松本邦夫 院長の独自取材記事
松本歯科医院
(世田谷区/用賀駅)
最終更新日:2021/10/12
用賀駅から徒歩1分。バスターミナル横にあるビルの2階にある「松本歯科医院」には、遠方からもクチコミで多くの患者が訪れるという。その理由は、マイクロスコープによる高度精密治療にある。松本邦夫院長は、全国各地でセミナーや講演を行っているマイクロスコープ治療のエキスパート。クリニック内には、治療に使用するメインユニットだけでなく、歯科衛生士用のユニットにまでマイクロスコープが備えられている。「マイクロスコープを使った治療が、いかに正確に、いかに精密に行われるか、患者さんの目で確認して実感していただけます」と語る松本院長は、穏やかな口調で丁寧にわかりやすく説明をしてくれる。スタディグループ『東京SJCD(Society of Japan Clinical Dentistry)』の理事としても精力的に活動している松本院長に、クリニックやマイクロスコープ、東京SJCDなどについてお話を伺った。
(取材日2013年4月1日)
新しい技術や知識を学ぶことが、歯科治療への姿勢を変えた
歯科医師になろうと思った理由を教えてください。
実は、大きな理由もないまま日本大学松戸歯学部へ進んだんです。学生時代はどちらかと言えば、勉強よりサーフィン部の活動に一生懸命でした。サーフィンと言うと軟派なイメージを持たれやすいのですが、私たちは真剣にこのスポーツに取り組んでいましたし、上下関係も厳しくて硬派なクラブ活動だったんですよ。とにかく学生時代はサーフィンに夢中でした。今でこそ私は「歯科治療が趣味」と言い切れるほど歯科医師という仕事に打ち込んでいますので、学生当時を知る同級生たちは、「あんなにサーフィンばかりしていたお前が……」と驚いているくらいです(笑)。自分でもこんなに歯科医師という仕事が素晴らしいものだとは思ってもみませんでした。
歯科医師という仕事の素晴らしさに気付くきっかけはなんだったのですか?
サーフィン部の先輩、同級生、後輩たちとは今も交流が続いていて、特に先輩には相変わらず大変お世話になっています。諸先輩方は今の歯科界において主要な組織の長になっている方も多く、私を取り巻く環境は本当に恵まれていると思います。卒後すぐに、『とにかくお前も勉強しろ』と、当時はまだメジャーではありませんでしたが勉強会に誘って頂いたことが、今の私のスタートでした。その後も多くの先輩より親身になっていろいろアドバイスして頂きました。40才を過ぎた頃、ある先輩より『東京SJCD(Society of Japan Clinical Dentistry)』に誘っていただいたのです。何となく臨床がマンネリ化してきた時期に、さらに勉強をしてみようと奮い立たせてくれたのです。40才を過ぎてから本気で勉強するのは、やや遅かったかもしれませんが、当時はがむしゃらに新しい知識を身につけようと必死でした。東京SJCDに入会したことがきっかけで、私の歯科治療に対する姿勢はガラリと変わりました。歯科治療が楽しくてたまらなくなったのです。その先輩には、本当に感謝しています。その後もいろいろなチャンスをいただきながら、走り続ける今となっています。
東京SJCDについて詳しく教えてください。
東京SJCDとは、歯科のスタディグループで、常に情熱を持ちながら診療に携わる歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士らの集まりです。基本理念として、アカデミックフリーダム・グローバルスタンダード・インターナショナルインタラクションを掲げ、日々研鑽を続けています。国内外からの最新の情報をいち早く得る事が出来るだけでなく、それを実践する多くの会員の姿勢は、更に回りに波及しとても刺激的な環境にあります。そこで、吸収した知識や技術を実際の治療に生かし、患者さんの笑顔が増える度に、歯科治療が俄然楽しく、益々やりがいのあるものに感じられます。尊敬する先輩方から、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。今では私も理事の一人として活動に参加させていただいています。自分が学んだ多くのことを若手のメンバーに伝えることで東京SJCDに恩返しができたらと思っています。
マイクロスコープの使用が、より正確でより精密な治療を可能にする
マイクロスコープを使った治療がお得意だと伺いました。
今ではそんなには珍しいものではなくなりましたが、私が初めてマイクロスコープに触れたのは、2002年頃だったでしょうか。マイクロスコープとは、歯科治療用に開発された顕微鏡のことです。お口の中は暗いですが、光を照射しながら、患部を2〜24倍に拡大することができます。マイクロスコープがない状態での治療は、経験と勘が多くものを言います。今まで手探りで行っていた治療を、はっきり目視しながら行うことができるのです。私は、以前から5倍のルーペ(拡大鏡)を使って治療をしていたのですが、マイクロスコープを使用したときに、「ここまで高度で精密な治療が可能になんだ」と驚きました。それ以来、マイクロスコープを導入し、ルーペを併用しながら治療を行っています。10年以上マイクロスコープを使った治療に携わっていますので、今ではインストラクターとして勉強会に呼ばれたり、講演を依頼されたりすることが多くなりました。
口腔内を拡大することで精密な治療が可能になるのですね。
たとえば、虫歯の部分を削る際も、マイクロスコープを使えば、必要な箇所だけを削ることができます。健康な部分を極力残すことができるので、歯に過度なダメージを与えずに済みます。また、当クリニックでは、精密根管治療に力を入れています。歯の中の神経があった部分が細菌感染してしまった場合、根管内の細菌を完全に取り除くことは、非常に高度なテクニックが必要になります。根管治療は、適切な治療を行わなければ再治療の確率が高く、抜歯に至ることもしばしば見受けられます。しかし、マイクロスコープ下で原因を究明し、勘に頼らず正確に丁寧な治療を行うことで、高精度な根管治療を行うことができます。
マイクロスコープで見た患部の様子を患者さんが実際に見ることもできるのでしょうか。
ご希望の場合は患者さんにフェイスマウントディスプレイを装着していただくことでご覧いただくことができますが、通常治療前後の確認のためにはモニターに表示した画像や映像を使用します。治療の前にまずマイクロスコープで撮影した歯の様子を確認していただき、その上でどんな治療を行うのかを似た症例の画像を使いながら詳しく説明します。治療後は、どんな治療を行ったか、治療によりどのような状態になったかも確認していただきます。これにより、患者さんご自身の歯の治療の様子をダイジェストで把握してもらうことができ、治療前・術中・治療後の様子をわかりやすく伝えることができるのです。また、当クリニックでは歯科衛生士もマイクロスコープを使ってチェックや処置を行っています。このようなクリニックは、まだ少ないのではないでしょうか。
グローバルスタンダードな治療を日常臨床と出来るような環境をめざす
先生にとって、マイクロスコープとの出会いは大きかったのですね。
本当に大きいですね。マイクロスコープの画像は患者さんご自身の歯のことを理解していただくのに役立ちますが、同時に歯科医師の技術も問われます。自分の技術があらわになるプレッシャーはありますね(笑)。また、マイクロスコープを使わなくても高度な治療をしている歯科医師もたくさんいます。ただ、どんなに優秀な歯科医師でも、肉眼での治療には限界があります。マイクロスコープを使うことで、これまで治すことができなかった患者さんを救えることに喜びを感じています。
ご趣味や健康のために気を付けていらっしゃることはありますか?
趣味は、歯科治療です(笑)。クリニックでの診察以外にも東京SJCDの活動や講演、セミナーなどがあり、ほとんど休みがない状態なので……。でも、何よりも疾患を確実に治せるようになり患者さんが喜んでくださるのが楽しくてたまらないのです。引退して歯科治療ができなくなったら、どうすればいいのかなあ(笑)。健康のためには、なるべく歩くことを心がけています。あとは食べ過ぎないよう気をつけさらに週の半分は休肝日を作り、そしてよく眠るようしていますね。
今後のクリニックの展望を教えてください。
そうですね。今後もさらに良質な治療を心がけその確実性を上げて行くことでしょうか。グローバルスタンダードとされる治療をルーティーンでおこなう、そんな歯科治療を実現させたいです。最近のマイブームは「エルビウムヤグレーザー」です。このレーザーの波長は様々な歯科治療に有効で、臨床レベルを上げてくれる非常に優れた器械です。まだ導入して1年程度なのですが、既存の使用方法に留まらずメーカーと協力しながら新たな使用方法を模索しています。様々な手技を駆使しておこなわれた実績を基に、患者様に対応させて頂くだけでなく、多くのドクターの目標になれるよう精進していきたいと思っています。特に東京SJCDの活動には力を入れ後進を育てていきたいですね。
ドクターズファイルの読者にメッセージをお願いします。
まずは歯で気になることがあったら、クリニックに相談にいらしてください。歯が痛い、冷たいものがしみるなどの治療に関すること以外にも歯科医師が対応できることはたくさんあるはずです。なんでも結構です。歯科治療にはさまざまな方法があり、最良と思われる解決策を提案させてもらいます。私で無理そうな場合は、知り得るネットワークより適切なドクターをご紹介致します。きっとお役に立てると思いますよ。