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井口 正寛 院長の独自取材記事

井口クリニック

(さいたま市中央区/大宮駅)

最終更新日:2026/10/22

井口正寛院長 井口クリニック main

大宮駅から徒歩10分、住宅街の中にある「井口クリニック」は、2026年8月に前院長から継承されたばかりの脳神経内科と内科を診療するクリニックだ。院長の井口正寛先生は、日本大学医学部を卒業後、東京都や埼玉県、福島県、沖縄県など全国各地の医療現場で研鑽を積んだ多彩な経歴の持ち主。「脳神経内科は問診が診断の大きな鍵を握ります」と語るように、推理小説の探偵さながらに患者の言葉から病の手がかりを見つけ出していく診療スタイルが特徴的だ。継承にあたり、高齢の患者が戸惑わないよう内装やスタッフをそのまま引き継ぐ一方、自動精算機の導入など利便性の向上にも取り組む。話を聞くほどに丁寧で奥深い説明をしてくれる井口院長に、診療への思いや今後の展望について聞いた。

(取材日2026年8月4日)

全国各地の経験を携え、恩師のクリニックを継ぐ

こちらのクリニックを引き継がれた経緯を教えてください。

井口正寛院長 井口クリニック1

前院長の岡山健次先生が80代を迎え、後継者を探していらした中で、ご連絡をいただいたのがきっかけです。私はさいたま赤十字病院在籍時に岡山先生のご指導を受けた経緯があります。ご連絡をいただいたのは、長年にわたる大学病院での臨床を経て、ちょうどフリーランスのような形で各地の医療機関を手伝っていた時代で、恩師からのお話でしたので、ぜひお引き受けしたいと思いました。脳神経内科は専門性が高く、患者さんのためにはやはり日本神経学会神経内科専門医が継承するのが望ましいです。2026年8月に院長を引き継ぎ、まだ始まったばかりですが、これまで通院されてきた患者さんの信頼を大切にしながら日々の診療にあたっています。

脳神経内科の道に進まれたきっかけや、これまでのご経歴を教えてください。

学生時代からクラシック音楽が好きでバイオリンを弾いていたのですが、作曲家の病気について医学論文を読むうちに、後に師匠となる岩田誠先生の著書に出合いました。岩田先生は特定の疾患だけを診る外来を設けない方針の方で、幅広く診るトレーニングをしてくださったんです。「どこででも働けるようになりたい」という思いもあり、入局後は出向先の福島県の病院で内科全般を学びました。福島県では原発近くの診療所でプライマリケアを担当したこともあります。フリーランスとしても函館や沖縄、秋田など各地で活動してきました。場所や環境が変わっても対応できる力は、こうしたさまざまな現場での経験の中で培われたものだと感じています。

継承にあたり、クリニックで意識されたことはありますか。

井口正寛院長 井口クリニック2

認知症の患者さんや高齢の方が多く通われていますので、院名のロゴや内装、スタッフもできるだけそのまま引き継ぎ、不安を感じさせないよう配慮しました。岡山先生が診てこられた患者さんのカルテは全員分を事前に確認し、準備を整えてから診察に臨んでいます。一方で自動精算機を導入してクレジットカード決済に対応したり、待ち時間にお使いいただける無線LANや充電スペースを設けたりと、利便性の面では新しい取り組みも進めました。MRIの検査は近くの専門施設に依頼し、放射線科の先生の読影と私の確認によるダブルチェック体制を取っています。さらに同じビルの消化器内科や近隣の循環器内科とも連携しており、大学病院の中で他科に紹介するような感覚で、患者さんに適した医療へつなげられる環境です。

推理小説の探偵のように、問診で病を見つけ出す

脳神経内科の診療では、どのようなことを大切にされていますか。

井口正寛院長 井口クリニック3

脳神経内科の診療は、問診が診断の大きな鍵を握ります。推理小説の探偵のように、患者さんとの言葉のやりとりの中から「この病気ではないか」とあたりをつけ、診察や検査で確認していくのが基本です。神経疾患はMRIなどの画像検査だけでは診断がつきにくく、「画像で異常がないからわからない」とはならないよう心がけています。例えばパーキンソン病が疑われる場合は、睡眠中に声が出ないか、においの感じ方に変化はないか、立ちくらみはないかなど、関連する症状を一つずつ確認しながら方向性を絞り込んでいきます。神経内科は内科の中でも専門とする医師が少ない分野ですので、丁寧な問診で患者さんの言葉に耳を傾け、適切な診断につなげることを何より大事にしています。

頭痛で悩む方への診療についても教えてください。

頭痛の患者さんは多く、特に土曜日はお仕事をされている若い方が目立ちます。片頭痛は日本人の10〜15%に見られるとされ、深刻度はさまざまです。市販薬を飲んでやり過ごす方もいれば、月の半分近くつらい頭痛が続く方もいらっしゃいます。女性はホルモンバランスとの関わりが深く、月経前後に悪化しやすい方が20代頃から閉経前後まで幅広い年齢層に見られます。気圧の変化も影響しやすく、台風の時期に症状を訴える方は増えますね。治療では予防薬を調整したり、複数ある頓服薬から合うものを探したり、注射薬を検討したりと、患者さんと相談しながら方針を決めていきます。市販薬を使い続けることで薬自体が頭痛を招いてしまう場合もありますので、効きにくいと感じたら早めにご相談いただければと思います。

問診から診断に至った印象的なケースはありますか。

井口正寛院長 井口クリニック4

以前、他の医療機関で診断がつかず転々としてこられた方を診る機会がありました。例えばある方は、長引く便秘で他院を受診しMRIを撮ったものの異常なしとされ、精神的な問題ではないかと案内されていたそうです。診察で表情がやや乏しい印象があり、睡眠中に声が出ないかと伺うと、ご家族から以前より指摘されていたとわかりました。そこから起立性低血圧の有無やほかの神経症状、症状の進み方を確認していくと、多系統萎縮症という神経疾患が疑われたのです。神経の病気は検査で直接見つかるものばかりではありません。問診で仮説を立て、「こういう病気を疑っているのでこの検査をしましょう」と患者さんにお伝えすることを大切にしています。

患者の困り事を解決し、最良の結果をめざして

高齢の患者さんの診療で、心がけていることを教えてください。

井口正寛院長 井口クリニック5

高齢の方は、訴えも病気も一つではないことが多いんですね。脳梗塞とてんかんを併せ持っていたり、パーキンソン病に加えて高血圧の管理が必要だったりと、複合的に診ていく必要があります。病名だけでなく、食事がきちんと取れているか、お通じは出ているか、夜は眠れているかなど、暮らし全体を丁寧にお聞きします。難病を抱えた方であれば、お一人で暮らして大丈夫か、利用できる支援サービスがないかまで踏み込んでお話しすることもあるでしょう。診断をつけるだけで終わりではなく、お薬を誰が管理しているか、経済的な負担はどうかも考慮しながら、一緒に治療の方針を決めていくことが大切です。来てくださる方の困り事を一つでも多く解決していけるよう、丁寧な診療をこれからも続けていきたいと思っています。

日々の活力やリフレッシュの源になっているものはありますか。

今はバイオリンを弾くのが趣味で、脳神経内科に進むきっかけをくださった師匠の岩田先生とカルテットを組み、演奏することもあります。ほかにも将棋や、旅先での乗馬など、いろいろなことに興味を持つほうですね。クリニックの診療とは別の仕事も持っていて、競馬関係や工場などでの医療相談も請け負っているんです。まったく違う分野にふれることがいいリフレッシュになっています。岩田先生は、受診された方が幸せな気分で帰っていかれるような診療をされる方で、私もその背中をずっと追いかけてきました。臨床で患者さんと向き合う時間と、趣味や別の仕事で視野を広げる時間の両方があることで、医師としてのバランスを保てているように感じます。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井口正寛院長 井口クリニック6

いくつもの医療機関を回っても診断がつかないと悩んでいる方がいらしたら、一度ご相談いただければと思います。神経の病気は、ご自身でも症状が神経に由来するとわからないことが多いのです。なんとなくだるい、食欲が湧かない、便秘が続くといった身近な不調の奥に、実は神経の病気が隠れていたというケースも少なくありません。頭痛についても、市販薬で我慢を続けるとかえって治療が難しくなることがありますので、効きにくいと感じたら早めに専門の医療機関に相談してみてください。私が大切にしているのは、患者さんと一緒に最善の道を探ることです。最良の結果にできたと思えた時は、お互いに幸せですからね。丁寧な問診と診察を重ねて、お一人お一人に合った治療を考えていきたいと思っています。