立山 哲也 院長の独自取材記事
オーキッド代官山クリニック
(渋谷区/代官山駅)
最終更新日:2026/02/05
代官山駅から徒歩1分。八幡通り沿いに立つビルの3階で診療する「オーキッド代官山クリニック」は、心療内科・精神科を診療するクリニック。2009年の開業以来、心と体の不調を抱える多くの患者に寄り添ってきた。院内には、立山哲也(たちやま・てつや)院長が長年収集してきたアジアンテイストのインテリアやオブジェが並び、非日常と癒やしが共存するリゾートホテルのような空間が広がる。診療では薬物療法と薬を使わない精神療法のバランスを重視し、まずは睡眠や食事といった生活リズムの立て直しから取り組むことが多いという。「患者さんが自らの力で回復をめざすプロセスを大切にしています」と語る立山院長に、これまでの歩みやクリニックの特徴、患者への思いなどを聞いた。
(取材日2025年11月28日)
働き盛りの世代を中心に、さまざまな心の不調に対応
2009年の開業だそうですね。

はい。開業前は主に横浜市内の大学病院や総合病院の精神科に勤務していました。病院では複雑な病態を持つ患者さんを診る機会もあり、大きなやりがいを感じていましたが、その一方で時間に追われ、じっくりお話を伺うことが難しい場面も少なくありませんでした。そんな中、東京・青山にあるメンタルクリニックに週1回、非常勤で勤務していた時期があり、患者さん一人ひとりに丁寧に向き合える診療スタイルに魅力を感じるようになったのです。この経験が、開業を意識する大きなきっかけになりました。当院では予約制を採用しており、できるだけゆとりを持てるように診察時間を確保するよう心がけています。また、事前にお伝えいただければ、診療時間に関して、可能な範囲で調整することもできますので、お気軽にご相談ください。
代官山で開業されたのはなぜですか?
いろいろと候補はあったのですが、一つには、横浜市内の病院や青山のクリニックで診ていた患者さんが比較的アクセスしやすい場所だと考えました。渋谷駅周辺では、人の多さや落ち着かない雰囲気もあり、もう少し静かでアクセスの良いエリアを探して代官山に行き着きました。あまりアクセスに時間をかけずに、仕事帰りや買い物の途中でも、近くで立ち寄れるような場所にクリニックであり、それでいて少し落ち着いたところを選択しました。
どのような患者さんが多いのですか?

当院は20歳以上の方が中心となりますが、ご高齢の患者さんも来られます。多いのは30〜40代の働き盛りの世代です。特に仕事のストレスや職場での人間関係に悩む方が多く、これまで働き盛りの世代を診てきた経験から、職場のメンタルヘルスに関してはお役に立てるのではないかと思います。また、私自身が高校を1年で中退し、今後の生き方を悩んでいた時期が長くあります。多くの情報がある中で、どう選択し、どう生きていくか、迷いや困難をどう乗り越えていくかということに関して、少しでもお役に立てたらという思いがあります。誰しも道に迷うことはありますが、そんなときにどこで真摯に向き合い、踏みとどまり、どう立て直すか。その過程を少しでも支えられればと考えています。少しでも「次につながる」「この先に光が見える」と感じていただけるよう、対話を通じ、患者さん一人ひとりが自分らしく生きる力を育める診療をめざしています。
薬物療法に偏りすぎず、自分らしく生活できるよう支援
具体的にはどのような症状を訴えて受診する患者さんが多いのでしょうか?

眠れない、食欲が落ちる、不安感やイライラが強くなるといった症状を訴える方が多いですね。診察では、まずご本人がこういった症状は何が原因だと思っているのかを丁寧に伺うところから始めます。その上で、お仕事などの生活状況やご本人の性格傾向、ご家族の影響、家族歴や病歴など、背景となり得る要素についてもお話を聞いていきます。ご自身では仕事のストレスが原因だと思っていても、実は別の要因が潜んでいたり、他の病気が関与していたりする場合もあります。ご本人のお話をしっかり伺った上で、さまざまな要因を仕分けし、整理しながら、症状の背景を一緒に探っていくことを心がけています。
どのような治療を行っていくのですか?
治療内容は病状によって異なりますが、なるべく薬に頼らずに改善したい、服用する場合でも漢方薬にとどめたいと希望される方は多くいらっしゃいます。そうしたニーズも踏まえ、当院では薬物療法に偏りすぎず、自分の力で良くなろうとする「自然治癒力」を引き出すための治療を心がけています。患者さんが「こうしてみたい」「この方法で進めたい」と考える方向性を尊重しつつ、その一方で専門的な立場から病状や性質を踏まえた治療法をご提案します。ただ、物事の捉え方や考え方を急に変えるよう働きかけても、すぐに受け入れられるとは限りません。長年積み重ねてきた、ご本人の価値観を、医師の助言や指導だからといって簡単に受け入れ、変えることは難しいです。また、それが、またすべて正解とも限りません。そのため、まずは取り組みやすい生活面、例えば睡眠リズムの調整や食事の偏りといった部分から改善を図ることが多いですね。
治療の際、心がけていることはありますか?

精神科の病気は完治が見込めないと思われがちですが、中には正社員として安定して働いている方もいらっしゃいます。それは、長い経過の中でご自身の特性や性格を理解し、体調を整える方法を時間をかけて身につけてこられた成果であることも大きいです。薬に頼りすぎず、様子を見ながら少しずつ薬を減らし、安定した生活を送れるようになることも期待できます。ですから、教科書的な治療や強い介入で無理に病気を抑え込むことを図るより、患者さんが納得でき、生活の質を落とさないよう治療することを心がけています。「この範囲なら、大丈夫」というストライクゾーンを患者さんと一緒に見つけ、見守りながら長い目で支えていければと思っています。
睡眠・食欲の乱れは心の不調のサイン。早めに受診を
精神科の医師になろうと思ったのはなぜですか?

大学に入った当初は、脳や意識といった領域に興味があり、研究者の道に進むことも考えていました。しかし次第に、精神的な回復や人生の豊かさといった側面に関心が移っていきました。例えば、誰にでも大きな病気やけがをするリスクはあるわけですが、同じ状況に陥っても、時間をかけて現実を受け入れ前向きに生きる方もいれば、長く気持ちが沈んでしまう方もいます。どうにもならない状況の中でも、どのように生き抜く知恵や姿勢を身につけていくのか――そこに強い興味を抱いたことが、精神科を志した原点です。困難な状況にあっても、その人が自分らしく前を向けるよう支えていくことが、精神科医としての大切な役割だと考えています。ただ、今でも鍛錬を続けている日々です。
診療でお忙しい中、どのようにリフレッシュされているのですか?
時々旅行に出かけて気分転換をしています。東南アジアの方面に出かけることが多いです。院内には、旅先で購入したオブジェなど飾っています。こうしたアジアの文化を感じるものに触れると、言葉では説明しづらいのですが、心が落ち着いたり、癒やされたりするので、自分にとって良いリフレッシュになっていると感じます。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

受診のタイミングを迷う方も多いと思いますが、眠れない状態が1~2ヵ月続くようであれば、早めに相談していただきたいですね。睡眠が乱れると自律神経の不調や日中の集中力・気力の低下につながり、心の不調をさらに悪化させてしまいます。また、食欲の変調も大切なサインです。食べすぎや食欲低下によって栄養状態が崩れると、脳の働きにも影響が出てきます。睡眠と食欲がどちらも乱れている場合は、できるだけ早いタイミングでの受診をお勧めします。特に睡眠は、心身の健康を守る「砦」のようなものです。眠れない=メンタルの不調とは限りませんが、選択肢の一つとして心療内科や精神科の受診を頭の片隅に置いていただければと思います。

