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榊原 博樹 院長の独自取材記事

とくしげ呼吸器クリニック

(名古屋市緑区/徳重駅)

最終更新日:2021/10/12

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック main

緑区鳴海町徳重の「医療法人SRAとくしげ呼吸器クリニック」は、藤田保健衛生大学で長く呼吸器内科の教授を務めた榊原博樹先生が院長を務める呼吸器専門のクリニックだ。大きな病院に行くのも面倒だが、なぜか咳が長引いているというとき、気軽に受診できて専門性の高い診療を行ってくれるクリニックがあれば、どんなに便利なことか。教授時代からそうした専門クリニックの必要性を感じていたという榊原先生の理想を形にしたのが同院だ。温厚で控えめな印象を受ける先生だが、同院の診療スタイルについて話し出すと一気に熱を帯びてくる。患者と誠実に向き合おうとする真心が伝わってきた。

(取材日2016年5月16日)

大学教授から転身し、呼吸器専門クリニックに勤務

医師になった理由と、開院されるまでのご経歴を教えてください。

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック1

子どもの頃から医師になりたかったというわけではないんです。化学や物理など理系の科目が得意だったので医学部に進みました。医師は職業としてイメージしやすかったんですね。信州大学医学部を卒業した後、名古屋大学の医局に所属して名鉄病院で1年間研修しましたが、恩師からの依頼で、当時、立ち上がったばかりの藤田保健衛生大学の呼吸器内科に赴任しました。最初は2〜3年ぐらいのつもりだったのですが、結局、ずっとそこでお世話になって、1999年から、呼吸器内科・アレルギー内科の主任教授を務めました。主任教授は優秀だからなれるというものじゃないんです。縁や環境に恵まれて、教授として残ることになり、特に喘息に興味を持って研究しました。2012年まで教授を務めましたが、私なりの思いがあって、定年前に退任しました。

呼吸器内科を専門に選ばれたのは、なぜですか。

研修医時代に、呼吸器疾患の患者さんを受け持った影響が大きかったですね。「グッドパスチャー症候群」という肺の自己免疫疾患で、当時は日本でまだ30例ほどしか報告されていない、非常に珍しい症例にも遭遇しました。自身の免疫が肺と腎臓の両方の組織を傷害するので、大量の喀血や血尿が同時に見られる病気です。その症例のおかげで、いろんな大学の呼吸器領域の先生方とコネクションができました。その経験が、私の医師、研究者としての方向を決めたといえますね。

このクリニックの院長に転身されたのは、どんな思いがあったからですか?

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック2

よく冗談で、「教授は3日やったらやめられない」、「3日でやめたくなる」と言いますが、私は後者でした。いろんな管理業務が多くて、だんだん患者さんから離れていかざるを得ないんですね。患者さんのそばにいる時間を作るのがなかなか大変で相当な努力が必要なんです。できれば、早く教授という職を離れて、現場の臨床医に戻りたいと思っていました。たまたま、昔、私の下で助教授をしていた当法人の理事長が誘ってくれたものですから、ここで働くことになりました。ここは藤田保健衛生大学の附属病院とも近いのでコネクションが取りやすく、連携して専門のクリニックができるのではないかと思いました。

咳の原因をその日のうちに見極め、治療に入る

呼吸器専門のクリニックということですが、どんな症状の患者さんが多いのですか。

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック3

日本に呼吸器疾患の患者さんはたくさんいるんですが、呼吸器専門クリニックというものは、まだ少ないんですね。開業するときは、呼吸器専門でやっていけるか不安にもなりました。しかし、大学にいた時から、患者さんのためには専門クリニックがあって連携が取れると良いなと思っていましたから、理事長と相談して名前にも呼吸器と入れました。実際、当院の500人くらいの初診患者の症状を調べてみたら、ほぼ全員の方が呼吸器症状でした。中でも、咳の症状が一番多く、7割ぐらいあります。当院の場合は、咳があっても、風邪の患者さんは少なくて1割程度。普通の内科クリニックで診てもらったけれど、咳が止まらないから来院されたという方がほとんどです。そういう意味では、呼吸器専門クリニックとして足場が築けてきたかなと思います。

例えば、咳を訴えられて来院された患者さんにはどんな診療をしていますか。

咳の診断や治療は、実はかなり難しいのです。世界的なガイドラインでも、咳止め薬は風邪の一部と気管支炎の一部に効くぐらいで、他の疾患には効かないとされています。きちんと診断して、それぞれの病気に合った治療をしないと治りません。原因として一番多いのは喘息です。喘息には喘息に対する治療をしなければ治りません。急性気管支炎であれば抗生剤を投与しなければなりません。漫然と咳止めをのんでいるだけでは治らないんです。大事なのはやはり問診ですね。画像に異常が出ると比較的診断しやすいのですが、ほとんど場合はレントゲンでは異常が見つからないことが多いです。必要であれば呼吸機能や血液の検査なども行います。当院では、ほとんどの場合は初診時に原因疾患を見極めて薬などで治療します。1〜2週間ほどで効果を確認し、もし効果がなければ診断を見直します。こういう方法を「治療的診断」といいます。

開院して4年ほどたちましたが、手応えはいかがですか?

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック4

呼吸器疾患の診断はかなり難しいので、一般のクリニックでは見極められないこともあるかと思います。開院から4年ほど経ちましたが、初診の患者さんがとても多くて、毎月300人ほどいらっしゃいます。そういう意味では、お役に立てているんだろうなと思っています。緑区周辺だけに限らず、かなり広い範囲から、若い方からご高齢の方まで幅広く来られています。クチコミの患者さんも増えてきましたね。喘息は若い人が多いですが、小児は診療経験がないので、中学生以上に限らせていただいています。

将来は呼吸器疾患患者の在宅医療に注力したい

こちらには、CTをはじめとした医療機器がそろっていますね。

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック5

呼吸器専門クリニックとしてほとんどの呼吸器疾患の診断がつけられるように診断装置は充実させました。画像診断がメインなので、CTがあるのは助かっていますね。病院に紹介する必要がなく、すぐに検査できますから。咳を訴える患者さんは、「ここ何日も眠れなくて困っている、何とかしてくれ」というような方がほとんどなんです。大学病院では正確に診断するために「今日は検査だけ」ということが多いんです。治療すると次の検査結果に影響するので。1週間ごとに違う検査をして、3回ぐらい来たところでようやく「この病気です」と。当院は症状があったら、すぐに取ってあげたいので、可能な限りその日のうちに検査して、仮の診断であっても診断をつけて治療します。そのために診断装置をそろえました。

睡眠時無呼吸症候群の診療もされるのですね。

大学では睡眠時無呼吸症候群の研究もしていました。本院のたかおかクリニックが睡眠時無呼吸症候群を専門にしているということもあり、ここでも力を入れています。今、300人ぐらいは睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいらっしゃいます。ほぼ100%いびきをかきますから、配偶者に指摘されて受診される方がほとんどですね。独り暮らしだと、いびきには気付きませんが、昼間に強い眠気があったり、夜中に目が覚めたりという悩みで受診されます。当院では自宅でできる簡易型検査装置でスクリーニング検査を行います。これで明らかに重症であれば、健康保険でCPAPという小型人工呼吸器による治療が可能です。中間ぐらいの重症度なら、1泊入院しての終夜ポリグラフ検査が必要になりますので、たかおかクリニックに紹介してこの検査をしてもらいます。それで一定以上の重症度なら保険で治療可能です。

これからの展望と読者へのメッセージをお聞かせください。

榊原博樹院長 とくしげ呼吸器クリニック6

大学病院にいた時に困ったのが、重症だけど病状は比較的安定しているという患者さんを引き受けてくれる施設がないことでした。人工呼吸器を着けているような重症な患者さんは、それなりの知識や技術がないと対応できないので、敬遠する施設が多いんです。そういった患者さんたちを、生活の場に近いところでみていけるような介護付き施設を造ったり、人手不足のために規模を縮小している在宅医療の体制を整えたいと思います。咳の原因となる疾患はさまざまで、結核やがんの初期症状であることもあります。2週間以上、咳が続くときは、ぜひ、専門の呼吸器内科を受診してください。

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