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大道寺 崇 院長の独自取材記事

あさかぜクリニック

(横浜市港北区/新横浜駅)

最終更新日:2021/10/12

大道寺崇院長 あさかぜクリニック main

エスニック調のタイルのアクセントが効いた、清潔感あふれる院内が印象的な「あさかぜクリニック」。ゆったりと居心地のいい空間に、自然と緊張もほぐれてくる。「まずは患者さんのお話に素直に耳を傾けるよう心がけています」と、穏やかな笑顔で出迎えてくれるのは大道寺崇院長。眼鏡の奥の優しい瞳が印象的だ。じっくりと話を聞き、親身に患者に寄り添う診療に加え、女性の臨床心理士によるカウンセリングも実施。しっかり連携をとりながら、最善・最良の治療を心がけている。「ご本人、ご家族とも、『自分は病気なのか、どうか』という事にこだわり過ぎず、お困りのことを身構えずに相談してほしい」という大道寺院長に、日々の診療で感じる思いや力を入れていること、医師を志した理由や、楽しまれていらっしゃる趣味などプライベートなお話まで、たっぷりと語っていただいた。

(取材日2014年5月30日)

患者とじっくり向き合い、丁寧なカウンセリングと対話を重視した診療を実践

とても清潔感のある、居心地のいい雰囲気のクリニックですね。

大道寺崇院長 あさかぜクリニック1

ありがとうございます。当院を受診くださる方は、みなさん、心や体に不安を抱えていらっしゃる方ばかり。少しでもリラックスしてゆったりとお待ちいただけるよう、白とブラウンを基調とした落ち着いた雰囲気を心がけました。ただ、それだけでは少し寂しい感じがするかなと思い、チュニジアやメキシコのタイルを壁に埋め込んでもらってアクセントにしました。「カウンセリングルーム」や「診察室」などの表示に使っているプレートも、ほかのタイルの雰囲気に合わせてオリジナルで作っていただいたものです。居心地がいいと感じていただけたらうれしいですね。

先生は患者さんとの対話を重視されていると伺いました。

はい。私はあまり「診断をつけること」にこだわり過ぎず、「何を困って受診されたのか」を考えながら患者さんのお話をうかがうように心がけています。例えば、「気持ちが沈みがち」「何をやっても楽しくない」などの所見からうつ病と診断できる場合がありますが、それが適切ではない場合も珍しくありません。精神科・心療内科の領域では、所見をとる場合、そこに必ず医師の解釈が加わるからです。気持ちの落ち込みは双極性障害のうつ状態、認知症の初期症状などにも見られます。その場合、抗うつ剤では症状の改善はみられないはずです。こういった事を避けるために必要なのが、症状に加え、その方の生まれ育った環境と経歴、つまり生活歴です。現在の状態が、その患者さんのストーリーの一環として理解できるような情報が治療の参考になるものです。ですから私は患者さんの生活歴まで伺い、適切な診断をして、その方に合った治療をしたいと考えています。どんな場合でも、答えは患者さん一人ひとりの中にあるものです。それから、最初の診断が違っていると思えたら、私は治療方針を見直す事にしています。きちんとお薬を服用されて数ヵ月から半年後、予定通りの回復が見られないなら、診断と治療方針の再検討は必要だと思います。数ヵ月の経過を通して、最初はわからなかったことに気づくこともよくあります。そういったことをふまえ、当院では、特に初診の患者さんは臨床心理士が20〜30分掛けて予診を行い、その内容も参考にしながら、医師が診察する体制をとっています。それから、医療は独自性を強調して差別化するのでなく、スタンダードな方法で基本に忠実な診療をすることが大切だと考えています。

カウンセリングも大切にされていらっしゃるのですね。

大道寺崇院長 あさかぜクリニック2

そうですね。ただ、カウンセリングといっても、「話を聞くことに力を入れる」「話を元にアドバイスをしていく」「心理検査を前提に話をする」など、臨床心理士によっていろいろなやり方があります。もちろん、患者さんのニーズや症状に合わせるため、必ずしも杓子定規に対応する訳ではありませんが、当院の臨床心理士は私の診療スタンスとうまくマッチした、話を聞きながらアドバイスをしていくタイプです。お互いにしっかり連携し、補完し協力し合いながら診療にあたっています。例えば、医師の役割は、患者さんや周囲の方が困っている症状をお薬で緩和したり治したりすることで、臨床心理士によるカウンセリングは、その方が抱える心の問題について話を聞き、解決のお手伝いをすることだと考えています。医師による治療とカウンセリングはそれぞれ目的が違うので、併用して効果が上がるケース、医師の治療よりカウンセリングが適するケースなど、患者さんごとにさまざまです。カウンセリングが役立つような心の悩みに対し、お薬は根本的な解決にならないと思われる場合や、逆にカウンセリングを行わない方がいいと思われる場合もありますから、やはり患者さん一人ひとりに合わせた対応が必要だと思っています。

予測不可能な一人旅でリフレッシュ。異国の地で改めて人間本来の素朴さを実感

先生はなぜ医師を志されたのですか?

大道寺崇院長 あさかぜクリニック3

父が地元で開業医をしていたのですが、私にも医療分野などで手に職をつけるよう勧めてくれました。「君みたいな性格は会社勤めに向かないだろう」と。言われてみると、確かにその通りだと思いました。そうすると、改めて「資格を生かせる職業は何か?」と考えてみたところ、最も興味を持ったのが弁護士と医師でした。ただ、やはり身近に父という医師がいましたからね。その影響は大きく、最終的に医学部に進みました。精神科を専門に選んだのは……。実は、私は手術が嫌いだったのです。実習等で見学するのも嫌いでした。それで、外科には絶対に向かないと自覚していました。また、一時的に内科と迷った事もありましたが、元々歴史、地理、文化、そして人文社会に興味があった事もあり、精神科医の道を選びました。卒業後は川崎市立川崎病院や北里大学東病院など複数の病院に勤め、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医および指導医を取得しました。最近の若い先生方の世代は精神科専門医の資格を取る為にかなり困難な試験を通らないといけないようですが、私を含めてある程度以上の年代の医師は、精神科専門医は簡単な手続きと面接のみで取得できました。むしろ病院勤務時代に多くの症例を担当し、精神保健指定医の認定を得ることが出来たことは、とてもよい経験と勉強になったと思います。今でも精神科医の間では精神保健指定医を持って始めて一人前、と考えるような雰囲気があります。そのことも含めてある程度経験を積んだ後、現在のクリニックを開業しました。私は見た目よりは年をとっていますから。

海外旅行がお好きだそうですね。

そうなのです。もともと学生時代は商社に入って海外勤務をすることに憧れていたものですから、海外への憧れは昔からありました。実は、待合室の壁に埋め込んであるタイルも、中東や南米などの旅先でよく見かけ、それで気に入ったので使うことにしたのです。今でも、通常は毎年10月頃に遅めの夏休みをいただき、1週間ほど1人で旅行に出かけています。どこに行くかは、大抵、その年に読んだ本に影響されて決まります。そのせいか、旧ソ連や中東といった日本人にはあまり馴染みのない場所を中心に訪れることが多く、昨年はタジキスタン、一昨年はグルジア、その前はウクライナ時代のクリミア半島に行ってきました。いつも事前情報は必要最低限しか仕入れずに行くので、現地でちょっとしたトラブルに出くわすことは、もう日常茶飯事です(笑)。道が崩れて先に進めず小さな村に半日足止めになったり、利用する予定でいた鉄道が廃止されていたり。ですから、逆に最初から綿密な予定は立てないようにしています。日本では物事は何でも整然と進み、いつの間にかそれが当たり前になっています。でも、そうではない国に行くと、改めて人間本来の素朴さに気付かされるような気がしています。

普段のお休みはどう過ごされているのでしょう?

大道寺崇院長 あさかぜクリニック4

時間がとれるときには北アルプスなどで山登りをしてきます。これは社会人になってから始めました。もともとは大学の卒業旅行でアルゼンチンに行ったとき、大陸南端のフエゴ島のトレッキングコースを歩いた事がきっかけです。日本で似たような事をしようとしたら山登りになった、という訳です。ちなみによく、「登頂して達成感があるでしょう」と聞かれるのですが、そんなことはありません。頂上に付いた後、今度は下山しなければなりませんから。特に剱岳に登った時には下山のことを考え、頂上で暗澹たる気持ちになりました。むしろ私は登頂した時よりも下山した後、温泉に入り汗を流した時、今回も、滑落せずに下山できたと思い、ホッとします。遠足と同じで、「家に帰るまでが登山」なわけです。それから、普段は家族と一緒に過ごす時間も大切にしています。大抵は子どもの希望に合わせて引きずられるように出掛けています。

「困っていること」に親身に寄り添い、治療を終える喜びをともに感じていきたい

お薬の使い方にも細やかな配慮をされているそうですね。

大道寺崇院長 あさかぜクリニック5

はい。患者さんの中には、「さまざまなお薬が出されるのではないか」といった昔ながらのイメージで、受診前から不安に思われていたり、受診を避けたりする方も多くいらっしゃいます。しかし、現実はかなり異なっています。10年以上前から多数の種類の薬剤を併用する治療法が問題視されており、今は「なるべく少ない種類の薬での治療が望ましい」とされています。当院でも薬の種類は必要最低限、大抵は2、3種類のお薬でまとめるよう心がけています。もちろん、患者さんによってお薬に対する受け止め方も違いますから、1種類でも嫌だと思う方、逆にお薬を減らそうとすると「症状が元に戻るのではないか」と心配される方など、本当にさまざまです。ただ、私としては必要のないお薬は極力減らすように心がけており、調子が良いときにはご本人と相談の上で減薬をご提案しています。そうやってお薬の種類を絞り、経過が良好ならさらに減らし、やがてはお薬を飲まずにすむようになって治療を終える。「これで治療は終わりです」と、患者さんにお伝えできるときが、一仕事終えた気がして一番充実感があります。

心と体の健康に気を配りつつ、明るく楽しい毎日を送っていくため、読者にメッセージをお願いします。

大道寺崇院長 あさかぜクリニック6

精神科の受診は、今でもややハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、「何となく気持ちがすぐれない」というときに受診いただいて構わないのです。内科が「血圧の数値が基準値以上なら高血圧」と数値を基に診断するのとは異なり、気持ちの問題を数値で測ることはできません。ですから、ご本人やご家族が困っているかということも、精神科を受診する目安の一つだと思います。その上で、治療やカウンセリングが患者さんの役に立つ事ができれば良い、と考えています。また、私は患者さんから「他の医療機関でセカンドオピニオンを受けたい」という希望があった場合には、必ず応じるようにしています。それから、当院の臨床心理士は女性なのですが、患者さんによっては、「女性の方がなじめる」という方もいらっしゃいます。ですから、そういったご要望にお応えしていけるように、今後は女性医師の診療が受けられる体制を整えていけたらと考えています。精神科や心療内科では、他の科以上に医師と患者さんの相性というものがとても大切です。これからも親身に患者さんの声に耳を傾け、少しでもお役に立てるよう、精一杯努力していきたいですね。

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