井出 学 院長の独自取材記事
井出整形外科クリニック
(横浜市西区/西横浜駅)
最終更新日:2023/11/02

相鉄本線・西横浜駅から徒歩7分、大谷公園の目の前にある「井出整形外科クリニック」は、1985年の開院以来、整形外科、内科、リハビリテーション科を専門に地域密着型の医療を展開してきた。2020年から同院の診療に参加している院長の井出学先生は、クリニックのリニューアルを指揮し、新たな診療体制と方針を掲げ、2023年から同院での診療を本格的に始動した。現在は前院長の妻であり院長の母である井出陽子先生が内科を、院長が整形外科を担当している。前院長が築き上げてきた身近なクリニックとしての良さと、脊椎外科を専門に高度な医療に携わってきた院長の知識と経験が組み合わさり、新体制で地域に医療を提供している。爽やかな笑顔と穏やかな語り口が印象的な井出院長に、今後の展望や診療方針を聞いた。
(取材日2023年7月11日/更新日2023年11月1日)
歴史あるクリニックを、さらに受診しやすく刷新
貴院について教えてください。

当院は1985年に父の井出博が開院し、父が整形外科を、母が内科を担当してきました。僕は2020年から月に2回、隔週の土曜日に診療を担当し、2022年の4月からは、横浜市立大学附属市民総合医療センターの脊椎専門の外来と兼務しながら、毎週金曜日と土曜日に当院で診療。2023年春からはすべての日で診療を行っています。父から引き継ぐ過渡期として、建物をリニューアルして老朽化した部分を新しくしたり、リハビリテーション室を拡張したりと取り組んできた矢先に父が急逝し、現在は僕が院長としてクリニックの運営にあたっています。
どのようなリニューアルをされたのですか。
クリニック自体が古くなっていたことから、内装を大幅に刷新。順番予約制を導入し、受付後はご自身の診療時間まで院内でお待ちいただく必要がないため、待合スペースは少し狭くし、その分リハビリテーション室を大きくとりました。予約はご自宅などからウェブ経由、もしくは来院により取ることができ、初診・再診ともにご利用可能です。順番が来たらメールやSNSで通知がくるので、ご自宅などでゆっくりお待ちいただけます。新型コロナウイルス感染症もまだ予断を許さない状況ですし、今後ほかの感染症が流行する可能性も考えると、皆さんの院内での滞在時間はできる限り短くしたいと考え導入に至りました。
新しい機器の導入も進めていらっしゃるのですね。

当院は、骨粗しょう症の予防・治療に力を入れており、骨粗しょう症の診断に推奨されているDXA法による骨密度測定を行うための骨密度測定装置も導入しました。検査にかかる時間を大きく短縮し、より精密な画像を得ることができるようエックス線機器を刷新しました。また、温熱治療器や牽引器、電気治療器、ウォーターベッドなど、痛みを和らげ可動域を広げるための物理療法に使う機器、足の血行を改善するためのエアマッサージ器も導入しました。今後は、理学療法士さんにもチームに加わっていただき、これらの機器を用いながら、新たに運動器リハビリテーションをスタートさせる予定です。
痛みへの注射治療や骨粗しょう症の予防に注力
力を入れていらっしゃる治療はありますか。

特に超音波検査機器を用いて検査・診断しながら行う、神経ブロック注射やハイドロリリースなど、注射治療に力を入れています。神経ブロック注射は、痛みなどの症状が出ている部分に局所麻酔薬や炎症を抑えるためのステロイド剤を注入する方法です。ハイドロリリースは、痛みの緩和のためにエコーガイド下で生理食塩水などを注射します。その際に、筋肉の癒着をはがすような工夫もしています。近年、超音波機器の精度が飛躍的に向上し、ピンポイントで原因部位に注射する治療が望めるようになりました。また、60代からの女性に特に多い骨粗しょう症の予防にも注力しています。
骨粗しょう症について詳しく教えてください。
長く勤務してきた総合病院では、脊椎外科を専門に、圧迫骨折、つまり骨粗しょう症が土台にあって背骨を骨折してしまった方の治療を多く手がけてきました。骨折して病院に運ばれてきた方で、調べてみると骨粗しょう症だったというケースは大変多く、事前にわかっていれば骨折に至らなかったと思う方を数多く診てきました。また、ご自身は自覚のないまま密かに骨折している、いわゆる「いつのまにか骨折」の根底にも骨粗しょう症があります。痛みを感じつつもぎっくり腰などと勘違いしてやり過ごしていたら、実は骨折だったというケースです。いずれにしても、骨折は1度起こると次の骨折のリスクが上がってしまい、生活の質が低下したり、寝たきりになったりしてしまうことも。専用機器による検査や採血、骨折の有無などで骨粗しょう症を早期に発見し、内服薬や注射で治療することで骨折の発生を少なくすることをめざす、予防的医学に注力しています。
直近ではどのような患者さんが多くいらしていますか。

従来ご受診いただいていた地域のご高齢の患者さんに加えて、比較的若い女性で肩凝りや関節痛を訴えて来られる方が増えている印象です。ホームページでの情報発信も始めたので、ホームページを見て来たとおっしゃる方もいます。こうした痛みの根底には女性ホルモンの減少が見られることも多いです。当院では、注射治療を含む痛みへの治療やストレッチなどのリハビリテーションに加え、サプリメントのご提案も行っています。
痛みに寄り添う診療で地域貢献を続けたい
クリニックを引き継ごうと思われたのはなぜですか?

長く働いた総合病院では、整形外科の病気の中でも手術が必要な方をメインに診療してきました。絶対に必要な手術もありますが、手術は必ずしも万能ではなく、手術をせずに改善が見込めるのであればそれに越したことはないという考えが年々強くなっていました。それに、自分の患者さんに神経ブロック注射や先進的なリハビリテーションなどを継続できれば良いのですが、大学病院でそれを行うには数的な制限やマンパワーの問題で難しい。そこがジレンマでした。手術までは必要がない、あるいは手術を希望されない患者さんや、既往症など、ほかの病気を持っているなどの理由で痛みとお付き合いせざるを得ない状況になってしまっている患者さんもいらっしゃいます。そういった患者さんに対して、もう少し医療介入できるのではないかという思いがずっとありました。狭間の状態で苦しんでいる方々に貢献したいという思いで、クリニックを引き継ぐことを決めました。
前院長から引き継いでいきたいものは?
小学生の頃、公園でけがをした子にその場で処置をする父の姿に憧れ、医師を志しました。そんな父は「信念を持て」とよく言っていました。利益に走るのではなく、信念を持って医療に従事しなさいということだと思います。この信念は大切に守り続けていきたいですね。月水金の午前中に母が担当する内科診療も継続していきます。多くの方を診ることはできませんが、長くお付き合いのある患者さんとの丁寧な対話による、気持ちに働きかけるような診療は母ならではのものだと思っています。
ご自身が診療の際、大切にしていることは何でしょう?

医学的に放っておけない病気が潜んでいるかどうかを見逃さないことが基本だと考え診療を行っています。そのためには丁寧な問診と身体診察に加えて、詳細な画像検査を行うよう心がけています。また、患者さんに余計な不安を抱かせたくないので、根拠ある説明を心がけています。時には痛みの原因が見つからないこともありますが、患者さんの不安を思うとただ単に「原因となる病気はないですよ」とは言いたくないので、「心配はないですよ。一緒にその痛みを何とかしていきましょう」という姿勢で患者さんに向き合っています。痛みがあっても「諦めて」と言われて自分はもう治らないと思い込んでいらっしゃる方に、医療の手を差し伸べていきたいですね。患者さんの痛みに寄り添うクリニックでありたいと考えています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
クリニックの内装や体制は少々変わりましたが、地域に根差したクリニックとして貢献していきたいという思いは変わりません。より良いクリニックとなるため、院内に意見箱を設置して、広く皆さんからのご意見を募る予定です。例えば、慢性的な肩凝りをしょうがないと諦めているような方、何ヵ月も痛みに悩まされている方、いろいろなところへ行っても良くならないという方は相談してほしいですし、逆に痛みで受診したことがないという方にも気軽に来ていただける、そういうクリニックでありたいと思います。