多田 大樹 院長、古泉 貴章 さんの独自取材記事
アクリアデンタルクリニック
(多摩市/京王多摩センター駅)
最終更新日:2025/11/05
京王多摩センターと小田急多摩センターの両駅から乞田川沿いの桜並木を歩くこと約7分の場所にあるのが、「アクリアデンタルクリニック」だ。待合室の水槽には色とりどりの観賞魚が泳ぎ、患者の心を和ませている同院。多田大樹(ただ・ひろき)院長は、顎関節症の治療や、子どもの顎の発育をサポートする顎顔面口腔育成に力を入れている。また、全身の健康を考えた歯科治療をめざしており、理学療法士の古泉貴章さんと連携した口腔と歯の健康づくりにも取り組んでいる。「根本から治療する大切さを一人でも多くの患者さんに伝えて、それが社会全体に広がっていけば」と語る多田院長と、同じ思いで診療をサポートする古泉さんの2人に、同院の診療内容や歯科医療にかける思いを聞いた。
(取材日2025年2月6日)
根本の原因からしっかりアプローチする歯科診療を実践
まずは、クリニック名の由来から教えていただけますか?

【多田院長】「アクリア」というのは私が考えた造語で、「水」を意味するアクアと「きれい」を意味するクリアという言葉を合わせて、「きれいな水の流れ」をイメージしました。清流など水の流れというのは、独り占めしようとしてせき止めてしまうと、よどんで汚くなってしまいます。私は、これが人生におけるいろいろなことと同じではないかと思っているんです。私の場合は、特に人との縁やさまざまなことに恵まれて、助けられてきたと思っています。私が人からもらったその贈り物を、自分で止めて独り占めするのではなく、次の世代に伝えていったり、世の中に還元したりする。その中で、さらに自分が何かを見つけて成長できれば良いなと思い、この名前をつけました。
基本的な診療スタンスを教えてください。
【多田院長】どのような症状で受診した患者さんでも、「全身の健康」という視点から診ることです。実は、歯科疾患と体の病気が関連している例は、少なくないとされています。例えば、口呼吸になっているかは、口の中や表情などにサインが現れることがよくあるんです。ですから、口の中を診て気づいたことがあれば患者さんにお伝えして、希望があればその症状に対応できる医科の先生を紹介するようにしています。このような診療のベースにあるのは、「病巣疾患」という概念です。今ある症状だけを治療するのではなく、根本的な原因を見つけて治療していくという考え方を、当院の診療では大切にしています。
力を入れている分野はありますか?

【多田院長】顎関節症の治療です。当院では、噛み合わせの調整やマウスピースなどの歯科的なアプローチに加えて、歯科医師によるスプリントを装着した患者に対するリハビリテーションを行う際に、「体の使い方」にも着目しています。その一環として、顎関節と体の関連性に精通した理学療法士の古泉さんに月1回来てもらい、患者さんに体の使い方などをアドバイスしていただいています。
【古泉さん】顎関節をはじめ、口腔内に何らかの不具合のある方は、口の動かし方や体の使い方にも問題を抱えていることがあるため、まずは正しい姿勢をめざすことが重要だと考えています。保険診療で理学療法士による指導を受けるには、歯科医師に「必要がある」と診断してもらわなくてはいけません。当院なら、歯科医師と理学療法士がそろっている日もあり、スムーズに対応できるのも、患者さんにとってメリットではないでしょうか。
体との関連も考えた歯科医療を実践
顎関節症で悩んでいる人は多いそうですね。

【多田院長】顎関節症を患っている人は国内に約1900万人いると推定されるなど、決して珍しい病気ではない一方で、顎関節症をきちんと診療できる医師や歯科医師はあまりいないという現状です。「顎関節症難民」という言葉もあるくらいです。顎関節症の患者さんで、歯科で治療を受けたり、マウスピースを使っていたりしても改善に向かわないケースも少なからずいらっしゃいますね。
【古泉さん】私はずっと整形外科の病院に勤務していましたが、噛み合わせの悪さが腰や膝の痛みの原因になっていると考えられる人もたくさんいます。あるデータでは、首の痛みと顎関節症の併存率が高いといわれています。でも、歯科と整形外科がしっかりと連携しているところは少ないのが現実で、医師と歯科医師、理学療法士が連携できれば、救われる人はかなり多いのではないかと思いますね。
自分が顎関節症だと気づいてない人もいるのですか?
【多田院長】結構いらっしゃいます。基本的には、顎に痛みや違和感がなければ問題ありませんが、今の話のような体の痛みが、顎に痛みはないものの噛み合わせの悪さが原因の可能性があることは、本人は気づきにくいですよね。口が開けづらくなる、口を開けたときに顎関節に痛みを感じる、音が鳴るなどの症状が出ていれば一度受診をお勧めします。
【古泉さん】口の開く大きさが、「自分は前からこれくらいです」という人でも、専門家から見ると基準値以下なこともありますし、そもそも口を開けた時に音が鳴るのは異常です。本人は小さな頃からそうなので慣れちゃって、当たり前になっている。そして、気づかないうちに、実は顎関節の不具合が肩や腰に悪い影響を及ぼしている可能性もあるのです。その場合、いくら肩や腰のリハビリテーションを行っても根本的な解決にはならないので、根本原因が顎関節にある場合は、そこに対処する必要があります。
子どもの矯正にも力を入れていると伺いました。

【多田院長】近年、顎の発育が芳しくないお子さんも増えています。顎の発育不全は歯並びに影響し、口呼吸にもなりやすくなります。できるだけ早く改善することで、将来の顎関節症患者を減らすことにもつながります。大人は骨格がある程度決まっているので、その中で良い状態に近づける治療になります。しかし、子どもはまだ成長や発達している時期なので、私たちがある程度誘導できる余地があります。ただ、歯列矯正は自由診療で費用がかかります。そこで、当院ではフルの矯正ではなく、ある程度まで行うことで、やらないよりも呼吸や歯並びに良い影響が望める顎顔面口腔育成のメニューを用意しています。
【古泉さん】口呼吸になっているかは、座り方や立った時の姿勢などを見ればある程度予想できます。体の姿勢についてもアドバイスしていますので、気になる方は来ていただけたらと思います。実は、多田院長はお子さんと接するのがとても上手なんですよ。
病巣疾患にも注目し患者の問題の根本的な解決をめざす
多田先生は古泉さんを頼りにされているのですね。

【多田院長】古泉さんは、顎関節症に関して研究会などでも発表するなどエビデンスにしていくことにも頑張っています。また、当院だけと連携しているわけではありませんから、顎関節症でお困りの患者さんがいたら、ぜひ紹介してほしいと思いますね。
【古泉さん】私は、これまで整形外科の病院に勤務していましたが、医科の先生たちは、噛み合わせのことはほとんど知りませんし、歯科の先生も顎関節症は知っていても、それが全身の健康に影響していることを知っている人は多くありません。もっと多くの先生方と連携を広げて、噛み合わせや顎関節症の重要性を理解してもらいたいと考えています。現在、顎関節症について学びたい理学療法士向けの勉強会などを主催していますが、今後とも歯科医師に協力する理学療法士を増やすための活動をしていきたいです。
今後の展望についてお聞かせください。
【多田院長】口呼吸が自己免疫疾患を引き起こす可能性があることは、病巣疾患という概念を背景に医療関係者の中でも広まりつつあります。実際に、口呼吸が原因と考えられる慢性上咽頭炎は少なくありません。当院では、口呼吸の改善のアドバイスをしながら、希望があれば連携する耳鼻咽喉科などを紹介することも可能です。このように、病巣疾患に基づいた診療をしている先生方と連携して、患者さんの問題の根本的な解決をめざしていきたいと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【多田院長】お口のお悩みがあれば、どんな小さなことでも相談に来てください。特に、口を開けるとパキパキ音がする、口が開かないという症状は、顎関節症の可能性があります。また、肩凝りや腰痛、めまい、耳鳴りなどを引き起こすこともあります。耳鼻咽喉科や整形外科に受診したのにもかかわらず特に悪いところがないという場合も顎関節症の可能性があります。長引く痛み、原因不明の症状にずっと悩んでいる人なども、ぜひ一度相談にお越しください。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/38万5000円~、顎顔面口腔育成/16万5000円~

