心不全を回避するため循環器疾患は早期治療を
循環器内科の活用法
たけだ膠原病リウマチクリニック
(京都市下京区/京都駅)
最終更新日:2025/06/13


心臓や血管に関する疾患を対象とする循環器内科。動悸や息切れ、胸の痛みなどを感じたときに頼る診療科と思っている人も多いかもしれないが、「たけだ膠原病リウマチクリニック」で診療にあたる日本循環器学会循環器専門医の田巻俊一先生は「無症状の期間にこそクリニックでの診療が必要」と警鐘を鳴らす。特に、リスクの高い5つの生活習慣があり、1つでも当てはまる場合は気づかないうちに心臓に負担をかけている可能性も。やがて命にも関わる心筋梗塞や心不全に陥らないようにすることが循環器内科の使命だと考え、早期の診断・治療を呼びかける田巻先生に、循環器内科に相談するタイミング、専門家による診療のメリット、検査内容などを詳しく聞いた。
(取材日2025年5月27日)
目次
心筋梗塞や心不全を予防するために循環器内科での診療を。基幹病院とのすみ分けを重視し、役割を果たす
- Q循環器内科はどんなときに相談する診療科なのでしょうか。
-
A
▲時には模型なども使用し、わかりやすく丁寧な説明を行っている
心臓をはじめ、血液などを体に循環させる器官に関わるすべての疾患が循環器内科の診療対象です。よく知られているのは、高血圧症や脂質異常症。ほかに、脈が飛んだり動悸がしたりする不整脈、冠動脈硬化から胸の痛みを感じる狭心症、心筋梗塞といった虚血性心疾患、心臓の弁が傷む弁膜症、心筋疾患の心筋症などがあります。動脈瘤、大動脈解離などの大動脈疾患や末梢動脈疾患も対象に含まれます。循環器に関する疾患は悪化すると最終的に重篤な合併症発症や心不全に陥ってしまうので、いかに早期に診断し心不全に進行させないかが循環器内科クリニックの重要な使命だと考えています。
- Q循環器専門医の診療にはどのような強みがありますか?
-
A
▲専門性の高い医師が診ることによるメリットについて話す田巻先生
例えば高血圧症の治療でも、血圧の上下だけでなく、合併症発現や心不全に至らないようにという観点から深掘りできるのが、循環器専門医の強みです。特に高血圧症は初期にはほとんど自覚症状が見られませんが、放置していると重篤な合併症や心不全につながる代表的な疾患の一つ。まったく症状がなく血圧が高いだけの「ステージA」、心不全関連所見はあるものの症状がまだない「ステージB」の段階で適切に治療をスタートすることが重要です。曖昧なままで終わらせず、検査で確定診断をできることが、循環器専門医がいるメリットであり、われわれが全力で取り組んでいる点です。診断後は、今後の予測をしながらアドバイスするステップに進みます。
- Q受診が必要な症状やタイミングを教えてください。
-
A
▲症状がなくとも、気になることがあれば早期に受診することが重要
動悸や息切れ、胸の痛みなどの症状が見られる場合は、心不全で言えば、すでに「ステージC」の可能性があり、すぐにでも受診をお勧めします。強調しておきたいのは、自覚症状がなくてもリスクを持っている方の早期受診の重要性です。高血圧、コレステロール異常、糖尿病、喫煙習慣、肥満の5つのうち、どれか1つでも当てはまれば循環器疾患や心不全の大きなリスクとなります。これらの項目について健康診断で指摘された方、さらには中年以降の年齢になっている方は、症状がなくても受診を考慮していただきたいですね。
- Q病気の早期発見のためにどのような検査を行うのですか?
-
A
▲各種検査機器も完備されている同院。患者に適した検査を実施
心電図とエックス線撮影、血液検査は必ず行います。また、エコー検査は心臓、腹部大動脈、頸動脈、下肢血管を調べる機器を導入しているので、部位ごとの詳細な診断に有用です。不整脈や狭心症などの疑いがある場合は、24時間装着するホルター心電図を用いることもあります。最近では、より時間をかけて変化を見るために1週間装着するタイプもあり、こちらはコードレスでカバーがついているのでシャワーなども可能です。24時間血圧計も使用します。ただ、虚血性心疾患が疑われる場合はさらにCT検査などが必要となるので、ほかの疾患の可能性をしっかりと除外した上で、同じグループの武田病院や連携する病院に紹介することがあります。
- Q大切にされていることや治療の特徴を教えてください。
-
A
▲患者をサポートするため、病診連携も密に行っている同院
リスクがあるものの自覚症状のない方が合併症発症や心不全にならないよう導くのがクリニックの大きな役割であり、入院などが必要な重症の方は大きな病院で診てもらうなど、それぞれの施設が長所を生かして患者さんをサポートできるように心がけています。例えば「胸が苦しいです」とお電話があれば、我慢できる程度なのか、今も苦しくてつらい状況なのかを確認し、場合によっては当院ではなく直接大きな病院を受診するよう促します。特に循環器疾患では、時間のロスが命に関わることもあるので、経験を生かした冷静な適切な判断が患者さんのためになると考えています。