など外科的な要素があります。しかし、もともと手術などより、直接、患者さんと向き合う診療に関心があり、開業を考えていたところ、こちらの先代院長が引退されることを知り、継承することにしたのです。
院長として、今、どのような思いがありますか。
大学卒業までの大半を横浜で過ごしましたので、地元に貢献できる機会に恵まれたことはとてもうれしく思っています。また、前職のけいゆう病院では主にペースメーカー手術を担当しており、それもやりがいを感じていましたが、もともと循環器疾患につながる生活習慣病の管理や、心臓手術などを受けた方のサポートにも興味を持っていましたので、こちらでそういった診療に取り組めることに魅力を感じています。慣れてきて少し余裕ができたら、またスポーツ医学にも関わりたいという気持ちもあり、継承の道を選んだのですが、通常の患者さんの診療だけではなく、地元の企業の皆さんからもいろいろなご相談を受ける機会が増えており、なかなか余裕がありません(笑)。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当診療所のようなクリニックは、欧米の「ホームドクター」という位置づけだと思います。内科、循環器内科の経験も生かしつつ、経験したことのない領域や分野についても、なるべくどんなご相談でも受け止めて、できるものには対応して、こちらで対応できないものについては、速やかに適切な医療施設に確実につないでいくことを心がけています。最近では生活習慣病などについて相談してくれる患者さんも増えてきました。このエリアの患者さんや住民の皆さん、この地域で働く方などのニーズにできるだけ応えていきたい。そして、港湾エリアの診療所として、できるだけ皆さんが元気に仕事に取り組めるように、充実した生活が送れるようにお役に立てればと思っています。