三木 和平 院長の独自取材記事
三木メンタルクリニック
(横浜市西区/横浜駅)
最終更新日:2024/12/17

多くの路線が交わる横浜駅、東口から徒歩圏内にある「三木メンタルクリニック」は、横浜市営地下鉄ブルーラインの高島町駅からも徒歩2分という、交通の便がいい場所に位置する。院長の三木和平先生は、精神科の領域の中でも精神薬理学やうつ病、またこれに伴う復職支援に力を入れている。早くからリワークプログラムを導入し、多くのうつ病患者を治療から卒業させてきた。ビルの3階にある同院は、落ち着いた雰囲気の中に楽しげな絵画がいくつも掲げられ、患者の心まで和ませてくれる。穏やかに語る三木先生に、リワークを導入したきっかけから趣味に至るまで、じっくりと話を聞いた。
(取材日2018年11月24日/情報更新日2024年10月11日)
診断後のフォローのために、リワークを早期に導入
もともと2つのクリニックがあったそうですね。

2002年に三木メンタルクリニックを開業し、2007年に岡野町にストレスケアクリニックをつくってリワークプログラムを行っていました。お互いは徒歩で5分程度の距離だったのですが、患者さんが行ったり来たりするのが大変なので、2011年に2つを統合して現在の場所に移転しました。スタッフの体制は、ドクターは私と非常勤の先生が3人、あとは心理療法士が3人、リワークのスタッフが2人、受付のスタッフが5人います。診療から治療、リワークまでを同じ場所で行っているので、それぞれの連携がとりやすいですね。
現在までを振り返ってみて、多い疾患は何ですか?
やはりうつ病ですね。会社に勤めている人もそうですが、主婦でもうつ病は多いんですよ。うつ病は非常に真面目な方に多く、既に十分頑張っているのに、もっと頑張らないといけない、努力が足りないと自責的になり、ストレスをため込む方が発症しやすい病気です。負荷を減らして休養を取ることが大事なのですが、休職を勧めても、会社に迷惑がかかるからと休もうとしません。仕事量を減らして通院しながらの治療は可能ですが、残業をしながらの治療は難しいので、結果、受診も滞りがちになり、会社からの指示でようやく受診するというケースもよくあります。
2015年から企業のストレスチェック制度がスタートしましたよね。

私も企業のストレスチェックや面接指導などにも携わっているのですが、現在企業で行われているストレスチェックは、メンタルヘルス対策の一貫で、うつ病などの一次予防のためにチェックが行われています。うつ病は本人に自覚がないこともしばしばあるので、事前に察知して、ストレスの軽減や仕事内容の見直しなどのアドバイスをしています。
新たに導入された光トポグラフィー検査とは、どのような内容なのでしょうか。
2018年の3月に導入しました。今までは総合病院のような大きな医療機関でしか入れられなかったのですが、小型軽量化が進み、クリニックでも導入が可能になりました。光トポグラフィー検査では、近赤外線を用いて、脳の前頭部や側頭部のヘモグロビンの濃度を測定し画像化します。直接体に何か負担があるものではないですし、脳機能の変化を時間経過に沿って座ったままで測定することができ、測定時間もわずか15分程度です。当院でも導入したばかりなので、もう少し症例を積まないといけませんが、今まで問診で診断していたうつ病や双極性障害などが、数値化されて客観的に捉えることができるので、診断の助けになりますね。
結果を急がないこと、精神科は地道な治療が必要
リワークプログラムを早くから取り入れているそうですね。

そうです。うつ病で休職している人たちに集団認知行動療法を行うと、症状の改善につながる方が非常に多かったので、プログラムとして定着させようと考えリワークを立ち上げました。うつ病は休養を取ることで復帰できる方が半分以上いらっしゃいますが、中には休養だけでは難しい方もいて、そういった方は規則的な生活や何かに集中して取り組む時間が必要です。また、一人でいると孤立しやすいので、同じ境遇の人と出会うことで仲間意識も芽生えます。自分のことはわからなくても、相手の気持ちは受け入れられる、人を見てわが身を知るというミラーエフェクトも、リワークでは期待できるんですよ。
具体的にどのような内容なのでしょうか。
職業リハビリテーションのようなリワークもあるのですが、当院ではもう少し心理的な部分にあたる認知行動療法や、SSTという社会技能訓練、ヨガやストレッチを取り入れたリラクゼーションなどを取り入れています。うつ病の方は常に気持ちを張り巡らせていますから、リラックスをすることはとても重要です。リワークで通う人同士で飲み会を開くこともあるようですね(笑)。そういったコミュニケーションは、治療の一貫として、とても大事なことです。
先生が患者さんと接する中で心がけていることは何ですか?

患者さんの訴えや悩みをしっかりと聞くようにしています。ご本人は困っていることの原因を自覚していないことも多いので、患者さんの背景をさまざまな観点から聞き、総合的に診断します。ですから初診は1人30分以上かかることもしばしばです。患者さんの中には、話し出すと止まらない人もいれば、まったくしゃべらない人もいます。自分からしゃべろうとしない人には、しばらく待っていると必ず少しずつ話し出してくれるので、そうなるまで待ちます。結論を急ぐのではなく、辛抱強く待つことも診療には必要なことですね。患者さんには、受診して良かったと思えるものを持ち帰ってもらいたいので、必ずいいところを見つけて「これだけ元気になっていますよ」というように、「言葉のお土産」を渡すようにしています。
わからない部分が多いからこそ、挑戦のしがいがある
なぜ先生は医師になろうと思われたのですか?

特別考えたことはないのですが、弁護士か医師になりたいと思っていました。困っている人を助けたい、人の役に立つ仕事がしたいとずっと考えていて、普通のサラリーマンにはなりたくないと思っていたんですよ。精神科を選んだのは、内科や外科といった分野はある程度の診断や治療が確立されているのに対し、精神科はまだわからない部分が多く、かえって興味が湧き、挑戦のしがいがあると思いました。医師になりたての頃は先生方の指導も受けましたが、私自身は教わったという記憶はあまりなく、基本的に自分でいろいろと考えて調べながらやっていたので、あまり先生の言うことは聞きませんでした(笑)。もちろん他の先生方のやり方を参考にすることはありましたが、自分のスタイルは必要ですからね。
ところで休日はどのように過ごされているのでしょうか?
ジャズやクラッシックの音楽鑑賞は好きですね。医学部の時は軽音楽部の部長をやっていて、テナーサックスを吹いていました。毎日忙しいですが、音楽を聴いたりゴルフをしたりと、オンとオフの切り替えは、割とできているほうだと思います。
今後の展望がありましたらお聞かせください。

近年問題になっているのが発達障害で、子どもさんはもちろん、大人の発達障害も増えています。今までは「ちょっと変わった人だな」くらいで見逃されてきたのが、発達障害の啓発が進むにつれ、忘れ物が多い、片づけが苦手、集中力がなくミスが多いなど、具体的に事例化されてきました。当院にも、自分は発達障害ではないかと言って来る方や、周囲から勧められて受診される方も多いので、発達障害支援センターなど、外部のさまざまなサービスと連携しながら、診断から治療、サポートを強化していきたいと思っています。
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
メンタルクリニックは何を相談していいかわからないという方も多いですが、例えばストレスで気分が落ち込み会社に行けないなど、生活に支障が出ているときは、放っておかずに相談してください。精神的な疾患は、まず体のどこかに異常がないかを調べることが大事なので、内科や外科などで異常がない方が、当院を紹介されて受診するケースもあります。必要があれば、逆に当院から他の診療科を紹介することも可能なので、悩み続けず、気軽に早期受診してください。
自由診療費用の目安
自由診療とは心理カウンセリング/5000円(50分)、光トポグラフィー検査/1回1万2000円(リワークプログラム参加者の場合は8000円)、予約料/初診時のみ3000円(選定療養)