重田 研一郎 院長の独自取材記事
しげた総合診療クリニック
(佐賀市/鍋島駅)
最終更新日:2026/09/08
佐賀駅から車で20分。淡いベージュとグレーを基調とした外観が穏やかな印象を与える「しげた総合診療クリニック」は、2011年の開業以来、内科領域すべてのプライマリケアに対応してきた。院長の重田研一郎先生は、高校時代に東洋医学や禅の世界に惹かれ、西洋医学と東洋医学の両方を実践できる道として医学部への進学を選んだ。漢方薬の処方や食事の指導に力を入れ、西洋薬だけに頼らない根本的なアプローチを貫いている。「命懸けで診療しています」と力強く語る重田院長のもとには、九州全域から患者が足を運び、オンライン診療では北海道からの受診もあるという。笑顔を絶やさない温かな心で、「抜苦与楽(ばっくよらく)」という仏教の言葉を医療の原点に据える先生に、その診療哲学と予防医療への思いを聞いた。
(取材日2026年7月30日)
東洋医学への関心を原点に、一診入魂で患者に向き合う
先生が医師をめざされたきっかけを教えてください。

私は祖父母のもとで育ちました。親代わりだった2人を高校1年の時に病気で亡くしたのですが、その経験が医療の道を志す出発点です。もともと東洋医学や座禅といった精神的な世界に強い関心があり、進路としては医学部に行くか、鍼灸大学に行くか、あるいは出家して修行の道に進むかという3つの選択肢がありました。鍼灸大学では鍼灸しかできませんが、医学部なら西洋医学も東洋医学も両方実践できると考え、佐賀医科大学への進学を決めました。学生時代は空手に打ち込み、気功にも取り組んでいましたので、身体と心の両面を追求する姿勢は当時から一貫しています。現在の診療スタイルも、あの頃の探求心の延長線上にあるものです。
クリニックにはどのような患者さんが来院されていますか?
当院では老若男女を問わず、内科領域すべてのプライマリケアに対応しています。風邪のような身近な症状から、がんや神経の変性疾患といった専門性の高い領域まで幅広く診ており、まずはなんでもご相談いただける場でありたいと考えています。近年特に増えているのが心療内科の領域で、社会や環境の変化を背景に、年齢や性別を問わず不調を訴える方が多くなりました。患者さんは佐賀県内にとどまらず、福岡、長崎、熊本、大分など九州全域から足を運んでくださっています。オンライン診療も導入しており、北海道の方が受診されているケースもあります。基本的には初回に一度来院いただき、その後はオンラインに切り替えますが、ご事情のある方には柔軟に対応しています。
幅広い患者さんを診る上で、心がけていることはありますか?

ホームページにも掲げている「一診入魂」という言葉を自らの指針にしています。学生時代に打ち込んでいた空手は、試合である組み手では相手と真剣に向き合わなければ話になりません。その相手が患者さんに変わっただけで、命のやり取りこそしませんが、命懸けで臨むという気持ちは変わりません。ただ、ギスギスしないように笑顔でいることは常に心がけています。真剣さの中にも穏やかさを忘れないのが、私が大切にしているバランスです。この理念はスタッフにも伝えていて、看護師は「一看入魂」、事務スタッフは「一事入魂」と、それぞれの持ち場で患者さんに全力で向き合ってくれています。
食事と栄養は健康の土台。体の内側から始める予防医療
治療ではどのようなアプローチを取られていますか?

基本となるのは東洋医学の漢方です。あと、食事の栄養バランスに関する指導やアドバイスにも熱心に取り組んでいます。なお、西洋医学の薬は特定の疾患に対して必要な場合に用いるという考え方を取っています。漢方は日々の健康管理から幅広い場面で活用できます。また当院では診療とは別に、オプションとしてアロマセラピーを学んだスタッフによるマッサージも提供しています。体だけでなく心の面からもケアできる環境を整えたいと考えています。
病気の予防という点ではいかがでしょうか。
病気は火事と同じで、大きくなってから消そうとすると時間も労力もかかります。ぼやのうちに対処するのがよく、できればぼやが起きる前に予防することが大切だと考えています。血液検査の結果を詳しく見ると、ご自身は健康なつもりでも食事の栄養バランスが整っていない人がとても多いんです。大人も子どもも「半病人」のような状態で日々を過ごしているのが、現代人の現実だと感じています。栄養を整えれば、学生さんなら学業やスポーツの成績に、社会人なら仕事のパフォーマンスに変化が出てくる可能性があります。運動や筋トレも有用で、体を動かすことで日頃の考えごとから離れられるなど、メンタル面のメリットも。われわれ医師にできることは、病気を治すだけではないと思っています。
診療で大切にされていることは何ですか?

限られた診療時間の中で、いかに質の高いやりとりをするかが大事だと考えています。大切にしているのは、その人の土俵に立つこと。どの角度からどんな言葉で伝えれば心に届くかを、常に考えながらお話ししています。私一人ですべてを把握するのは難しいので、看護師や受付スタッフにも協力してもらい、チームで情報を共有しながら患者さんの背景や人となりを理解するよう努めています。事前の情報収集にはAI問診も取り入れており、それをたたき台にしてさらに詳しくお話を伺います。食事や運動の見直しはすぐに生活を変えられる方ばかりではありませんので、なぜ続けることが大切なのかを繰り返しお伝えし、無理のない範囲で取り組んでいただけるよう心がけています。
苦しみを取り除き、その先の安らかな未来へ
先生が考える医療の本質とは何でしょうか。

私が考える医療の本質は「抜苦与楽(ばっくよらく)」という言葉に集約されます。仏教に由来する言葉で、苦しみを抜き、楽を与えるという意味です。苦しんでいる方を楽にして差し上げることが、医療の一番の土台だと考えています。その先にあるのが「安心立命(あんじんりゅうみょう)」。心安らかにして命を立てるということで、患者さんが本来持っている力を引き出し、より良く生きていけるよう支えたいという思いを込めています。そしてもう一つ、「for patients, for futures」という言葉も大切にしています。患者さんのために、みんなの未来のために、ということですね。苦しみを取り除くところから始まり、心の安定を経て、その方の生活が充実し、やがて周囲にも良い影響が広がっていく。そうした段階的な広がりをめざして、日々の診療に臨んでいます。
今後の展望や取り組みたいことをお聞かせください。
以前はクリニックの駐車場で夏祭りや冬祭りを開き、200人ほどの方に集まっていただいたり、3ヵ月に1回一般向けのセミナーを開催したり、毎週水曜の朝に気功教室を行ったりと、地域との接点を大切にしてきました。新型コロナウイルス感染症の流行を機にこうした活動は休止し、現在は目の前の診療に全力を注ぐ日々ですが、いずれまた再開したいという思いは持ち続けています。一人ひとりの患者さんが心身ともに健やかになれば、ご家庭や職場にも変化が生まれ、やがて社会全体が良い方向に向かっていく。その一助になりたいという気持ちが、私の根底にはずっとあります。まずは日々の診療を通じて、目の前の方の苦しみに向き合い続けていくつもりです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

病気は誰にとっても苦しいものですが、たとえ治癒が困難な病気であっても、そこには必ず何かしらの学びがあると私は考えています。ですから、どうか絶望せず、諦めないでいてほしいです。そしてもう一つお伝えしたいのは、特に不調を感じていなくても気軽にご相談いただきたいということです。これまで多くの方を診療してきましたが、「本当に健康ですね」と言える方にはほとんど出会ったことがありません。繰り返しになりますが、大人も子どもも栄養が十分に足りていないケースが実に多いのです。病気として表れる前に気づいて手を打つことができれば、その分だけ日々を軽やかに過ごせることが期待できます。ご自身やご家族の体の状態を知るきっかけとして、気構えずにご相談いただければと思います。

