原 克之 院長の独自取材記事
はら呼吸器内科クリニック
(出雲市/出雲市駅)
最終更新日:2021/10/12
出雲市姫原三丁目にあるVILLA Four Seasons(ヴィラフォーシーズンズ)の一角にたたずむ「はら呼吸器内科クリニック」。シックで洗練された木目調の院内では、長年内科全般と呼吸器内科を専門に研鑽を積んできた原克之院長が日々患者に温かく向き合っている。院内に飾られたギターやウクレレ、マンドリン、ベースなど楽器の数々は、原院長の趣味なのだとか。「なんとなく通っているうちに元気になったと言ってもらえるのが理想ですね」と優しい笑顔を見せる原院長に、開業に至った経緯や患者層、医師をめざした理由、今後の展望などたっぷりと語ってもらった。
(取材日2021年7月21日)
「なんとなく通っているうちに病気が治った」を目標に
まるでカフェやバーのようなクリニックらしくない院内ですね。
そうなんです。実は開業前は「クリニックにするか、喫茶店にするか」を本気で悩んでいました。テナント会社の方にも「結局、どうしますか?」と聞かれましたし、冗談のような本当の話です。というのも、50歳になる前までは病院で重篤な患者さんを中心に診ていたんですね。差し迫った状況にある方がほとんどで、実際に亡くなってしまう方も少なくありませんでした。もちろん、病気の克服につながる方もいらっしゃいますし、やりがいが大きい仕事でした。しかし、日々診療に携わっているうちに「元気な人をさらに元気にするお手伝いがしたい」という気持ちが湧いてきたんです。病気を治すだけでなく、その後の社会復帰までサポートできたらなと。例えば、仕事に復帰したり、家事や子育てを頑張っている方は同じような生活が送れるようになったりと、自分のやりがいがあることを健康に行えるようになるお手伝いがしたいと考えるようになりました。
それで、喫茶店の店長という案も出たのですか?
元気な人も含めて出会うには、喫茶店もいいなと思ったんです。そこで勤務していた病院を辞め、しばらく考える時間を設けました。当分は医師をしないつもりでしたね。これまでの経験や知識を生かして、何かできないかなと考えることにしたんです。そんな中、僕の大先輩で開業されている先生が病気になってしまい、代診をお願いされるようになりました。開業医のお手伝いをしていくうちに、患者さんの日常的な悩みや不安に向き合ったり、なんとなく体調が悪いと訴える患者さんの病気や原因を一緒に考えたりすることのやりがいを改めて実感して……。それで、クリニックを開業することを決意しました。しかし、ただ開業するだけでは面白くないので、クリニックらしくない変わった場所をめざしました。目標は、僕とお話をしに、楽器を弾きになどで「なんとなく通っているうちになぜか治った」なんて思ってもらうことですね(笑)。
長年、勤務医として得た経験も強みだと思います。
そうですね。大学卒業後は約10年間、内科全般を専門に経験を積んできました。当時は病院で重症の患者さんを診ることもあれば、外来を担当したり、在宅で看取りを行ったりすることもあり、今の診療スタイルのもとになっているかなと。その後、約10年間は呼吸器内科を専門に選びました。というのも、呼吸器疾患は困っている患者さんが多いのに対し、医師が少ないんですね。肺がんをはじめとする難しい病気や、タバコを吸う患者さんが発症しやすいCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息など幅広い疾患があるんですが、なかなか診療が難しい分野なんです。とはいえ、患者さんの需要が高い分野なので、専門に選びました。これまでの経験を生かして、患者さんのさまざまな悩みに向き合っていきたいと思っています。
長引く症状の原因を突き止めるために、問診に注力
どのような症状の患者が多いですか?
当院は内科と呼吸器内科を標榜していますので、幅広い症状や悩みを抱えた患者さんがいらっしゃいます。その中でも多いのが、長引く咳ですね。人が医師にかかるときに特に多いのは咳だともいわれていますし、やはり咳に悩んでいる患者さんは多い印象です。診断の結果、喘息など病名がつくこともありますが、それは決して多くはありません。というのも、咳は「結果」なんです。風邪の場合は薬を飲んでいるうちに治っていくと思いますが、鼻詰まりや痰などが原因の場合はそこを治さない限り、咳も治まりません。また、例えば吹奏楽部の女の子が「演奏が始まると咳が止まらない」というような場合は、ストレスが関係していることもあります。同じ症状でも原因は人それぞれですので、患者さんのお話をじっくり伺い、原因を突き止めるように努めています。
だからこそ、気軽に話せる雰囲気づくりが大切なのですね。
病気や治療についてはもちろん、健康や心身に関する不安や疑問などがあれば気軽に相談していただけるとうれしいです。また、この周辺には病院もクリニックもありますので、「咳や呼吸器のことならここへ相談しよう」といったふうに、患者さんがうまく当院を使ってくれているのかなと感じています。正直なところ、何でも100%密着したかかりつけ医をめざしているわけではありません。患者さんが何ヵ所かに相談しているうちの一つであってもいいと思っています。それはそれで、僕は好きなんです。もちろん、かかりつけ医として活用してもらう場合も、しっかり対応させていただきます。診断の結果、必要に応じて「他の先生の意見も聞いてみましょう」とお話しすることもあれば、より専門的な治療や検査が必要な場合は適切な医療機関への紹介を行うこともあります。
禁煙治療も行っていると伺いました。
はい。禁煙治療というと言葉だけが独り歩きしているようですが、決して薬を飲んだらタバコが嫌いになるわけではありません。ご相談にお越しの上、禁煙の外来スケジュールに沿って治療を開始する方、カウンセリングのみの方など、方法はさまざまですが、大前提としてご本人の意志が非常に大切なのです。「タバコをやめる」という意志はあるけれど、医療的な観点での「お手伝い」を必要とされている方は、まずはご相談いただけたらと思います。
慢性的に疲れている患者に向き合い、社会復帰をめざす
ところで、先生が医師をめざした理由は何でしょう?
僕は田舎で育ちましたので、近くに病院は1軒しかありませんでした。その先生が風邪やケガなど困ったときは何でも相談に乗ってくれていたんですね。当時は怖かったのですが、身近にいてもらえる医師のありがたさを次第に実感するようになりました。そして、高校生の頃に進路を考えた際、僕は理系でしたので知識や技術を生かして人と関われるような仕事がしたいと思い、医療の道を志すことにしました。もしかしたら、父が体調を崩しやすかったのも影響しているのかもしれません。体調不良に悩む人たちがきちんと社会とつながっていけるようなサポートがしたいと思ったことを覚えています。
今後の展望をお聞かせください。
当院は健康診断で利用される患者さんも多く、病気ではない方とお話しできる良い機会だと感じています。今後の目標は、なかなか医療機関に足を運ばない方にどう関わっていくかですね。というのも、医療機関に来ないからといって健康とは限りません。調子が悪いまま我慢している方はたくさんいらっしゃると思います。地域住民の方の健康状態を底上げしていくために、どうアプローチしていくかを考えていきたいです。慢性的に疲れている方々の力になって、充実した日常生活が送れるようにお手伝いしていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
咳など長引く症状がある場合は、その原因を見つけて治したほうが良いと思います。もしかしたら大きな病気が隠れているかもしれないと脅すわけではなく、もし病気があったら、早いうちに治しておいたほうがいいでしょうから。また、病気のことでなくても何か解決しない悩みなどがあれば、気軽に相談いただけたらと。それが病気の原因につながっていたり、症状を増悪させることになっていたりすることもありますからね。咳や胃の痛みなど気になる症状などがありましたら、ぜひご活用ください。