山口 壮 院長の独自取材記事
山口医院
(大田区/大岡山駅)
最終更新日:2024/12/09
大岡山駅から徒歩7分、閑静な住宅街の一角にある「山口医院」は、1932年の開業以来、90年以上地域に寄り添った医療を提供し続けているクリニックだ。3代目となる山口壮(つよし)院長は、脳神経外科を専門に長年研鑽を積んだスペシャリスト。その豊富な経験に加え、各科専門の医師との協働で、内科・脳神経外科・整形外科・外科・肛門外科・リハビリテーション科と多様な診療科に対応している。外来と訪問診療を軸に、訪問歯科やリハビリデイサービスにも注力する同院。先代のモットーである「地域のかかりつけ医として患者さんのどのようなニーズにも応えたい」という思いを継承し、幅広く対応する診療体制を守り続けている。そんな同院の歴史や特徴、今後の展望について、穏やかな語り口と優しい笑顔が印象的な山口院長に話を聞いた。
(取材日2024年9月17日)
祖父と父から受け継いだ古き良き医療体制
まずは、クリニックの歴史と特徴をお聞かせください。
当院は1932年に、先々代院長である祖父が開業したクリニックです。当院の特徴は、やはり90年以上にわたって地域に根差した医療を提供し続けてきた歴史でしょう。先代の父からは、医師として多くの影響を受けました。当院は長年にわたって、子どもから高齢者までさまざまな世代の主訴に対応するため、知識を深めたり、他院の経験豊富な医師に協力してもらったりなどして幅広い領域を診てきました。また、患者さんが訴える症状はもちろん、生活背景や別件の悩み事・相談事についても、寄り添い丁寧にお伺いする姿勢を大切にしています。そんな古き良き地域医療を、私自身も発展させながら受け継いでいます。
山口院長が多くの影響を受けたというお父さまは、どのような医師だったのでしょうか?
父は患者さんが困っていれば、昼夜問わず診療を受け入れたり、往診に出かけたりする昔ながらの町のかかりつけ医でした。私が子どもの頃、患者さんから連絡が来るとすぐに診療に駆けつける姿が今でも記憶に残っています。また、父は私への指導は厳しかったのですが、誰に対してもとても優しくてフレンドリーな人でもありました。85歳まで現役だったこともあり、89歳で亡くなった際には300人以上の方が葬儀に参列してくださりました。多くの方が涙する様子を見て、父がいかに地域に根づいた医師だったかをあらためて感じました。私も教わったことを大切にしながら、父のような医師をめざそうと思っています。
現在の診療内容や、設備・機器について教えてください。
私の専門である脳神経外科では総合病院で培った臨床経験を生かし、内科・整形外科・外科・肛門外科・リハビリテーション科などには、各分野のベテラン医師たちを配しています。脳神経外科は私が診療を担当していますが、同じ脳神経外科の医師である息子が1ヵ月に1回程度診療に参加してくれています。また、リハビリでは理学療法士がレベルの高いリハビリに努めてながらリハビリのデイサービスにも力を注いでいますし、新たに診療科に加わった歯科では舌や口の周りの筋肉をストレッチするパタカラ体操なども行っています。設備面の特徴は、クリニックとしては比較的精密な検査ができるよう内視鏡、CTスキャン、超音波装置などを備えていることです。また、より高度なレベルの適切な医療機関への紹介、あるいはリハビリテーション科への逆紹介などがスピーディーにできるよう、多くの病院と連携していることも特徴の一つです。
聞く姿勢を大切に、スポーツ医学や訪問診療にも注力
外来だけでなく訪問診療にも注力されていると伺いしました。
父の代から多くの患者さんを診させていただいておりますが、中には高齢になり来院が難しくなった方もいらっしゃいます。そのような方も最後まで責任を持って拝見させていただきたいと思い、訪問診療にも注力しております。医師、看護師、事務の3人でチームを組み、複数のチームが高齢者施設や居宅を訪問するのですが、皆がしっかりと患者さん情報を共有し、お互いに協力し合うことでスムーズな訪問診療が実現できています。そんな中、特に高齢者の場合、医食同源や肺炎のリスク軽減の観点より、2023年8月から歯科医師にも在籍してもらい、訪問診療での歯科診療の提供を始めました。歯科医師が嚥下評価や食事形態の判断なども行い、医科と歯科が同じクリニック内でタイムラグなく情報の共有ができ、迅速に対応できるようになりました。
スポーツ医学も先生のご専門の一つだそうですね。
ボクシング界のスポーツ医学に長年携わってきました。ボクシングとの出会いは、医学部受験の真っただ中の高校3年生の頃です。塾へ向かう途中にあったボクシングジムに興味を惹かれ、かっこ良さに魅了されました。勉強に飽きた時など、親に内緒でこっそりとジムに行っていましたね。浪人時代も勉強しながらジムに通い、無事に医学部に合格した後は、大学のボクシング部に入り熱中しました。大学卒業後、ボクシング部OBから連盟を通じて「リングドクター」としてお誘いを受け、ボクシングと一層深い関りを持つようになりました。当時アマチュアボクシングではその医療体制やルールが定まっていなかったので、ガイドラインの整備やリングドクターの育成にも尽力するなど、多様な経験をさせていただきました。
患者さんと接する際に心がけていることは何でしょう?
開業医の基本は「見る、聞く、触る」だと考えており、患者さんとのコミュニケーションを大切にし、よく観察することを重視しています。特に心がけているのは、患者さんの話をしっかりと聞くことです。家族ぐるみでお付き合いしていただいている患者さんであれば、ご家族から見た様子もお伺いするようにしています。症状だけではなく生活背景についてお聞きすることで、患者さん自身が気づいていない症状や原因、別の病気の発見につながる可能性があるからです。また、患者さんの緊張が解けると「そういえば……」といろいろと思い出すこともあるので、話をする際はなるべく時間をかけています。このような「話を聞く」姿勢については、スタッフにも強く意識するように伝えています。
多様なスタッフとともに地域のニーズに幅広く対応
スタッフさんについて教えてください。
当院には各分野の医師、看護師、受付のほか、理学療法士など、多職種のスタッフが在籍しています。私は人との出会いに恵まれていて、ホスピタリティーの意識はもちろん、高い医療知識を身につけ、人柄も良いスタッフが集まってくれています。受付や検査の際、スタッフに知識が備わっていれば、患者さんの話や状態から緊急性の有無を考慮できるようになり、診療や検査の順番を早めたほうが良さそうと医師や看護師に提案したり、病室に案内して寝かせたりなど、適切な案内につなげやすくなります。当院のスタッフは皆が互いに助け合いながら、クリニックを盛り上げてくれています。そのようなスタッフによるチームワークが円滑な医療を実現し、当院の歴史をつくってきてくれたと感じています。
今後の展望・目標をお聞かせください。
患者さんに健やかな時間を過ごしていただくことを最優先に考えております。そのために、より高い技術や設備を導入して業務の効率化を図ることを計画しています。そして、ゆっくりと患者さんの話を傾聴できるようにしていきたいです。こうした取り組みを続けることで、患者さんに「ここに来たら体も心も癒やされる」「山口医院があるから、毎日安心して過ごせる」と思っていただけたらうれしいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
休日や夜間、救急病院に連絡されるケースもあると思われます。その中には、「本当に救急病院を受診しても良いのだろうか」「できればかかりつけ医に診てもらいたい」などと悩むこともあるでしょう。また、救急車を呼ぼうと電話をかけても、なかなかつながらずにどうすべきか困ってしまうケースも少なくありません。そんなときは、ぜひ当院に連絡してください。いざというときに頼っていただけるように、時間外でも休診日でも対応可能な体制を心がけております。早い治療が良い結果に結びつくことも少なくありません。もしもの時は遠慮しないで気軽に連絡していただければと思います。