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窪山 美穂 院長の独自取材記事

森のクリニック

(宮崎市/蓮ケ池駅)

最終更新日:2021/12/20

窪山美穂院長 森のクリニック main

自然豊かな森の中で、洗練された真っ白な外観がひときわ目を引く「森のクリニック」。2009年の開業以来、腎臓病の患者に優しく寄り添う院長の窪山美穂先生。オーバーナイト透析など、患者のライフスタイルに合わせた透析治療に注力。「透析治療は、第二の人生と捉えています。透析としっかり向き合い、有意義に過ごしていきましょう」と穏やかに語る窪山院長に、クリニックの特徴や診療方針、医師をめざした理由、今後の展望などを語ってもらった。

(取材日2021年11月1日)

自然に囲まれた癒やしの空間で、透析患者に向き合う

まるで美術館のような洗練された外観に驚きました。

窪山美穂院長 森のクリニック1

病院というと、無機質な消毒液のにおいなどもあって、緊張してしまうものですよね。「病院らしくない病院」をコンセプトに、「癒やしの空間」をつくりたいという思いで診療所をつくりました。電線などは地下に埋め込み、院内の窓からは人工的なものが目に入らないようにしています。2018年には宮崎市景観賞をいただきました。この土地はもともとは日向夏の果樹畑だったんです。チョウやバッタ、カブトムシやクワガタムシ、カタツムリなどの昆虫類のほか、時には野生のウサギも見かけます。他にも蓮ケ池からはカメが現れることもあり、まさに「森のクリニック」ですね。地形を生かして、1階は外来入り口、2階は透析患者さんの入り口と別にしています。

入り口を別にした理由は何でしょう?

透析患者さんの中には、自分が透析治療を受けていることを知られたくないという方も少なくありません。ですので、プライバシーに配慮して入り口を別にしました。クリニックや案内板に「透析」という看板を大きく出さないようにもしています。以前、同僚の先生から「どうしてこんなわかりにくいところに……」と言われてしまいましたが、通院される患者さんにとっては、自分はわかっていて、他の人にはわかりにくい場所のほうがきっと通いやすいですよね。週3回、当院で透析治療を行うわけですから、自分の家でくつろいでいるような空間を提供していきたいなと。また、透析室は半個室です。それぞれに窓も設置し、季節の移ろいを楽しんでいただけるようにしています。医師や看護師は危機管理を常時行えるような設計にしていますので、安心してお任せいただけるとうれしいですね。

オーバーナイト透析にも対応していると伺いました。

窪山美穂院長 森のクリニック2

毎週月・水・金曜は、夜9時半から翌朝6時までのオーバーナイト透析を行っています。日中は仕事をフルにされている患者さんたちが主な対象です。オーバーナイト透析を導入する際に、全国各地の先生にお話を聞いたのですが、「オーバーナイト透析は世界が違う。とにかくやってごらん」と言われました。実際にやってみると、本当に世界が違いました。通常、日中の透析は4~5時間ほど行いますが、オーバーナイト透析では夜間に8時間かけてゆっくりと体内の毒素を抜いていきます。寝ている間なので、体感する時間はとても短く感じるようですね。翌朝、すっきり目が覚めて、そのままお仕事に行くことが可能です。クリニックまでの道を飛行場の滑走路のようにライトアップするなど、温かいお出迎えも心がけています。

透析治療を、第二の人生の始まりに

診療で大切にしていることを教えてください。

窪山美穂院長 森のクリニック3

患者さんから座薬を「座って飲む薬か?」と聞かれたことがあり、患者さんにわかりやすい言葉で説明するように努めています。私たち医療の世界で生活している人と、医療と関わりのない世界で生きている人は、耳にした言葉の変換が違うのだなと実感しました。血圧を下げるための「降圧剤」も、初めて聞いた方は「高圧剤」と捉えてしまうことも。そのような解釈違いが生じないように、必ず降圧剤は「血圧を下げるための薬」と言い換えてお伝えしています。また、できる限りコミュニケーションを図り、患者さん目線を大切に、無理な目標を立てないように心がけています。

透析治療の特徴などはありますか?

全台でHDF(血液濾過透析)が可能です。長期間にわたって透析治療を受けている患者さんは、透析アミロイドーシスという合併症が出やすいですが、これはβ2マイクログロブリンの蓄積により発症します。HDF治療ではβ2マイクログロブリンの除去が期待できますので、合併症の予防・抑制につながります。最近では、経過の長い透析患者さんが多くなってきましたので、合併症に苦しんだり、寝たきりになったりせずに、健常人と同じように人生を謳歌していただきたいなと思い、HDFに取り組んでいます。

透析治療は新たな人生の始まりなのですね。

窪山美穂院長 森のクリニック4

今はオーバーナイト透析も含め、痛みの少ない透析や負担を軽減した透析はもちろん、ライフスタイルに合った透析を選択できる時代です。透析治療の開始を「第二の人生の始まり」と捉えていただき、透析治療とうまくパートナーシップをとって人生を謳歌していただきたいですね。透析導入期の患者さんや、合併症が出始める時期の患者さん、長期間続けている患者さんは、それぞれ体の状態に合った透析が必要となりますから、体の状態に最も相応しい透析スタイルを選択し、健康管理をしていただきたいと思っています。一方、当然ながら、腎機能が低下しないようにしっかりケアすることも大切です。慢性腎臓病は痛くないし、苦しくもないので放置されることが少なくありません。きっちりケアすれば腎臓を守ることが可能です。薬物療法はもちろん、食生活や運動習慣にも介入し、しっかりと医療で支えていくことが大切だと考えています。

腎臓病は、コントロールしていくことが大切

ところで、先生が医師をめざした理由は何ですか?

窪山美穂院長 森のクリニック5

子どもの頃から読書が好きで、医学の道で活躍した偉人の伝記を読んで憧れていました。最初は臨床検査技師をめざしていました。高校卒業後、九州大学医療技術短期大学部に入学し、実習で訪れた病院で医師たちが患者さんについて熱く真剣にディスカッションしている姿に感銘を受けて……。短大卒業後、2浪して宮崎大学医学部に進学しました。そして、大学で6年間学んだ後、循環器科・腎臓・消化器科を中心に診る第一内科に入局したのをきっかけに、腎臓病の患者さんに向き合うようになりました。

先生の趣味についてお聞かせください。

お休みのときには、宮崎市外の温泉地に行くことはあります。読書も好きで、最近読んで心に残っているのは、人生100年時代をパワフルに生きる指南本で、その中に「人生の楽しみは喜怒哀楽の総量。楽しいことがプラスで、悲しいことがマイナスではなく、どちらもプラスだ」といったお話がありました。そういう生き方ってすてきだなと思います。また健康のために、院内や日常生活で「ながら運動」を意識しています。しっかり姿勢を保ち、階段を上ったり、こまめに歩いたりして患者さんを診に行くように心がけています。人生をその人の直線と考えたとき、人と人との出会いってすごい奇跡だなと気づいたんです。哲学的な話ですが、そんなことを考えることも好きですね。

今後の展望をお聞かせください。

窪山美穂院長 森のクリニック6

今後はリクエストの多いオーバーナイト透析をもう少しだけ拡張したいと考えています。オーバーナイト透析に移行していただくことで、身体への負担が減ると思いますし、そのことで日々の仕事や家事に前向きになれたり、食事もしっかりと食べていただくようになるといいなと思っています。そのためにも自分の生活スタイルに合った透析のスタイルを選択していただけるようしっかり体制を整えていきたいです。また、腎臓病治療の第一歩は腎機能の低下を早期に発見して食事や運動習慣を整えることです。そして薬は増やすだけではなく、減らすことも大切。腎臓病は自覚症状がほとんどなく、気づいた頃には透析治療が必要になっていることも多いです。定期健診を必ず受けていただきたいです。一度でも検査で指摘されたことがある方は毎年受診することをお勧めします。

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