竹内 保雄 院長の独自取材記事
竹内クリニック
(知立市/知立駅)
最終更新日:2023/03/01

JR東海道本線「刈谷駅」から車で約7分、国道155号線沿いにある「竹内クリニック」。勤務医としてキャリアを積んだ竹内保雄院長が2008年に開業した。開業前には医学部の呼吸器内科とアレルギー科の講師など勤めてきた。その知識と経験を生かし、地域の患者を幅広く受け入れている。クリニックにはさまざまな診療機器が導入されている。「医師は専門的な知識や経験をもっており、それに基づいて正しいと思う判断をしていますが、時にはそれが患者さんの負担になってしまうこともある」と竹内院長。自分の考えを一方的に押しつけるのではなく、アドバイザーとして患者とともに治療について考えていきたいと語ってくれた。
(取材日2017年8月7日)
患者の不安を軽減するのが医師の役割
医師をめざしたきっかけと、開業までの経緯を教えてください。

小学生の時に、天才外科医が主人公の漫画に出会ったのがきっかけでしょうか。主人公が外科手術で難病・奇病を治すのですが、その一方で命を救うために子どもの腕を犠牲にしたり、あるいは命を救えなかった場合もあります。ただ、そのリカバーがとても人情の機微にふれていて、子どもながら心に響くものがありました。呼吸器内科の道に進んだのは、桁違いに優秀な先生が当時大学病院の呼吸器内科の講師としておられまして、一緒に仕事ができたらいいなと思い、選びました。この場所でクリニックを開業したのは、知立市に呼吸器内科のクリニックが少なく、この場所なら地域医療に貢献できると思ったためです。
クリニックの患者さんについて教えてください。
住宅地から離れ、駅も遠いため、車で通院される方がほとんどです。患者さんはお子さんから大人の方まで、年齢層は幅広いですね。高血圧症、糖尿病などの一般内科の患者さんもみえますが、風邪の方も多い印象です。呼吸器疾患の患者さんでは、咳に困って受診される方が多いですね。咳というのは重大な病気でないことがほとんどですが、ひどい場合ですと、会話中に咳き込んだり、夜間に咳で目が覚めたりして、日常生活に支障を来します。咳の診療は検査で原因がわかる!ということはあまりないので、なかなか難しい面もありますが、咳の性質、頻度、さまざまな検査値を踏まえて、咳を止めること第一義として努力しております。さらに詳しい検査をご希望される場合には、もちろん対応できますので、診察時にお声をかけてください。
診療機器はどのような時に使うのですか。

診療に必要な機器はいろいろそろえています。例えば、息苦しさを訴える患者さんの場合、その原因は気管支が細かったり、肺のふくらみが悪かったり、あるいは心臓が悪かったり、さまざまなケースが想定されます。そこで肺機能検査装置を使って、息苦しさや咳の原因、喘息の有無などを調べていきます。そのほかでは、呼気一酸化窒素測定装置もあります。知立市で導入しているクリニックは珍しいのではないかと思います。呼気中の一酸化窒素濃度を測定することにより、喘息かどうかの判断の材料にしています。ちょっとおかしいなと思う患者さんにこの装置で検査を受けてもらうと、咳の原因が喘息だったと判明することもあるのですよ。患者さんの治療にとても役立っています。
「誰のための治療なのか」という自問自答
施設でこだわったのはどんなところですか。

こだわりは特にありませんが、お待ちいただく患者さんにくつろいでいただきたいと思っていろいろと気を配りました。例えば、待合室の天井を高くして開放的にしたり、畳に座ると落ち着くという患者さんのために畳の間を用意したり、外の光をたくさん取り入れるために窓を大きくしたりしました。それと同時に、国道を通る車から待合室の中が見えにくくなるよう、背の高い木を植えるなどの配慮もしました。また、トイレは空間をぜいたくに使い、車いすの方でも動き回れるように広いスペースを確保してあります。
診察で心がけているのはどんなことですか。
クリニックに受診する理由は疾患・症状を治してほしいということですが、その背景には不安があると思うのです。例えば長引く咳だと、がんや結核ではないか、とか。ですから治すことももちろんですが、どんな不安をもっているかということにも気を配り、できるだけ早く不安を軽減できるよう心がけています。そのため診察では患者さんがどんなことで困っているのか、精神的なことも含めいろいろな可能性について考えながら、患者さんの話を聞くようにしています。それと、こちらの考えを一方的に押しつけるのではなく、患者さんの置かれた状況を大切にしながら診療方針を決めていくように心がけています。私たちはそれまでの知識や経験をもとに正しいと思う判断をしていますが、時にはそれが患者さんの背景に則していないことがあります。ですので、患者さんにはすべての情報を提供し、アドバイザーのように患者さんが望む診療方針を検討しています。
印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。

勤務医時代のことですが、40歳代の女性で肺がんの方を診ていたときのことです。手術適応はなく、治療として繰り返し抗がん剤を投与しなければなりませんでした。抗がん剤治療の間、副作用確認のため繰り返し検査を行い、次の投与が可能か判断します。その患者さんは、抗がん剤で減少した白血球数が回復しにくく、それまでも予定どおりに抗がん剤が投与できないことが何回かありました。私はその患者さんにいつものように検査結果と次回の抗がん剤投与を延期することを説明していたところ、「次の抗がん剤を予定どおり投与できるかどうか、その結果を聞くこと自体がつらくて耐えられない」と泣きながら言われました。結局抗がん剤治療をやめて外来での経過観察にしたのですが、良かれと思ってやっている医療行為が患者さんに大きな精神的負担になってしまうことがあるのだなと強く感じました。その時のことは、今でも折に触れて思い出してしまいます。
充実した日常のために、積極的に治療する意義は大きい
喘息は大人でもかかるのですか。

はい。大人の患者さんに喘息と診断すると、喘息は子どもの病気じゃないのですかと言われることがありますが、決してそのようなことはありません。実際、大人の喘息の患者さんは7~8割の人が大人になってから発症しています。多くはないのですが、喘息の発症にペットが関与していると思われる場合もあり、特にうさぎ、ハムスターなどのげっ歯類は注意が必要です。子どもの喘息患者さんは成長する過程で約7割が自然治癒しますが、成人喘息は自然治癒は10%以下とされます。しかし、治療により症状のコントロールが可能なので積極的に治療することが望まれます。
睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に舌根沈下により喉が閉塞して呼吸が止まってしまう疾患です。無呼吸で窒息死する、というものではありませんが、睡眠中に体内の酸素量の低下により脳が覚醒してしまい、脳が十分な休息をとることができません。そのため、起きている時に突然眠気を感じたり、昼間の仕事の能率が低下したり、運転中に居眠りしたりします。睡眠時無呼吸症候群の治療法はいくつかありますが、代表的なのはCPAP(シーパップ)で、寝る際に鼻にマスクをつけ、器械から一定の空気を送って、舌根沈下を防いでいきます。重症の方はCPAPの装着で熟睡できたり、昼間も頭がすっきりしたりすることが期待できるでしょう。睡眠時無呼吸症候群を放置しておくと心臓にも負担がかかりますので、こうした症状にお悩みの方は診療の際に相談してください。
最後に読者へメッセージをお願いします。

最近は喘息の類縁疾患の咳喘息と思われる方が非常に多い印象です。激しい咳により生活に支障を来しますが、幸い、喘息の治療薬の進歩は凄まじいものがあり、的確に診断すれば比較的速やかに改善に向かう印象です。咳喘息も同様に的確に管理すれば良好なコントールが図れ、かなり快適に過ごすことが望めます。より快適な日常、より充実した日々を得られることはご自身やそのご家族もそうですが、社会的利益にもつながり、積極的に治療をする意義は大きいと考えています。子どもの場合はかつては吸入ステロイドの使用に慎重でありましたが、最近は必要な子には吸入ステロイドの使用することにより良好なコントロールが図れています。咳が続くと苦しさからはいつまでも解放されないので、お困りの際は早めに受診してほしいと思います。