水井 愼一郎 院長の独自取材記事
かわしまファミリークリニック
(各務原市/高田橋駅)
最終更新日:2025/06/24

岐阜バス・名鉄バスの川島停留所のすぐ横にある「かわしまファミリークリニック」。モダンな外観が特徴で、白を基調とした院内は清潔感があり、広く明るい印象だ。院長の水井愼一郎先生は、勤務医時代、数多くの手術やがん治療に携わり、救命救急も経験してきた外科のエキスパート。医療の前線で培ってきた知見と経験を生かした診療を行いながらも、あえて専門性を打ち出していないのは、「家族みんなで通院できる地域に根づいたクリニックでありたい」という思いからだという。診療科にとらわれず、幅広い疾患に対応する水井院長を頼りに、同院には乳幼児から高齢者まで多くの患者が訪れている。水井院長に、診療方針や注力している診療、医師としてのモットーなどを聞いた。
(取材日2025年3月27日)
ファミリー全員で通える、地域に根づいたクリニック
医師をめざしたきっかけを教えてください。

幼稚園の頃から医師になることが夢でした。その夢を抱いたきっかけは、あまりに幼い頃なので正直覚えていないんです。しかし、その後も意志が変わることはなく、一生懸命勉強して夢をかなえました。外科医になった理由は、私の抱く医師のイメージが「手術をする医師」だったからです。自分の目で見て、自分の手で病気の原因になっている部分を取り除くための治療は、外科医だからこそ経験できること。患者さんに貢献しているという実感がありましたし、やりがいは大きかったですね。外科の中でも消化器と乳腺を専門としていました。
この場所で開業した理由についてお聞かせください。
私の専門は外科で、勤務医として多くの手術やがん治療を経験しました。次のステップとして考えたのが、開業医という立場で地域医療に貢献することでした。いつかは開業しようと思っていたので、地域に根差した医療を長く提供するためには、早ければ早いほうがいいと考えました。2011年に当院を開業し、今年で15年目となります。私は名古屋出身ですが、母校は岐阜大学でしたので岐阜県にはなじみがあり、ご縁があった川島町を開業の地に選びました。当時、川島町は医療機関が不足していたため、私が開業することで、より貢献できるのではないかと思ったのも当地を選んだ理由です。
貴院の診療方針を教えてください。

当院は特徴がないのが特徴です。というのも、専門性に特化するよりも地域の方を適切な医療につなぐ「窓口」でありたいと思っているからです。まずはどんなことでも相談してもらい、必要であれば大規模病院などと連携しています。紹介先の病院で手術などを終えた後、経過観察で当院に戻って来る患者さんも多いですね。診療科にとらわれず幅広い疾患に対応しているのは「ファミリークリニック」として、乳幼児から高齢者の方まで、ご家族で通っていただきたいからです。患者さんが飲んでいる薬の把握や調整も行っています。年齢を重ねるほど、高血圧や腰痛など悩みは増えていきますが、すべての症状を薬で完璧に対応しようとすると、かえって日常生活の負担になってしまうこともあります。多剤処方にならないように、薬が過剰であれば調整するなど、一人ひとりに適した医療を提供できるように心がけています。
地域の健康を守るため、幅広くかつ専門的な医療を提供
健康診断やがん検診に力を入れていますね。

がんは早期発見が何より大切ですので、通常の健康診断はもちろん、がん検診を積極的にお勧めしています。がんの手術というのは腫瘍の大きさによって、術後の大変さが変わります。早期で見つかれば、患者さんの負担軽減になりますし、治療の選択肢の幅も広がりますからね。私は、手術から緩和ケア・支持療法に至るまで、がん治療に長年携わってきましたから、早期発見がいかに重要であるかをできる限り訴え続けていきます。万が一、病変が見つかった際には、適切な施設にご紹介します。岐阜大学医学部の教授も同世代ですし、県内の第一線で治療にあたっている外科医は、みんな顔見知り。病状に合わせて的確な連携ができるのは、私の強みだと思います。
先生は乳腺の専門家でもあり、乳がん検診にも注力されています。
乳がんは診断から治療まで、内科でも婦人科でもなく、外科の領域ですので私の専門分野です。当院では私がエコー検査を行う他、乳がん検査に精通した女性技師にも協力いただき、より精度の高い超音波検査を提供しています。当地域では乳がん検査に対応している医療機関が少なく、受診のハードルが高いのが現状です。また、マンモグラフィ検査を実施している医療機関も1件だけ。マンモグラフィ検査は日本人女性の乳腺のサイズ的に痛みが出やすく、どうしても敬遠されがち。そのため受診率も極端に低いのが実情です。近年、乳がんも増加していますので、一人でも多くの方が検査を受けられるよう、今後もハードルを下げていきたいですね。
小児科も専門の医師が診療してくれるそうですね。

岐阜大学医学部附属病院の小児科専門の医師が週3回来てくれていますし、教授に来ていただくこともあります。私も診察していますが、子どもは大人の体をそのまま小さくしたわけではないため、専門家に診てもらうほうが親御さんも安心なのではないかと思います。前線で活躍するスペシャリストが直接診察することで、一般的な小児科では難しい症例にも対応できるのは、当院の強みです。さらに地域の小児科のある大規模病院は、私の母校である岐阜大学の傘下ですので連携が取りやすいんです。より高度な治療が必要な際には、迅速にご紹介させていただきます。
病気を早期発見するために、検診の重要性を訴え続ける
医師としてのモットーは何でしょうか?

「とりあえず、どんな症状でも診る」のがモットーです。私の専門か専門外かは一旦脇に置いて、まずは患者さんの訴えに耳を傾けます。せっかく当院に来てくださったのに、「専門外なので他へ行ってください」というのは心苦しいですし、隠れた病気を見逃したくないからです。もちろん私にできないこともありますが、その際は適切な医療機関をご紹介するのが、かかりつけ医として最低限の責任だと思います。診療ではできるだけ患者さんのお話を丁寧に聞くようにしています。なぜなら、「おなかが痛い」「咳が出る」という主訴だけではわからないことが多いからです。例えば、風邪だと思っていても、肺炎が隠れていることもあります。病気のヒントを見逃さないよう、常に注意を払っています。
スタッフさんはどんな方が多いですか?
みんな優しく明るく、てきぱきと仕事をしてくれています。近隣に住んでいる人が多く、土地柄をよく理解しているため、患者さんも接しやすいようです。今の時代、スタッフの確保が難しい中で、当院は長く勤めてくれているメンバーばかり。アットホームな雰囲気づくりや、地域に根差したクリニックとしての土台を支えてくれているのは、まさしく彼女たちです。とても信頼していますし、感謝しかありません。これからも、このスタッフたちとともに、患者さんが気軽に通えるクリニックとして、地域に貢献していきます。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

開業当初、当地域はがん検診の受診率がとても低く、危機感を抱きました。がん検診というのは受ける人は定期的に受けるため、がんの発見率は低くなります。それは良いことなんですが、一方でがん検診を受けない方は当然がんが見つからず、手遅れになるケースもあります。地域全体でのがんの発見率を下げたい、それが私の思いです。だから少し、しつこいくらい検診をお勧めしています。もし、検診に後ろ向きな患者さんが、検診を受けたいと思ってくれて、がん発見につなげることができたらうれしいですね。早期発見できれば、簡単な手術で済み、再発の可能性も低くすることもあり得ますから。一つでも多くの命を守るため、今後もがん検診の大切さを伝えていきたいと思います。