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若月 冬樹 院長の独自取材記事

若葉クリニック

(船橋市/船橋法典駅)

最終更新日:2020/07/17

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高齢社会の日本で足腰の衰えや認知症などで通院が難しい人が増える中、家や施設で受けられる在宅診療は、地域医療にとって欠かせないもの。船橋法典駅から徒歩約6分の住宅地に事務所を構える「医療法人社団麒麟会 若葉クリニック」は、そんな在宅診療に特化したクリニックだ。麒麟会は、近隣にまだ在宅療養支援診療所が少なかった頃から、高齢者・小児の訪問診療を開始。現在は、若月冬樹院長含め、内科、精神科、整形外科、小児神経内科、皮膚科などを専門とする11人の非常勤医師と看護・リハビリテーション・ソーシャルワークに関わるスタッフが一体となったチームで、訪問診療を通じて、地域の医療を支えている。若月院長に話を聞いた。
(取材日2020年7月2日)

時間をかけて向き合えるのが、在宅診療のおもしろさ

在宅診療が中心のクリニックなのですね。

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ええ。もともとは、高齢者向け療養施設の1階で一般的な高齢者診療と小児科の外来を行っていたのですが、10年ほど前からは在宅診療がほとんどです。ただ、以前から診ている患者さんで引き続き外来で診てほしいと言ってくださる方がいるので、月1、2回だけは診療室での外来診療も行っています。在宅診療に切り替えたのは、自分でもやりたいと思っていたのに加え、当時、厚生労働省も入院せずに自宅で療養する体制づくりを進めていたのがきっかけになりました。2020年7月に現在の場所に移転し、新たな気持ちで診療をスタートしました。

在宅診療のやりがいはどんなところにありますか?

患者さんお一人お一人の環境を直接見られることを、とてもおもしろく感じています。例えば、キッチンにお菓子がいっぱい置いてあるなとか、本棚にさまざまな本が並んでいるなとか、自然に目に入ってくるものはありますし、そういうところから患者さんのバックグラウンドが見えるのはとてもおもしろいですね。在宅診療を続けている最大の理由は、そんなふうに一人ひとりを深く知り、時間をかけて診療できるのが自分に合っているからです。在宅診療の患者さんは、お子さんもいますが、大多数はご高齢の方。高血圧や糖尿病、脳梗塞、がんなどいろいろな病気の方がおり、看取りをすることも多いです。末期のステージでは、消化器内科、呼吸器内科、精神科、腫瘍内科といった各専門分野別の対応ではなく、垣根を取り払って、体全体を見ていくことの必要性を実感しています。

在宅診療では、どんなことができるのでしょうか?

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いわゆる、一般的な内科の開業医が診療室の中で行える検査・診療は、在宅診療でも同じように行えます。CT検査、MRI検査といった大がかりなものができないぐらいですね。採血、心電図、エコー、エックス線検査など、一般的なクリニックでできる検査は在宅でもはすべてできますし、よく使っています。在宅診療の対象となるのは、原則として「外来に来られない方」。その中には、足が不自由で歩けない、老老介護で病院まで連れていけないといった事情で物理的に来られない方と、認知症や精神面の状態から、順番待ちのある外来診療に通うのが難しい方のどちらも含まれます。当院には現在、内科、精神科、整形外科、小児神経内科、皮膚科、呼吸器内科など、専門分野の違う非常勤の先生が11人おり、一人ひとりの状態や病状を細かく診た上で、分担しながら、オーダーメイドでその方に合った診療を行っています。

各家庭のルールを尊重し、最善の方法をともに考える

診療の際、大事にしていることを教えてください。

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非常勤の先生たちに必ず伝えているのは、患者さんの家や施設の敷居は「国境」だとの意識を持って、訪問先のルールを尊重することの大切さです。医学的に正しいことはどこへ行こうと変わりませんが、国ごとに独自の法律があるように、各家や施設にもそれぞれの方針ややり方があります。例えば、あんパンが好きで、家族みんなが日常的に食べている糖尿病患者さんに、ただ「あんパンは駄目です」と言っても、甘いパンを食べる習慣の方はあんパンがジャムパンに変わるだけ、ということは珍しくありません。そこは、全部駄目だと言うのではなく、「食べる時はパンを家族と半分こしましょう。あなたはこの握りこぶしより大きいのは食べちゃ駄目ですよ」というふうに、その人のやり方や家・施設のルールを尊重した上で、現実的に受け入れられる方法を提案することが大切です。このように頭をやわらかくしないと在宅診療は続けられないので、そこは常に意識しています。

訪問看護・介護ステーションなどとも密な連携があると聞きました。

ええ、連携先はたくさんあって、うちはお世話になりっぱなしです。特に小児の在宅診療では、ほぼ訪問看護も入りますからね。親御さんの不安を取るために、昼と夜の1日2回訪問して子どもの状態を聞き取り、状態報告してくれるところが複数あって、本当に助かっています。地域のネットワークがないと、在宅診療は絶対にうまくいきません。また、患者さんの多くは病院のソーシャルワーカーさんやケアマネジャーさんからの紹介です。急変時に入院が必要な時はすぐに対応できるよう、こちらも密な連携をとっています。

今後の展望についても教えてください。

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年々自分の体力は落ちていくので、今後は初めて訪問診療をする若い先生方の活躍をサポートするほうに力を入れたいと思っています。僕は、教育係として模範的な存在ではないですが、いろいろな先生にここで活躍してもらい、患者さんとうまく良い関係をつくっていって、在宅診療のニーズは増えているので、在宅診療を担う先生方がもっと増えてほしいです。「自分がこうしたい!」メインではいけないと思いますが、みんながどういうものを必要としているかを肌で感じ取って求められる医療を提供していこうという姿勢であれば、誰がやっても大丈夫だと思います。

医師への要望はどんどん伝えてほしい

先生が医師をめざすようになったきっかけは何だったのですか?

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祖父、父が医師で、父の兄である伯父も医師という環境で育つ中で、自然に選んだというのが正直なところです。父は、家族経営の小さなクリニックの開業医で。僕も小さい頃は、母が院内処方で出す粉薬を薬包紙で包むのを手伝ったりしていました。そんなこともあって、その頃から自分も医師になるんだろうなあとは思っていましたね。実際に医師になるまでには、人間関係に悩んだり、挫折したり、すべてが順調に進んだわけではありません。ただ、そういう時も何も言わずに見守ってくれた父の存在があり、父のように地域の方に必要とされる医師になりたいとの思いは変わらずあったため、初志貫徹でこの仕事に就くことができました。

お忙しい日々の中、ご自身はどうリラックスされているのでしょう?

今は暇がなくてできませんが、以前はボディビルのウェイトトレーニングをしたり、ダイビングに行ったりしていました。あと、僕自身楽器はやりませんが、幼い頃に父にクラシックコンサートによく連れて行ってもらったこともあり、音楽が好きです。印象深く、しみじみといいなと思うのは、有名なドイツの作曲家が書き上げた最後のピアノソナタ。音が少なく始まって徐々に増え、中盤はまるでジャズのようなんです。最後は静かに、消えていくように終わる幽玄を感じさせる曲です。努力家で偉大な凡人……と言うと失礼ですが、その曲を晩年の彼が書いたのが本当に信じがたくて。人間は、歳を重ねるのも大事なんだなと思わされました。

最後に、地域の方へのメッセージをお願いします。

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在宅診療で、人生の先輩であるご高齢の方を診させていただいていますが、伺ったお宅で描きかけの絵画やレポートなどを目にする度に、私が啓発されるというか勉強になっています。ぜひ住民の皆さまには、よりよく生きて医師を育ててほしいし、「こういう医師になってほしい」「こういう医師に来てほしい」という要望を、どんどん発信してほしいと思います。高齢者施設の運営に携わっているどなたに聞いても、「専門分野の名医ではなく、親身になってくれる人に来てほしい」と言われますが、それも一つの意見。皆さまそれぞれに意見があると思うので、それを医療サービスを提供する側に、ぜひ伝えてほしいですね。言いづらく感じる人も多いと思いますが、最近の若い医師は考え方がとても柔軟ですし、医師の世界も徐々に変わっています。ぜひサービス利用者の方からも、どんどんアドバイスをお願いします。

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