小川 真彦 院長の独自取材記事
しらかば歯科クリニック
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日:2021/11/30
藤沢駅から車で10分ほど、大鋸の静かな住宅街に「しらかば歯科クリニック」はある。歯科予防先進国フィンランドの象徴であり、虫歯予防に活用されているキシリトールの原料にもなるシラカバを冠し、2008年の開院より一貫して予防歯科に注力する歯科医院だ。白と緑を基調とした院内は、居心地の良い空間になっている。バリアフリー対応で、車いすやベビーカーのまま半個室の診療室へのアクセスも容易だ。「悪いところを取り除けばOKという治療では、根本的な原因を除去することはできません。お口への意識を変えて環境を整える、“ケア”こそが必要なのです」と語るのは小川真彦院長。予防により再発しないような口腔内環境をめざす同院のスタンスやさまざまな取り組みについて話してもらった。
(取材日2021年8月24日)
予防を軸に「患者ファースト」の診療を実践
特に予防に力を入れていらっしゃるとか。
悪い部分の治療さえ終われば良いという従来的な診療では、虫歯や歯周病の根本的な原因除去には至りません。治療に加えて、患者さんのお口の環境を整える予防ケアが重要なのです。当院では「歯磨き」「フッ素」「キシリトール」「間食のコントロール」「定期検診」の5つの柱をバランスよく実現するための診療や指導を行っています。
予防を軸とした診療を実践されることになったきっかけとは?
「患者さんファースト」を実践しようとすると、自然に予防ベースになるのです。虫歯治療とは、悪い部分を削って人工物で歯を補うだけの「修理」で完了するわけではありません。修理した部分がまた壊れるというのもよくあることで、放っておくといずれ同じ「修理」が必要となり、繰り返すことで歯を減らしていくことにもつながってしまいます。本当に「治った」といえるのは、虫歯ができる原因がなくなったときでしょう。つまり、お口の中の環境を整えて、虫歯にならない状況をつくりあげてこそ、初めて虫歯治療が完了したといえると考えています。この環境の改善こそが「予防」であり、当院が治療において一番大切に考えているところです。
フィンランドでも学ばれてきたそうですね。
フィンランドを訪れ、保健センターの視察やキシリトールの専門家のセミナーへ参加するなど学びを深め、キシリトールを中心とした虫歯予防の重要性を再確認してきました。コロナ禍の今は現地に赴くことは難しい状況ですが、オンラインで学びを続けています。フィンランドでは虫歯予防にキシリトールを取り入れる大切さが、大人から子どもまで幅広い世代に普及、定着しています。日本でもキシリトール製品の存在は当たり前になりつつありますが、その予防的活用については正しく普及、定着しているとは言い難い状況だと感じています。改めて、キシリトールを活用した虫歯予防の重要性を伝えていくべきだと感じています。
キシリトールや定期検診など、5つの柱で予防ケア
キシリトールはどのように使うのが良いのでしょうか?
歯磨き粉やタブレットなどに活用されているキシリトールですが、効率的といわれているのがガムによる摂取です。キシリトールが多く含まれるガムを、食後や寝る前などに噛むことを習慣づけるのがいいでしょう。キシリトールには甘みがありますが、この甘みを口中に残すことが重要で、キシリトールのみの甘みのガムであれば、噛んだ後にうがいなどは特に必要ありません。そのまま寝てしまっても大丈夫ですから、歯磨きが苦手なお子さんなどにも取り入れやすいのではないでしょうか。日本では、ブラッシングによる物理的クリーニングが最重要という考え方が根強いですが、フィンランドでは学校や幼稚園などで食後にキシリトールガムが配られるなど、虫歯予防にキシリトールを取り入れることが当たり前に根づいています。日本国内でも幼稚園や保育園にキシリトールタブレットのサーバーを設置して、食後の習慣として定着させる取り組みを進めていく話もあります。
定期検診ではどのようなことをするのでしょうか。
お口の中のチェックと問診をして、大人の場合は歯周ポケットの深さを測定し、前回値と比較して歯周病の進行状況を確認。子どもの場合は歯と歯の間などの見えない部分に虫歯が潜んでいることがあるので、年に1回はエックス線を撮って確認します。初期の虫歯でリスクがあるけれどまだ削る必要がないというときは、継続的にその部分の変化を診て、治療を検討します。こうした検診を3ヵ月に1回程度行いながら、キシリトールやフッ素の活用や歯磨きなどホームケアの指導を並行して行います。意外に見落とされがちなのですが、間食コントロールについても指導します。虫歯予防のためには間食は量より食べ方を見直すことが大切。だらだら食べ続けるのではなく、けじめをつけて食事を取るよう、指導することが多いですね。
新たに導入された治療などはありますか。
少し前に歯科用CTを導入し、より精密に行っていくことが可能になりました。また、ニーズの高まりを受けて、マウスピース型装置を用いた矯正も導入しました。従来のワイヤー矯正の場合は、痛みや違和感を感じたり、歯磨きが難しいために継続していくのが難しい場合が多くありました。近年、歯列矯正技術の進歩は目覚ましく、取り外し可能なマウスピース型装置を用いた矯正も広まってきています。患者さんの身体的・精神的な負担を抑えながら、さまざまなケースに対応できるようになってきています。以前からマウスピース型装置を用いた矯正には取り組んできていたのですが、当院でも最近、この診療に注力するようになっています。歯を引っ張り出したり、回転させたりといった従来の装置では難しかった歯の動かし方にも対応できるようになっていますよ。
口腔環境を整える予防意識を次世代へとつないでいく
最近、注目している技術もあるそうですね。
「歯の細胞バンク」という新たな歯科医療技術に注目しています。これは、歯の細胞を培養して、将来、再生医療につなげていこうとする取り組みです。虫歯の処置などをしていない健康な歯を抜歯した際に、その細胞を研究機関に送って、そこで処置を施して培養しながら、保存していくものです。歯の細胞というと歯の再生と思われるかと思いますが、歯だけではなく、体のあらゆる臓器の再生に使うことを目的にしているんですよ。この医療技術が将来、通常の治療法として実現されるようになっていくのかは、研究段階のためわかりませんが、歯の細胞は今後いろいろなものに分化する、そういった可能性があるということですね。
さまざまな視点から予防歯科に取り組んでいらっしゃいますね。
そうですね。歯を守ることは患者さんの人生の楽しみを守ることにもつながる、という思いがあります。そうした考えに共鳴してくださる予防意識の高いお母さん方の影響で、お子さんの受診も増えています。当院は小児歯科や大人の一般歯科、インプラント治療、矯正歯科まで幅広く対応するのに加え、「マイナス1歳からの虫歯予防」として、妊娠中のお母さんへの予防的な診療にも力を入れているんですよ。生まれる前の、赤ちゃんがおなかにいる段階から、虫歯ができる悪循環を断っていくのがわれわれ歯科医師の役目。すべての歯を一生大切に使っていただけるように、皆さんの意識改革のお手伝いをしていきたいと思っています。誰もが安心して受診できるよう、ベビーカーや車いすのままユニットへ入れるバリアフリー設計を取り入れ、駐車場もご用意しています。お子さんからご高齢の方まで気軽にご来院いただきたいですね。
今後の展望と抱負をお願いします。
マイクロスコープの導入を考えており、近くスコープの取りつけが可能なユニットへの入れ替えを考えています。マイクロスコープを用いると、裸眼では見えないものが見えるようになります。歯の根の治療などにおいて、治療の精度をぐっと向上させていくこともできるでしょう。治療の精度を高めていくということは、再発のリスクを抑えていくことにもつながります。これからも精度の高い治療とお口を守るケア、そしてアドバイスで、再発させない、良好な口腔環境を維持させていくお手伝いをしていきたいと思っています。開院から13年目を迎え、最初は小さなお子さんだった方が親世代となり、お子さんを連れていらっしゃるケースも増えました。一貫して伝え続けてきた予防の重要性が次世代に受け継がれていると手応えを感じる瞬間です。当院の患者さんを守ることに加え、社会を変えるようなアプローチも続けていきたいと考えています。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/44万5000円、マウスピース型装置を用いた矯正/65万5000円、インプラント治療/2次オペまで 23万9000円、唾液検査/4800円~(虫歯のリスク検査)
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。