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森口 正人 院長の独自取材記事

らびっとクリニック

(さいたま市緑区/北浦和駅)

最終更新日:2021/11/10

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北浦和駅からバスで約10分。教育センター前停留所からすぐの医療ビル2階にあるのが「らびっとクリニック」だ。優しい笑顔と温かなまなざしが印象的な森口正人院長は、大学病院での診療や米国の研究機関への留学などを通し、関節リウマチや膠原病、慢性疼痛を専門に30年以上研鑽してきたベテランドクター。治療が難しいこれらの病気の治療に粘り強く取り組んできた経験から、痛みに苦しむ患者に寄り添う医療をモットーとする。「患者さんの人生に寄り添えることに、やりがいを感じます」と話す森口院長に、開院からまもなく10年を迎える同院のことや、診療にかける思いなどを聞いた。

(取材日2021年9月15日)

痛みと向き合う内科のクリニック

診療内容やクリニック名の由来をお教えください。

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関節リウマチや膠原病などのリウマチ性疾患と線維筋痛症などの慢性疼痛を中心に、高血圧や糖尿病、感染症など一般内科の診療も行っています。リウマチ科というと関節リウマチだけの診療科だと思われがちですが、体全般の痛みを引き起こすさまざまな疾患が対象です。整形外科との違いをよく聞かれますが、リウマチ科は循環器内科や神経内科などと並ぶ内科の一つ。主に内科疾患による体の痛みを診察し、薬物によって治療する点が整形外科との違いです。クリニック名の「らびっと」は、「リウマチ性疾患、関節炎、線維筋痛症をはじめとした全身の痛みを抱える患者さんに適切な検査と治療を」という英文から「RABBIT」と頭文字を取りつくった造語です。痛みに苦しむ方々と向き合い、長いスパンでともに歩む治療者であり共感者であることをめざしています。

リウマチ性疾患とはどのような病気なのでしょう。

広く捉えれば、関節や筋肉などの運動器系に痛みが生じる疾患をリウマチ性疾患と呼びますが、病気は多岐にわたります。関節リウマチを含む膠原病は自己免疫疾患、つまり免疫の異常が発症に関わっています。具体的には、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎症候群などがあります。当院では、これら自己免疫疾患のほかにも、高齢者に多いリウマチ性多発筋痛症や変形性関節症、比較的まれな疾患として自己炎症症候群、脊椎関節炎なども診療しています。患者層は60代が中心ですが、リウマチ性疾患は幅広い年齢層で見受けられます。

関節リウマチはどのように治療するのですか?

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約20年前から、リウマチ炎症を引き起こす分子を強力に制御する、生物学的製剤などの分子標的薬が多数開発されてきました。根治療法は確立されていませんが、現在はこれらを適切に用いることで、病気の進行が止まった「寛解」の状態をめざせるようになっています。ただ他方で、リウマチ治療には「アンメットニーズ」、すなわち、まだ満たされていない医療ニーズが多く残されています。例えば新薬でも改善しない難治例、経済的理由から高額な新薬が使えない例、高齢化に伴い多くの合併症が見られるためにリウマチ薬が十分使えない例、心理的なサポートが必要な例などがそれにあたります。私の役割は、こうした患者さんにとって最善のケアとは何か、そのあり方を考えて実践していくことだと思います。

痛みと共存して明るく暮らせるよう、心まで支える

線維筋痛症の治療にも力を入れていると伺いました。どんな病気なのかというところからお教えください。

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体のあちこちが激しく痛み、強い疲労感や不眠、うつ症状などを来す病気です。近年、世界保健機関(WHO)が改訂した国際疾病分類(ICD-11)で慢性疼痛の体系的分類が定義され、線維筋痛症は、組織障害が明らかでない、原因不明の慢性一次性疼痛の疾患単位の中に位置づけられました。痛みは体だけでなく、その人の心や社会状況に関わって生じるとされており、線維筋痛症の場合も、心身の両面にアプローチすることで痛みを抑えていくという方法が取られつつあります。すでに一部の大学病院では、精神科やペインクリニック科の医師、看護師、理学療法士などの医療スタッフが集まる、集学的な痛みの治療部門が立ち上げられ、心へのアプローチと、薬物・運動指導などによる体へのアプローチを組み合わせた取り組みが行われています。当院でも、患者さんのストレスや人生にじっくりと耳を傾け、心までケアすることでより良い結果をめざしています。

線維筋痛症はどの程度改善できるのですか?

痛みを完全に解消することは困難ですが、痛みと共存しながら生活の質を向上させることならば可能です。もう少し具体的に言えば、「時々激しい痛みは出るけれど、ある程度自由に体を動かせる生活」という目標なら十分視野に入れることができるでしょう。一日中横になって過ごす生活から脱し、明るい気持ちでいられる時間を増やせるのなら、それだけで治療を受ける意味はあると私は考えます。それに、生活の質を高めることが大切なのは、リウマチ治療でも同じです。検査の数値が良くなって、腫れている関節の数も減る、というのはわかりやすい指標ですが、それで患者さんが幸せになれるかはまた別の話。そのことを理解していないと、治療の成果が出ても満足度は低いままになってしまいかねません。このように慢性疼痛の治療は非常に難しいのですが、だからこそ人生にとって大事なことに気づくきっかけにもなり得るのです。

最近、検査や診療面で新しいことに取り組んでいるとか。

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一つは、骨密度をより精密に測定できるDEXA法の検査装置を導入したこと。この装置を用いれば、骨折すると日常生活動作の大幅な低下につながる大腿骨や腰椎の骨密度を直接知ることができます。リウマチ患者さんは病気そのものや、薬の影響から骨粗しょう症になりやすいため、当院では骨密度を正確に把握するよう努めており、また、問題を発見したら早い段階から治療を開始しています。もう一つの新たな取り組みは、オンライン診療を始めたことですね。対象は再診の方のみですが、遠方の患者さん、コロナ禍で移動に不安を感じている患者さん、痛みが激しく来院できない患者さんたちにご利用いただいています。ただオンライン診療では触診も検査もできないため、約3ヵ月に1回は対面での診療を行うことが必要です。

患者の人生を理解し、より良い治療につなげる

まもなく開院10年を迎える今、診療の中で感じることはありますか?

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当院の患者さんの大半は慢性疾患のある方です。したがって、お付き合いも長くなり、10年たてば60歳だった人は70歳に、70歳だった人は80歳になられるのですね。年を重ねるにつれ、別の病気が出てきたり、体が弱ってこれまで使っていた薬が使えなくなったり、あるいは、連れ合いの方が亡くなったり、お子さんが病気になったり。患者さんは長い療養生活の中で症状の浮き沈みに向き合いながら、さまざまな変化を経験されています。患者さんの人生の長い期間、こうした変化にふれながらともに年を重ねていくことが、慢性疾患を診る開業医の宿命かなと感じました。医師として人の人生に寄り添えることが、私のやりがいであり喜びです。

今後の目標についてもお聞かせください。

一言で言えば「サイエンス」と「アート」に基づく医療を実践することです。サイエンスは、言い換えればEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)です。これは治験や臨床研究により有効性が統計的に確認された医療のことで、現代医療のスタンダードと言えるでしょう。ですが、多くの治験や臨床研究では多様な合併症を伴う複雑な患者や高齢者がそもそも対象とされておらず、患者さんの心理的・社会的問題、実存的問題についても、EBMだけではお手上げです。一方でアートに相当するものが、NBM(ナラティブ・ベースド・メディスン)。患者さんの人生の物語(ナラティブ)を深く知り、心と体と人生の歴史に寄り添い医療を考えていくということです。これは、患者さん一人ひとりにオーダーメイド医療を提供するという医療の技(アート)なのです。10年目にして改めて、サイエンスとアートを高め続けることが、私たち臨床医の責務だと肝に銘じています。

最後に読者へメッセージをお願いします。

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リウマチ性疾患は中年女性が多いと思われがちですが、老若男女の誰にでも起こり得る病気。何となく手がこわばる、動かしにくいといった微妙な変化を見逃さず、リウマチかもしれないと疑ってみることは重要です。痛みに対する対症療法だけで経過を見ることは避けましょう。また、原因不明の全身の痛みで苦しんでいる方も、ぜひ、当院のようなリウマチ科を標榜する専門医療機関を訪れてみてください。

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