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立山 哲也 院長の独自取材記事

オーキッド代官山クリニック

(渋谷区/代官山駅)

最終更新日:2021/10/12

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック main

代官山の目抜き通りにある「オーキッド代官山クリニック」は、アジアンテイストのリゾートホテルのような雰囲気で、リラックスできるメンタルクリニックだ。立山哲也院長は高校時代に人生の転機を迎え、苦難を乗り越えて医師になった経歴を持つ。その穏やかな物腰からは、患者の悩みを優しく受け止めてくれるような誠実な人柄が伝わってくる。薬だけに頼らず、患者の治そうという意欲を引き出し、ともに歩んでいくことがモットーだ。開業から6年を経た現状を聞いた。

(取材日2015年11月24日)

ストレスチェックの義務化で、早期受診の機会が拡大

開業されて約6年とのことですが、どんな患者さんが多いのでしょうか。

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック1

当院は認知症の患者さんは少なく、会社勤めの方たちの疾患を診ることが多いです。仕事や今後の人生に関するご相談が結構多く、最近は30代、40代の患者さんが増えたかなという印象です。上司との人間関係とか、長時間労働のこと、仕事のやりがいが感じられないといったお悩みが多く、軽度のうつ病、適応障害、発達障害、社交不安障害の方も少なくありません。

この6年間で気づかれた変化はありますか?

特定の病気が急激に増えたということはありませんが、患者さんの治療に対する要望が少し変わってきたかもしれません。なるべくなら薬を服用せず、医師のカウンセリングを受けて治したいとか、薬を飲むとしても漢方薬程度にしておきたいといった要望の方が増えてきました。私としても、できる限り薬に頼らずに、しっかりとお話を聞くことを心がけていますが、一概に薬は服用しないほうが良いとは言えません。薬物治療が必要な患者さんがそこにこだわってしまうと、病状がなかなか改善しないこともあります。本人の受け入れ可能な範囲を考慮しつつ、その病状の重篤度も踏まえて対応することが重要だと考えています。

2015年から従業員50人以上の事業所にストレスチェックが義務づけられたそうですね。

そうです。潜在的にストレスを抱えている従業員がいることに会社が気づければ、予防や早期治療につながります。本人が「もしかしたら自分はメンタルの病気ではないか」と気づいていても、家族や給与や将来のことを考えると受診をためらう人も多いのです。受診しても、「将来のキャリアに影響するので診断書は出したくない」という患者さんもいます。これを機に会社側の理解が深まれば、早期から治療を受けやすくなる面もあると期待しています。

やはり早期に見つけて治療することが大切なのですか?

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック2

「気のせいだ」「そのうち治る」と考えて治療が遅れてしまうと、さらに悪化したり、治療期間が長期化したりする可能性が高くなりますから、早めに気軽に受診していただきたいと思います。当院では病状が軽度の場合、傾聴と助言の範囲にとどめ、1回で治療終了する患者さんもいます。実は、インターネットでの初診予約状況を見ると、キャンセルをする人が多いんです。おそらく精神科の診療がどんなものかわからずに迷っているのだと思います。普通の人は私的なことを第三者に聞いてもらう経験が少ないので、恥ずかしいとか、こんなことで相談していいのだろうかとか、いろんな感情を持つと思うのですが、あまり考え込まずに来院していただきたいです。

ゆとりをもたせた予約制。必要なら時間をかけて診療

先生は少し変わった経験をして医師になられたと伺いました。

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック3

私は小さい頃はやんちゃで、ほとんど外で遊んでばかりでした。両親も勉強しろとは言わなかったので、恥ずかしながら勉強する習慣がありませんでした。それで都立高校の商業科に入ったのですが、この頃に将来は脳科学者か医師になりたいと思ったんですね。いろいろ考えた末に高校は1年で中退し、2年間勉強して大検を取得しました。勉強自体は苦にならなかったのですが、最初は独学だったので、自分の勉強の方向性は合っているのか不安になることも。途中から予備校に行って自分のレベルを確認し、先生の指導も受けて、医学部に入ることができました。この間は、傍から見れば宙ぶらりんな状態だったと思います。それでも陰で支えてくれた両親にはとても感謝しています。

精神科の医師になろうと思ったのはなぜですか?

私の場合、病人を助けて社会に奉仕したいという思い以上に、物事の本質を探求したいという思いが強かったですね。体のデータや病気のプロセスがわかったら、体の健康は取り戻せるかもしれません。しかし私たちは精神的な部分でも生きているので、精神的な回復や豊かさも大事だと思うんです。体が回復しても、それで終わりでないとも言えます。身体に障害があっても、精神が豊かであればそれを回復させたり、ありつつも受け止める力も持ち得るのではないかと思ったのです。体は傷つけられたときサバイバルしようと頑張りますが、常に100%健康でいるのは難しいことだと思います。しかし現代は、ある種の負の状態があった場合、それを持ちながらどうやって生きていくのかという視点を持てない人が多いようです。精神をうまく調整できれば、幸福感や健康の回復につながるだろうと思ったのです。

精神科の医師として臨床の現場に出て、それまで抱いていたイメージとギャップはありましたか?

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック4

ありましたね。まず驚いたのは、大学病院では新人の医師でも午前中だけで30~50人の患者さんを診療するということです。どうしても流れ作業的になってしまいますが、何時間も待っている患者さんがいますから診ないわけにはいきません。まずはその流れを知って、診察する時間が5分、10分しかなくても、少しでも気持ち良く帰ってもらうために、どういうところを工夫したら良いかを学んでいきました。ただ、もっとゆっくり時間を取って診療したいと感じたのも事実で、それが開業した理由の一つです。ですので当院では混雑するほど予約を入れず、診察時間を比較的ゆったり取っているんです。

まずは患者の話を傾聴。安心して悩みを話してもらう

患者さんと接する時に心がけていることは何ですか?

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック5

患者さんは、人間関係や将来展望、病気など、いろんな不安を抱えて来院されますから、初回はアドバイスするよりも、まず何に悩んでいるのか、とにかく患者さんの話に耳を傾けます。いきなり「わかりました。じゃあこの薬を服用してください」と言われても、患者さんのほうでは「本当にわかっているのかな」と感じてしまうと思うんです。なので、初回は「大変だったんですね。よく耐えてこられましたね」と、患者さんとの距離を縮めることができれば良いと思っています。そうやって距離が縮まれば、次からは安心して悩みを話していただけると考えています。

ところで休日は何をして過ごしておられますか?

最近は神社に凝っていて、今は「東京十社巡り」をしています。休日に一社ずつ参るような感じですね。東京の中でも神社の周囲だけは空気が澄んでいて、それぞれ特徴もありますから、そんなところが楽しいですね。

精神科の医師として喜びを感じるのはどんな時ですか?

患者さんが回復して、薬の処方も必要なくなって、離れていく時ですね。良くなって、「さよなら」と言える時が一番うれしいですね。あとは、アドバイスしたことを職場などで実践していただいて、「こういうことだったんですね」とわかっていただいた時。薬以外の方法で問題解決する方法を身につけられたということですから、とてもうれしく感じます。その延長ですが、患者さん自身が考えられた方法で「こうしたら、うまくいきました」と言われた時も、心から「良かった」と思います。必ずしも私が伝えた方法でなくても、新しいアイデア、方法を患者さん自ら身につけ、回復していくこともあるんです。だから医師が決めつけてしまうことがないように、新しい風や芽が吹いた時は患者さんのその方向を、生かせるようにサポートしています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

立山哲也院長 オーキッド代官山クリニック6

昔ほどではないにしろ、まだ心療内科、精神科の敷居が高いと感じておられる方は多いと思います。当院では、初回からいきなり多くの薬を出してといった対応をするわけではありません。普通の生活の中での助言をもらうといったかたちで使ってもらえば良いんです。躊躇する気持ちもよくわかるのですが、周りの人には相談しにくい悩みがあるときは一人で考え込まずに、一度訪ねてみてください。受診された後に、結論を出したとしても遅くはないと思います。私は医学的にふさわしい治療という視点を持ちつつも、一個人として、患者さんとともに歩むパートナーとしてご協力していきたいと思います。

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