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渡辺 剛 院長の独自取材記事

渡辺緩和ケア・在宅クリニック

(京都市左京区/元田中駅)

最終更新日:2020/04/01

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叡山電鉄叡山本線の元田中駅を最寄り駅とする閑静な住宅地の一角に「渡辺緩和ケア・在宅クリニック」はある。院長を務めるのは、日本消化器病学会消化器病専門医であり、食道がんを専門に臨床と研究で研鑽を積んだベテランドクター、渡辺剛先生。これまで、京都大学医学部附属病院、滋賀県立成人病センター(現・滋賀県立総合病院)、日本バプテスト病院ホスピス病棟に勤務。2009年にバプテスト在宅ホスピス緩和ケアクリニック院長に就任し、その事業を継承して2016年に開業。以来、住み慣れたわが家での生活を望む患者とその家族を365日24時間体制でサポートしている。患者自身の痛みを取り除くことだけでなく、支える家族の心のケアにも注力する渡辺院長に緩和ケアに対する思いを語ってもらった。
(取材日2020年1月16日)

患者一人ひとりの価値観に合わせて苦しみに寄り添う

先生が緩和ケアに目を向けられたきっかけは何ですか?

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研修医時代に担当していた患者さんががんの痛みで苦しんでいたのですが、その患者さんに、痛みを取る緩和ケアを行ったんです。その後、患者さんのご家族が「こんなふうに最期まで過ごせると思わなかった」と感謝してくださって、その経験が緩和ケアへの興味につながっているのだと思います。もともとは食道がんを専門に外科一色の生活をしていまして、食道がんの患者さんを数多く診させていただいたのですが、その中には退院できない人も少なからずおられました。そういう状況を見るにつけ、がんの患者さんに対してベストなケアをするためには、外科医師だけでも内科医師だけでもだめだと感じていたのです。治療だけを優先するのではなく、患者さんの苦しみにまで寄り添う緩和ケア的な発想が患者さんにとって必要なのではないかと考えるようになりました。

その後、実際にホスピス病棟に勤務されていますね。

それまではホスピスに患者さんを送る立場でしたが、「ホスピスに行って良かった」という患者さんの声を耳にすることもあって、やはりこういう場所は大切なのだと感じていました。日本バプテスト病院のホスピス病棟では、外科部長の肩書で勤めていましたが、実際に手術をしたのは数回で、基本的にはホスピス病棟で患者さんを診させていただいていました。そうした中で、ホスピスケアが家でもできるのが理想的だと考えるようになったのです。私は本当に恵まれていて、その考えを理解していただき、一つの事業として「バプテスト在宅ホスピス緩和ケアクリニック」をつくっていただきました。その後、事業継承というかたちで当院を開業したというわけです。もともと「緩和ケアというのはがんだけではなくて、亡くなるすべての方のため」という思いがあったので、開業に合わせて対象を広げ、神経難病や慢性心不全、認知症にも対応するようになりました。

緩和ケアに対する先生の思いをお聞かせください。

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がんの患者さんに関して言えば、治る方もいる一方で残念ながら治らない方もいます。ですが、たとえ治らないとしても「生きている間は楽に過ごしていただきたい」という思いがあります。患者さんの考え方はさまざまで、いろいろな症状が出てくると「ボタンを押せばすぐに看護師さんが来てくれるホスピス病棟のほうが安心」という方もいれば、「1時間くらいで看護師さんが来てくれるなら好きにできる家で過ごすほうが良い」と考える方もいます。もちろん、考えが途中で変わることもありますし、実際にやってみないことにはわからないことも多くあります。そういう時でも場所を問わずに症状をカバーすることができるということが大切です。そういう意味では、緩和ケアというのは患者さん一人ひとりの価値観に合わせて対応できることが大きな強みだと思います。

後悔を残さないために家族のケアにも注力

どのような方が在宅での緩和ケアに向いているとお考えですか?

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患者さんご本人が「家にいたい」という気持ちを持っていることが重要です。例えば、患者さんの中には本当は家で過ごしたいのだけれど、家族に気を使ってそれが言えずに入院を選択される方もいます。ですから、まずは実際に中心になってお世話をされているキーパーソンとなる方と患者さんとでしっかり話し合いをして、その時々で最適な場所を意思決定しながら過ごしていただきたいと思います。そういう意味でも家族のケアというのはとても大切ですね。「私には在宅ケアは絶対にできない」とおっしゃるご家族の方に自信をつけていただけるようなサポートが必要です。ご家族には、最期の時間を一緒に過ごしたというかけがえのない経験をしていただきたいと思います。

訪問診療の際に心がけていることは何ですか?

訪問診療は多いときで1日に8、9軒ほど回ります。症状に問題のない方は20分ほどの時間ですが、痛みや症状に問題があるときや、気持ちの面でつらさがあるときなどは、1時間以上じっくりと時間をかけてお話を伺うようにしています。夜中など時間外に電話がかかってくることもあるのですが、ご家族の方にとってわざわざ私たちに電話をかけるということは決して気軽なことではありません。それでも電話がかかってくるということはよほどのことですから、その時には電話口で済ますのではなく、時間が遅くても必ず家まで伺うようにしています。ご家族の方にも、「後悔を残すことがあってはいけないので、遠慮なく呼んでください」とお伝えしています。

スタッフの方に対する思いもお聞かせください。

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現在は日本看護協会緩和ケア認定看護師が1人と、緩和ケアの専門知識を学んだ看護師2人で患者さんのサポートをしています。看護師に限らず医療に従事する者というのは、技術だけでなくマインド、知識の3つがそろっていなければいけないと思うのですが、当院のスタッフは緩和ケアに対する理解だけでなく、患者さんにしっかり寄り添うことができていると思います。365日、24時間体制で対応ができているのは、彼女たちの活躍が大きいですね。実際の訪問看護で、困っている人や症状の重い人に対してじっくり時間をかけて臨機応変に診ることができていると思います。

緩和ケアの可能性を最大限に生かしていく

患者さんやご家族の方と接する際に、どのような点に気をつけていますか?

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「1訪問、1笑い」ということです。まずは笑いを取って場を和ませるところから始めるように心がけています。家にお邪魔していきなり病気の話をするのではなく、世間話的なことから始めることが患者さんやご家族にとっては良いのではと思います。また、在宅療養というのは患者さん本人よりも、お世話をしているご家族の負担がどうしても大きくなってしまうので、そのご家族を慰労することを忘れないようにしています。その際には、ご本人に直接お伝えするのではなく、患者さんに向けた言葉で間接的にお伝えするようにしています。「奥さんがいてくれて助かるね」、「お母さんがいて良かったね」という感じでお声がけすることで、患者さんからご家族への感謝の言葉が出てくるのです。その言葉で、ご家族はまた頑張ることができるのだと思います。

緩和ケアを利用するタイミングについてお聞かせください。

少なくとも再発がある場合にはできるだけ担当医のほうから緩和ケアを紹介していただきたいですね。治療をしている先生からすると、ホスピスを紹介するということに抵抗があるという方も多いかもしれませんが、私も「治療をしながらの緩和ケア」というものを推奨しています。「治療ができないからホスピスに行ってください」というのではなく、症状が出始めた時から「こんな医師がいて話を聞いてくれるし、いろいろな相談に乗ってくれますよ」と紹介していただくのが理想的です。そうすることが結果的に治療にあたっている先生の負担軽減にもなると思っています。私たちがカバーできる部分を私たちに任せていただくことで、先生は治療に専念することができると思います。

読者へのメッセージをお願いします。

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緩和ケアは決して看取りをするためだけのものではありません。緩和ケアに対して抵抗感を持っている方も多いのですが、実際に病院でバリバリ治療をしている方が、ここに立ち寄って30分ほど話をしていくだけで「気分が紛れる」とおっしゃる方もいます。一人ひとりのニーズに合わせた治療との組み合せができるのが緩和ケアのメリットですので、患者さんご自身はもちろん、家でお世話をされているご家族の方が困っている場合には、ぜひお気軽にご相談していただければと思います。

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