水野 千鶴 院長の独自取材記事
久保クリニック
(横浜市西区/横浜駅)
最終更新日:2024/06/03
デパートやファッションビルが立ち並ぶエリアを少し離れると、一帯にオフィス街が広がる横浜駅西口。その一角で40年近く近隣の患者の健康を守り続けているのが「久保クリニック」だ。幅広い治療内容と先進の検査設備を備え、各診療科のスペシャリストが診療にあたる。多くの人に惜しまれながら逝去した久保前院長の遺志を継いで、2013年より院長として同院の運営にあたるのは、消化器と乳腺が専門の水野千鶴先生。「胸周りやお尻の悩みを話しづらいという女性の患者さんに、気軽に相談してもらえたらうれしいです」と優しい口調で語ってくれた水野院長に、クリニックの診療内容や地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2023年12月14日)
地域のかかりつけ医として、相談しやすいクリニックに
院長に就任されてから10年がたつそうですね。
1987年に当院を立ち上げられた久保秋夫先生が急逝され、当院を継承することとなったのが2013年。外科医としての総合病院勤務から一転して地域医療に正面から向き合うこととなり、戸惑いながらも医師やスタッフ、患者さんに支えられながら無事に10年目を迎えることができました。年月を経たことで患者さんからご相談される内容の変化を感じますし、自分自身が年を重ねたことでわかってきたことも多いと感じます。早期に病気を見つけ、早めに治療することで、患者さんの社会復帰に尽力したいという久保前院長の志を大切に、引き続き地域のかかりつけ医として、相談しやすいクリニックをめざしています。
診療内容を教えてください。
外科、内科、消化器内科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、皮膚科を標榜しています。私の専門が消化器内科と乳腺外科ですので乳腺の専門診療も受けつけていますし、呼吸器や循環器、皮膚科の医師による外来診療の時間枠も設けています。働き世代の方から高齢者まで、幅広い世代の生活習慣病管理に取り組んでいるほか、発熱や風邪症状のある方の診療も現在は予約なしでお受けしています。平日に休診日を設けず、夜7時まで診療しており、忙しい方も受診しやすい体制です。また、がんでは早期の診断から治療後の在宅支援まで幅広く対応。がん疼痛コントロールも得意ですので末期がんの患者さんの在宅医療にも注力しています。神奈川県にお住まいの乳がんの患者さんで、抗がん剤投与が必要でないけれどホルモン剤の投与が必要といった方には、継続して当クリニックに通っていただき治療を受けていただける「地域連携クリニカルパス」にも対応しています。
早期発見のため、検査機器も充実させているそうですね。
デジタルエックス線システムに加えて、AIを用いた診断補助システムや上部消化管内視鏡、24時間の心電図を連続記録して不整脈を診断するホルター心電図解析装置、動脈硬化検査装置、呼吸機能検査に使用するスパイロメーター、パルスオキシメーターなど、呼吸器や消化器、循環器の検査に使用する機材がそろっています。また、超音波診断装置で乳房や腫瘍の検査ができる機器も導入していますし、閉経後の女性でリスクが高まる骨粗しょう症の検査にも対応しています。
乳腺、消化器疾患の早期発見やがんの在宅医療にも尽力
乳腺の専門診療について詳しく教えてください。
乳房に痛みや違和感があるけれど、大きな病院の乳腺外科外来を受診するのはハードルが高いといった際に多くご相談いただいています。乳腺症による痛みや違和感は、心配のないケースがほとんどですが、まれに乳がんが見つかるケースも。石灰化の状態を調べるにはマンモグラフィによる検査が求められますが、超音波検査でも腫瘤の有無や硬さを調べることは可能です。痛みのある検査は避けたいという方も、超音波検査であれば気軽に受けていただくことができるでしょう。女性同士ということで、お話ししやすいとも思います。乳房の病気からご自身を守るためには、普段から自分の乳房に興味を持ち、ブレスト・アウェアネス「乳房を意識する生活習慣」を高めてセルフチェックを行うことが重要です。その上で気がかりがあれば、木曜日以外の私の診察日に、ご予約なしでもご相談いただけます。病気の早期発見はもちろん、不安を解消するためにも気軽にご来院ください。
消化器の検査も多数行っていらっしゃるのですね。
食道、胃、十二指腸の状態を観察する上部内視鏡検査を行っています。50歳以上の市民であれば横浜市の検診対象となりますし、胃痛やむかつき、胸焼けなどの症状がある方は保険診療にて検査を受けていただけます。当院では、検査時の苦痛をできるだけ抑えるために、鼻からスコープを挿入する経鼻検査を早くから導入しています。また、鎮静剤を使わず検査を実施するので、検査後はすぐに帰宅いただけます。
訪問診療にも力を入れていらっしゃるとか。
外来と併行して、訪問診療にも力を入れています。地域のかかりつけ医として、通院が難しくなった患者さんも最期まで診たいという思いからです。また、勤務医時代に消化器外科医としてがんの終末期にある患者さんを数多く診療してきた経験を生かし、終末期をご自宅で過ごしたいという方のサポートも積極的に行っています。現在、横浜市医師会の常任理事を務めていますが、医師会の活動を通じても、望む方すべてが住み慣れたご自宅での最期を迎えられるよう、地域に在宅医療の拡充に取り組んでいます。今後も、地域で連携しながらこうした取り組みを行える仲間が増えると良いなと考えています。
安心して受けられる医療で、地域の暮らしのサポートを
医師を志し、外科を専門に選ばれたきっかけは?
私の家族が幼い頃にかかった感染症の影響で少し足が不自由なのですが、熱があるからと診療所に行って「風邪でしょう」と言われて解熱したら、足が動かなかったという経緯を聞きました。後から調べてこの診断は避けられないものだとわかったのですが、「適切な診断ができる地域の医師がいないなんて」と医療に漠然とした不満を感じたことを覚えています。その後、医師志望の友人にも刺激を受け、医師への道を考えるようになりました。もともとは子どもが好きだったので小児科を専門にしたいと考えていました。医師になって間もなく、小児科で心臓の手術に携わる機会があり、あらためて「外科手術ってすごいな」と実感し、外科を志望するように。外科医のスピーディーに適切な判断が求められる部分は、私の性格に合っていたのだと思います。
診療の際に心がけていることは何ですか?
「この患者さんが私の家族だったら」「この患者さんが大切な親友だったら」と自分の周りの大切な人たちだと思って接するようにしています。また、クリニックに来院していただいたら元気になってもらって帰っていただきたいと思っています。特に初めての病気の治療はまさに未知の世界ですから、「怖い」と思ってしまうのは当然です。ですから、きちんと症状と治療内容を説明して不安を取り去り、病気におびえるよりも「治療を頑張っていこう!」と思ってもらえるようにお話をさせていただきます。一人で病気に立ち向かうのではなく、私たちクリニックのスタッフも患者さんと一緒に元気に治療に取り組んでいきますから、明るく治療に取り組んでいってもらえるようお話しするように心がけています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
地域医療の現場に10年身を置き、皆さんが安心して受けられる医療の実践がいかに大切であるかをあらためて実感しました。今後も外来診療と訪問診療の両面で、地域の皆さんの暮らしをサポートしていきたいと考えています。メッセージとしては、皆さんにはぜひがん検診を積極的に受けていただきたいです。胃がんに限らず、大腸がん、肺がん、前立腺がんや子宮頸がん、乳がんなど、自治体の補助により受けられる検診も活用し、早期に病気を見つけて早期治療につなげていただきたいと思います。