杉浦 夏樹 院長の独自取材記事
医療法人財団厚仁会 藤田記念耳鼻咽喉科
(大田区/田園調布駅)
最終更新日:2025/10/06

「藤田記念耳鼻咽喉科」があるのは、田園調布駅から徒歩約7分の閑静な住宅街。この街に同院が根を下ろしてから、今年で89年にもなる。2014年に建て替えたという建物は、以前の趣をそこかしこに残し、落ち着いていて温かみのある雰囲気だ。杉浦夏樹院長は父である先代院長からクリニックを引き継ぎ、耳鼻咽喉科全般の検査や診療を行っている。先代や先々代が紡いできた歴史を大切にしながらも、時代に合わせた設計や診療で患者の悩みに対応。治療に不安や恐怖心がある患者には、時間をかけて慣れてもらい、リラックスした状態で受診できるよう配慮しているという。そんな杉浦院長に、クリニックの特徴や診療方針を聞いた。
(取材日2025年7月29日)
約90年、地域とともに歩んできた歴史あるクリニック
クリニックの歴史について教えてください。

当院は1936年に、初代院長の藤田政雄先生が開業しました。その後私の父が引き継ぎ、2004年より私が院長を務めています。かつての医院は昭和の雰囲気を残した趣がある建物で、私も気に入っていました。築80年が過ぎ、耐震強度の関係から2014年に建て替えたのに伴い、院名を「藤田耳鼻咽喉科・気管食道科」から「藤田記念耳鼻咽喉科」に改称しました。建て替えの際には天井を以前と同じように高く取り、柱や壁のタイル、待合スペースのベンチ、各部屋のプレートなど一部旧医院の部材を移設して、以前の建物を再現しています。各部屋の扉をなくし、オープンな空間にするとともに、診療室の出入口を分けて患者さんの動線を整理し、ネブライザーを使っている様子がガラス窓越しに医師から見えるようにしました。また、感染者隔離室を設け、入口や動線を別にしてあります。これは新型コロナウイルス感染症の患者さんを診察する時にたいへん有用でした。
どのような患者さんが多いですか?
耳鼻咽喉科なのでお子さんが多いのですが、大人になってもそのまま通い続けてくれる患者さんも多くいらっしゃいます。近くにお住まいの方だと3世代にわたって通ってくださっているご家族もいらっしゃいますよ。また、お知り合いやご親戚に紹介してくださる方も多いです。お勤めの方は土曜日に来院することが多いため、土曜日は比較的患者さんが多い傾向にあります。田園調布というと高級住宅街のイメージがあるようですが、当院のある東口側は案外親しみやすい街でして、顔なじみの商店街の皆さんや、同級生のご家族も来院されます。多い症状としては副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、喉の痛み、声がれ、中耳炎などです。年々花粉症の患者さんが増えており、やはり春先は来院数が多くなります。秋口~冬にかけては感冒、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の患者さんが多くなります。
受付は完全予約制ですか?

はい、音声案内でのお電話と、ウェブで予約を受けつけています。予約なしでも受診は可能ですが、予約優先のため長時間お待ちいただくことがあります。予約をしていただいたほうがいいです。新型コロナウイルス感染症の流行を経て、患者さん自身が待合室での滞留を避けることへの意識が強くなったので、ほとんど完全予約制といっていいですね。緊急の患者さんへの対応がなければ、待ち時間は少ないと思います。正面入り口とは別の入り口と待合スペースがあるため、発熱者診療も受けつけています。
無理をせず、検査や治療に少しずつ慣れてもらう
全体的な診療方針を教えてください。

「訴えをよく聞き、その患者さんに合った最善の治療を行う」ことを心がけています。症状やお悩みを聞くのはもちろんですが、中には言葉で説明しにくい症状や、緊張などで主訴をスムーズに伝えにくい患者さんもいらっしゃいます。そうした場合は言葉だけでなく、お話しされている時の目の動きや表情から患者さんの意志を読み取るようにしています。患者さんの緊張をほぐすためや生活習慣、環境など教えていただくために「旅行に行った」「子どもの誕生日パーティーをした」といった何げないお話も聞かせていただくこともあります。初診の方は特に、時間を取ってお話を聞くようにしています。
こちらで採用されている「上咽頭擦過療法(Bスポット治療)」とはどういった治療でしょうか。
上咽頭炎に対して長さのある捲綿子を使って、鼻の奥や喉の炎症に対して直接お薬を塗る処置でルゴールや塩化亜鉛を使用します。多少痛みや不快感がありますが、数回の治療で症状の改善が期待できます。急性の炎症の患者さんは、可能であれば間を空けずに2、3日続けて通っていただき、短期間で改善をめざす方法をお勧めしています。慢性の炎症の患者さんは定期に継続して治療をしています。耳鼻咽喉科の治療法は本当に多様化していまして、飲み薬だけで行うクリニックも増えていますが、当院では処置を優先してこの方法も採用しています。
患者さんとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

大人でも子どもでも、鼻腔咽喉科で細い器具で鼻や喉の処置をすることに恐怖感を強く抱く方も少なくありません。緊急性の必要がなければ、そのような場合は無理に処置をせず、「今日はお話だけにしましょう」ということも選択肢として考えます。特にお子さんは治療の苦痛が嫌な記憶として残ってしまうと、「絶対に耳鼻咽喉科に行きたくない!」と思わせてしまいます。聴力検査も緊張してうまくできないようでしたら次回再度とし、まずは慣れていただくことから始めています。ネブライザーのあるエリアには経験豊富な看護師や医療助手がいるので、もし私の説明でわからないことがあったり、不安なことがあったりした場合は、そこでお声がけいただくことで、再度診療室にご案内してお話しできるようにもしています。
「来て良かった」と思えるクリニックをめざして
先生が耳鼻咽喉科の道に進まれたのはなぜでしょうか。

父と祖父が耳鼻咽喉科の医師だったことが大きいですね。もともと外科系が好きなタイプです。私が医学部卒業後に臨床研修を受けた聖路加国際病院では外科全般を回る「スーパーローテート」という制度があり、消化器外科を中心に複数の診療科で経験を積みました。自分以外は専門の先生という環境で多くの症例を経験することができ、たいへん充実した研修でした。そのまま消化器外科に進む道もありましたが、やはりなじみのある耳鼻咽喉科の医師になりたいと思い、大学に戻ってからは耳鼻咽喉科領域の中でも頭頸部外科、副鼻腔手術を中心に研鑽を積ませていただきました。
休日はどのように過ごしていますか?
元来、スポーツ全般が好きなのですが、続けているのはヒルクライムというロードバイク競技です。20年ほど前から、毎年6月に行われる、富士山の5合目までロードバイクで登るヒルクライムレースに参加していまして、そのためのトレーニングをしていることが多いです。ヒルクライムの魅力は、上り坂のみなのでスピードが出すぎることがなく、事故が少ないこと。それと普段のトレーニングを一人でできるのでやりやすいということです。もちろん競技中は苦しくてつらいのですが、終わった後は他では味わえない爽快感、充実感があるんです。毎年「レースはつらいから今年でやめよう」と思いつつ20年以上続けているのは、そうした楽しみを知ってしまっているからかもしれません。他に絵を描いたり、プラモデルを作ったりするのも好きで、これらは長い休みにじっくりやっています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

初代、先代から受け継いだ歴史の重みを感じながらも、設備や予約システムなど新しいことを取り入れてきました。耳鼻咽喉科としての治療、処置をこれからも納得して受けていただけるようなクリニックであり続けたいですね。診療後に「ここに来て良かった」と思っていただけるクリニックをめざしています。当院で治療できるものは全力を尽くしますし、精査が必要な場合は信頼する医療機関へご紹介もしています。耳、鼻、喉のことで疑問や不安を感じたら、ぜひ気軽にお越しください。