和田 栄里子 院長の独自取材記事
西野レディースクリニック
(寝屋川市/寝屋川市駅)
最終更新日:2021/10/12

京阪本線・寝屋川市駅から徒歩約12分、京阪バスの寝屋川車庫停留所のすぐ前にある「西野レディースクリニック」。和田栄里子院長が父の後を継ぎ2008年に開業。以来、約10年にわたり、町の頼れるかかりつけ医として地域の女性を支えている。大阪大学医学部産婦人科医局での研修、大阪回生病院での勤務、その後自らも子育てをしながら、大阪厚生年金病院(現・大阪病院)や萱島生野病院での外来や手術の実績を積んだ。開業後は若年層や更年期世代の抱える症状にメンタル面を含めて寄り添い、女性が快適に過ごしやすいように力を尽くしている。インタビューでは、これまでの経験やクリニックの診療について話してくれた和田院長。テキパキと、かつ適切な言葉を選びながら答える姿勢に、院長の人柄が表れていた。
(取材日2018年3月13日)
地域の女性から信頼される婦人科のかかりつけ医
お父さま、お姉さまも産婦人科の医師と伺っています。その影響で先生もこの道に進まれたのですか?

父・姉・従兄が産婦人科の医師で、医学部に進むことは決めていましたが、正直言うとまったく一緒は嫌で別の科を選択するつもりでした。手術がしたくて外科を希望したところ、今から35年前はまだまだ男性中心の世界で「女性には盲腸と胆石のオペしかさせない」と言われて。それではやりがいがないと悩んでいたら、父に「ひとまず産婦人科に行ってみろ」と背中を押され、父たちと同じ大阪大学の医局に入ることにしました。そこで先輩や同僚に恵まれ、彼らの影響で産婦人科の仕事が好きになりました。外来大好き、手術大好きという土台を築くことができました。
そのお父さまと一緒に開院なさる予定だったのですね。
大規模病院での研修や医局で研究し学位取得後、私はいったん寿退職するのですが、夫の転勤について行った鹿児島の市立病院で勤務医をしていました。その後名古屋、和歌山へ。子どもの小学校入学と同時に私と子どもは枚方に定住し、この近くで開業していた父と2人で新しく医院を開く計画だったんです。ところが開院の1週間前に父が亡くなってしまいました。発病から1ヵ月の急逝だったので、結局父は自分で設計もしたここに一度も足を踏み入れず……。残念だったでしょうね。開院の日は決まっていたし、法的な手続きもあり、悲しんでいる余裕もないまま1人で開院しました。他で経験は積んでいたから不安はなかったけれど、開院を待ってくださっていた患者さんが一気に来られて、本当に慌ただしく最初は「戦争」のようでした。当時は受付と看護師も1人ずつ。私を含めて3人では対応しきれなくて、それはもう大変でした。
どんな患者さんが多く来院されていますか?

地元の寝屋川市の方が多いですが、バス通りの十字路にあるので門真市・守口市・枚方市からも来やすい所なんです。年代的には20代後半から50代の方が多いですね。午前中は高齢の方や子どもが幼稚園に行ってる間に来られるお母さん、夕方はお母さんを含む勤め帰りの方が来られます。お産で私が取り上げた子、その親、おばあちゃん、ひいおばあちゃんと4世代でかかってくれている患者さんもおられます。自分の娘や母親を受診に連れてくるのは、信頼してくれている証拠でしょうからすごくうれしいです。
患者の気持ちに寄り添い、心身の健康サポート
診療にあたってモットーとされているのは?

婦人科の症状はメンタルな部分が影響していることも多く、心療内科的な治療を求められることもあります。精神科や心療内科を受診するよう勧めた患者さんが、やはり女同士の方が話しやすいから、と戻って来られることもあるんですね。そういうときには「他にも同じような人がいるよ」とか「それはしんどいね」とか聞き役に回ります。カルテにポイントとなる単語を書いておき、「2回前にもそのことで悩んでいたね」など話題を振ると、患者さんは「覚えてくれてたの!」と心を開いてくれます。特に更年期の症状は周りから「そのくらい病気じゃない」と言われ、つらい症状を我慢している方もいらっしゃるので、まずは患者さんの気持ちを受け止める存在でいたいと思っています。
メンタルの症状については、どう対応なさっているのですか?
生理不順でお母さんに連れて来られる10代後半の患者さんが、実は摂食障害ということも時々あります。命が危険なレベルでも大学病院に受け入れてもらえない状況もあって難しいですね。更年期にさしかかる年代で神経症的な症状の患者さんが来られたことも。私は婦人科の医師としてできる限りのことをするしかないので、専門の病院を紹介したり、メンタル面の症状改善のために漢方を処方したりしています。精神科の強い薬を処方するよりは漢方のほうがいいだろうと、開院2、3年目に研究会に参加するようになり、それから漢方薬を取り入れています。希望される患者さんも多く、自分でも試したり、患者さんの特徴に合わせて使ううちに効用を実感するようになりました。
日々診察されていて感じるのはどんなことですか?

更年期障害が雑誌やテレビで取り上げられるようになり、よく効くサプリメントなどが紹介されるようになって、受診する方が増えたと感じます。それでも日本ではまだファーストチョイスがサプリメントや漢方で、ホルモン補充療法に拒否反応を示す人が多いです。一度始めると一生続けないといけないという誤解が原因でしょうね。症状が改善されれば少しずつ減らしていけるし、十数年も続けるわけではないので、正しい知識を得て安心して治療を受けてほしいです。子育てや介護など多忙なため自分のことは後回しにし、その結果病状が進行していたケースもあり、もどかしい気持ちになります。
苦労を乗り越えてきたのも医師の仕事が「好き」だから
先生ご自身も、医師の仕事と子育ての両立に苦労されたのではないですか?

夫が転勤族で単身赴任の期間が長く、子どもが小学校に入ってからは1人で子育てしていた時が大変でした。仕事のために学校行事に行ってやれなくて、子どもにかわいそうな思いをさせたし。家族で和歌山にいたときは、大阪まで車で往復160キロの道のりを通っていました。午前3時に起きて子どものお弁当を作り、5時に家を出る……。6時半くらいには大阪に着いてしまうんだけど、30分遅れると高速道路が混んで外来が始まる9時に間に合わない恐れがあるんです。夏休みなどはホテルのベビーシッターに驚くほど高い料金を払って預けたり。今考えると確かに苦労しましたが、この仕事が大好きだからやってこられたんでしょうね。患者さんと話すのも手術をするのも「好き」の一言です。
忙しい毎日の中でリフレッシュ法は何ですか?
女性の医師仲間でゴルフに行くことが楽しみです。ゴルフ自体よりもカートで話す「女子会的な会話」がすごく楽しいです。他のグループの女性の先生たちと食事に行ったり、大学の研修医時代の仲間とたまに会ったりもします。お互いの近況報告や困っていることを話すのが、刺激にもなるし、本音を話せていい気分転換になっています。
スタッフの方へは、どんなことを伝えていらっしゃいますか?
耳を2つ、3つ持ってくださいといつも伝えています。診察しているとき私は、患者さんと話しながら、受付での電話対応の声も聞き、奥の処置室での患者さんとのやり取りも聞いています。だから、スタッフにも患者さんと話しながら、私がここで話していることも聞いてくださいとお願いしています。診察がスムーズに流れるように、そして何が起こっているのかを私が理解してすぐに対応できるように。9人のスタッフは、ほぼ同世代の女性で子育て中の人が多いので、お互いわかり合いうまく回っていると思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

若い世代の女の子も怖がらずに受診してほしいです。1年間も悩んでいたことが、思い切って受診したら1週間で治ったということもある。婦人科の敷居は、特に10代後半くらいの子には高く、例えば生理痛でも我慢し過ぎの人が多いです。晩婚化で妊娠、初産も遅くなってるから生理と付き合う期間も長くなる。毎月毎月しんどい思いをするより、いろんな治療のノウハウがあるし、内診せずに腹からの超音波で済むことも多いから、それぞれに合う対策で苦痛を和らげる方がいいでしょう。どの世代にも言えますが、自分のことを後回しにせずに大切にしてほしいと思います。