自覚症状に乏しい糖尿病
早期の治療や食事指導は合併症予防にも
こたに糖尿病内科クリニック
(神戸市灘区/六甲道駅)
最終更新日:2025/01/16


- 保険診療
インスリンの分泌異常によって血糖値が上昇する糖尿病。不規則な生活習慣が原因で中高年に発症する病気というイメージを持たれがちだが、実際は20代でも罹患することがあり、遺伝や体質的な要因も絡むため、人によって発症リスクは異なるそうだ。「糖尿病の合併症は全身に起きる可能性がある」と話すのは、日本糖尿病学会糖尿病専門医である「こたに糖尿病内科クリニック」の小谷圭院長。症状の改善には早期治療と継続的な受診が不可欠と考え、患者に丁寧なヒアリングや説明を行った上で、オーダーメイドの治療を提供している。また「食べてはいけない」とは決して言わず、許容できる範囲内で条件つきの食事指導を行っていることも特徴だ。糖尿病治療に情熱を注ぐ小谷院長に、糖尿病や合併症について詳しく話を聞いた。
(取材日2020年12月9日)
目次
不規則な生活習慣が重篤な病気につながることも。治療継続の鍵は「完全に制限しない」食事指導
- Q糖尿病を発症する原因は何ですか?
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A
▲糖尿病の治療には熱い思いを持つ小谷院長
糖尿病には1型と2型があり、発症にはいずれも膵臓から分泌されるインスリンが関係しています。1型の場合はインスリンの分泌量が少ないこと、2型の場合は分泌量はむしろ充分なのに、生活習慣の乱れによってインスリンが機能しにくくなることで、血中の糖が異常に増えてしまうのです。大半の患者さんは2型に分類されますね。加えて遺伝的な要因もあり、親御さんが糖尿病に罹患していると、お子さんも将来発症するリスクが高いといわれています。発症原因を年代別に見ると、20代は糖分が多く含まれているスポーツドリンクなどの飲みすぎ、30代は仕事が忙しいことで生まれる不規則な食習慣、40代以降は食べすぎによる肥満が多いです。
- Q糖尿病と合併症について詳しく教えてください。
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A
▲スタッフ手作りの掲示物
糖尿病は初期症状に乏しく、疲れやすい、喉が渇くといった症状に自身で気づくのは困難です。そのため、健康診断で数値の異常を指摘された場合は、再度血液検査を受けることが望ましいですね。高血糖の状態が長く続くと、血管が徐々にダメージを受け、合併症というかたちで現れます。細い血管が傷つくと失明や腎不全、神経障害などを引き起こし、太い血管が侵食されると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のほか、足に痛みやしびれが生じる末梢動脈疾患や足壊疽などを発症します。このように、体の外側は問題がなさそうに見えても、内側ではどの部位に合併症が現れてもおかしくない状態に陥ってしまうため、早期の発見と治療が重要です。
- Q糖尿病の治療はつらいイメージがあります。
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A
▲患者と患者の家族、スタッフとともに治療を進める
食事制限はつらい部分もあるかと思いますが、摂取量さえ守れば「絶対に食べてはいけない」というものは実はあまりありません。糖尿病の方は炭水化物をすぐに体内で処理できず、75g以上の糖分を摂取すると血糖値が大幅に上昇するため、1回の食事における糖分量を抑えることが大切なのです。当院では糖分量を50g前後に抑えた食事内容を提案し、好物を食べたい場合は代わりに食べないものを決めるなど、栄養素を調整しています。無理のない方法を実践しているためか、皆さん根気よく治療に取り組んでくださっていますね。患者さんが危機感を持って、自主的に治療に臨んでいただくために、事前の説明や知識の啓発にも力を入れています。
- Q早期に治療を開始するメリットを教えてください。
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A
▲「見える化」が特徴の院内
早めに治療を開始すれば、薬を服用するのみとなり、総合的な医療費を抑えることが可能です。また、初期段階から定期的に血糖値を測定し、悪くなりそうなところをケアしていくことによって重症化も防げます。血糖値という目に見える結果が出ますので、患者さんの治療に対するモチベーションも変わってくるのではないでしょうか。中には仕事などを理由に治療を中断してしまう方もいらっしゃいますが、過去に通院が途絶え、数年後に再び受診した時には重症化していたケースも少なくありませんでした。皆さんお忙しいとは思いますが、せめて服薬だけでも続けることをお勧めします。
- Q治療で心がけていることや患者さんが注意すべきことは何ですか?
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A
▲患者それぞれに合わせた治療を行う
当院では、患者さんが糖尿病になった根本原因と、現状をどう変えれば改善できるかの2点を重視しています。1型と2型とでは原因や治療法がまったく異なり、合併症で悪くなりやすい部位も人によって違うためです。それらを踏まえつつ、今後重症化した場合のことまで考えながら適切な治療を提供するのが理想ですね。そのためにも、患者さんには間食などの食習慣も隠さずお話しいただきたいと考えています。食べることは喜びや楽しみですので、当院では「食べてはいけない」という言葉は使いません。患者さんとの相互理解を深め、「これくらいなら食べても大丈夫」「食べた後は歩けばいい」など双方が納得できる着地点を見つけたいと思います。